第二十六話:49日のその間
Chi è il bugiardo?
先生の言葉が理解できなかった。
「事実…?ただの伝承じゃないんですか?」
今から先生が俺に話してくれるのは、この土地に古くから伝えられる“夕凪の幻”という伝承だ。基本的にこの世に存在する伝承は、寓話や御伽話から派生したものだったり、自然や災害をメルヘンに表現したものが多い。だが先生はそれを事実だと言い張っている。
「伝承を体験したんですか…先生が」
「そうだ…たしか十二年前くらい前にな」
その伝承は俺に何をもたらすんだろうか。俺は好奇心が強い方だと自覚しているので、もし興味が湧いたら試してしまうかもしれない。
「命苫には知っといてほしんいだ。私たちの体験した亡霊の戯曲を」
鬼が出るか蛇が出るか…
彼女は静かに語り始めた。亡霊の…幻の話を。
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”夕凪の幻“
凩の吹く季節、彼は誰時のみ現れる幻影
かの土地の最北に位置する沿海で其の者の依代を用いれば、たちまち望む形へと変化するだろう
肉親、友人、想い人、過去や未来の人間、故人のみを顕現させる
ただしこの儀式の掟を守らねば、依代は自身の命と見なされる
してこの儀式の後に大きな代償を払わなければいけない、半可な覚悟で行えば神罰が降るだろう
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「故人…」
「あぁ、それが夕凪の幻だ」
つまりは物に死者の魂を宿らせる、降霊術なのではないだろうか。
「よく祖母に聞かされたよ。夜遊びした時には決まって、夜の海は化かされるよってさ…」
「先生はその、死んだ友人を顕現させたんですか?」
話の流れから察するに、正しい手順で儀式を行い友人を依代に降ろした。そして大きな代償を払った。その時の出来事を俺に聞かせようと…
「させてないよ。そんな危なそうな儀式しないさ」
「………へ?」
返ってきた予想外の言葉に俺の思考は停止し、間抜けだ声を出させた。
「けど現れたのは本当だ。死んだはずのひまりが不自然に生える木の裏からひょっこりとな」
死者が…蘇る。そんなアニメみたいなこと…あるわけ…あるわけがないだろ。その話が本当なら、そんなの、今までの道化としての舞台が無意味じゃないか。
そう考えただけで正気を保てなくなりそうになる。息がしづらい、視界が眩む。早乙女がこの場にいたら間違いなく手を出していただろう。
「落ち着け命苫。まだ話な終わりじゃない」
先生は小刻みに震える俺の肩に手をかけてくれた。その手が俺の心を落ち着かせてくれる。
「私たちが体験した夕凪の幻は、伝承通りの幻じゃなかったんだ」
うまく頭が回らないせいか、先生の言葉を理解できなかった。
「さっき、儀式はしていないと言っただろ。それだけじゃない」
「やっぱり夕凪の幻は…法螺話なんですか?」
先生の…彼女の言いたいことが読めない。一体俺に、何を伝えようとしてるんだ。
「法螺話なんかじゃないさ」
「だったら…‼︎」
「私たちが見た幻は、晩夏の明け方…唐突に現れた亡霊だった」
その瞬間、俺は彼女が伝えようとする主張を理解した。
お待たせしました夕凪の幻ですよ!
この伝承が将也達をどこへ導くのか…
それとこれが今年最後の投稿になりそうです。また来年も道化たちをよろしくお願いします。
それでは幕間とします。みなさん良いお年を〜




