第二十五話:そいつの重み
È apparso un fantasma.
今日4月15日、昨日一昨日は高校生になって初めての休日だった。やっぱ休みだし遊び誘われるかな〜なんて現を抜かしていた俺は、結果ゴロゴロして貴重な二日を失ってしまった。学年が上がったからって休日の過ごし方が変わるわけではないと思い知った。
俺は学校に向かって足を進めている。それと同時にとあることを考えていた。
永井先生は大切な人を失い、友が離れていく辛い経験をしている。当時の先生はあの時の俺と同じように痛かったのだろうか。今も痛んでるんだろうか。俺は痛くて辛くてあの子に会いたくって仕方がなかった。あらゆる方法で何度も会いに行こうとした。きっと先生もそんな気持ちだったんだ。
朝から身勝手な考えを頭の中に巡らせている。知りもしないのに、過去の俺と先生を重ねている。ほんとに勝手な奴だな、俺って。
そうして少し憂鬱ながらも、学校に向かっている。
「あぁ〜やっぱ週初めの授業はきつな」
「けどこれで終わりだ。やっと学校という牢獄から抜け出せるぞ」
「やっとか…放課後という名の仮釈放の時間だぜ」
俺の目の前で、葉山と尚輝の二人が突拍子もない会話をしている。特に尚輝、色々まずい発言だぞそれ。こいつらは普段からこんな会話をしているのか…?
「そうだ、またみんなでカラオケ行こ…」
「行かない」
即答され葉山は静まる。明日が休みだったら行きたいが、今日行ったら週末まで体力が続かない自信がある。それに…
「この前のカラオケで財布軽くなったし…」
そう、問題はそこなのだ。葉山が何時間も延長するもんだからおかげさまで懐に大打撃を喰らったぜ…
「うぅ〜将也まで…みんなひどい」
「まあ気力と時間と残金に余裕がある時、またみんなで行こうよ」
「あんまり優希を甘やかすな。ダメ男になる」
それは言い過ぎでは…そんなたわいもない会話をしながら俺たちはバッグを背負う。二人は自転車通学だが俺に合わせて別れるとこまで歩いてくれる。その後は人の少ない郊外部で早乙女と落ち合い、早乙女を見送り家に帰る。クラスメイトに一緒にいるところを見られるわけにいかないからな…というのがこの前のカラオケで決まった帰宅までの流れになる。本心楽しみだ。
だがそんな俺の楽しみを打ち壊すようにその声が聞こえた。
「命苫、ちょっと来てくれないか。話したいことがあるんだ」
「いいですよ。悪い先帰ってて」
クラスメイトがいないこの面子では、俺は道化である必要は無くなった。
「ほほう…これが生徒と教師の禁断の恋ってやつか…」
ガツンと葉山の頭に拳骨が落ちる。ナイス尚輝。
*****
「それで話って…?」
俺はここ最近よく来る相談室に長い先生と対面して座っている。覚えはないがまた何かやらかしたか…
「その、この前話を聞いてどうだった…?」
この前の話、というのは今朝も考えていた永井先生の友人のことだろう。
「先生も、ちゃんと大人なんだなって思いました」
「それは軽くディスってるな。まぁそうか」
すいません…軽くじゃなく半分です。
「命苫…都市伝説とか噂って興味あるか?」
突然の質問に答えるのが少し遅くなった。確かにそういった類のものは多少の興味はある。
「まあ少しなら。それがどうかしたんですか?」
「ああ…」
今の先生の目はこの前と同じ目をしている。何やら相当話すのを渋っている。
「無理して話さないでください」
「悪いな。だけど、これはお前に話しといた方がいいと思ってな」
俺に話した方がいいこと。先生は俺が巻き込まれた事故の詳細を知っている。もしかしたらそれに関わることかもしれない。
「“夕凪の幻”って知ってるか?亡霊の戯曲なんて呼ばれたりもしているが…」
「全くないです」
その言葉に一切の聞き覚えがなかった。アニメや漫画なんかで似たようなのを聞いたことがあるが。
「その夕凪の幻ってのはなんなんですか?」
「今ではほとんどの人が忘れてしまった伝承だ」
「伝承…?」
永井先生は一体何が言いたいのだろう。その伝承が俺に聞かせたいことなんだろうか。
「そう、今から話すのは私たちが十二年前体験した…事実だ」
今の時期、街を歩けば聖夜だの恋人だの…俺は自分のキャラに嫉妬してるってのによぉ…




