第十九話:疾走者
しゃーねぇ…行くか。
「鈍ってんなぁ優希」
「その鈍ってるやつと互角かよ八浦!」
なんて熱気なんだ…風雷伝説と呼ばれるだけはある。
この二人の喧嘩は嵐を起こすほどの、まさに天災だ。
「不良をやめたお前と、互角か…」
八浦が動きを止める。その隙を葉山は見逃さず、右腕を八浦の右頬めがけて振りかざす。
体勢を崩した八浦は、膝を床につける。
瞬きの間だった。葉山は俺を見た。なんで俺を見たんだ…葉山。
だがそんなこと、考えるまでもなかった。
決めただろ…あの子に許してもらうために、何でもするって。
怯んでいた体に鞭打って、俺は早乙女の腕を掴む。
そのままドアまで向かう。
「今のうちに逃げるぞ早乙女‼︎」
「でも…葉山くんが‼︎」
「あいつなら大丈夫だ。信じよう」
出会ってまだ1週間も経ってないのに、こんなにも葉山を信じてしまう。これが友情なのだろうか。
だが当然、障害もなく出れるわけがなく、菅波と数人の不良どもがドアを塞ぐ。
「どけ、菅波龍兎」
逃すなと命を受けているいんだ。そう簡単には逃してくれな…
「構わんで。昨日の真相は話せねえけどな」
えっ…!予想していた回答と違い
何かの罠だろうか…こうモタモタしている間にも、八浦はまた暴れ出そうとしている。
考えてる暇はない。今は一刻も早くここから脱出するべきだ。
「将也…頼んだぜ」
葉山は優しくこちらを見つめていた。
「あぁ…任せろ」
俺は親指を突き立ててグッドサインを出した。
こうして俺は早乙女を連れ、教室を後にした。
*****
だが、俺の考えが甘かった。
「だって…この学校からは、出れねえからな」
そう独り言を呟いた菅波が、静かに笑みを浮かべた。
*****
教室を出てからの道のりは、えらく静かだった。
常に生徒が暴れているこの学校で、人一人見かけない。
「やっぱり、あの二人の喧嘩をみんな見に行ってるのかな…」
2年◯組の前には、極大な人だかりができていた。
菅波が道を開けるよう指示を出したので、無事に逃れたのだが。
まあ安全に脱出できるに越したことはない。今のうちだ。
「さて、希望の時間は終わりだ」
突然目の前に現れた人物は、そう告げる。
俺たちは、衝撃と絶望感で言葉を失った。
ついさっきまであそこにいたはずなのに…なんでここにいるんだ。
「よく分からんって顔してるな」
当たり前だ。誰が予想できるだろうか、こんな事態を。
「どうやってここに来たんだ…菅波!」
その厳つい男は昨日のような薄気味悪い笑みを浮かべる。
「んじゃ…昨日の続き、始めるか」
俺たちは掌で転がされてたのだと、ひどく痛感した。
スーパーウルトラミラクルムテキパーンチ‼︎




