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道化の心を奪うのは  作者: ゆーま(ウェイ)
無津咲編

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20/74

第十七話:傀儡演芸

A chi crede?


「ここにあいつがいるのか…」

2年◯組の教室。この扉を開ければ…菅波がいる。

ここに辿り着くまでに多くの不良達が俺たちを襲って来た。

と言っても、ほとんど葉山が薙ぎ払ってくれたので、俺らは教室に向かって歩いてただけだが。

だとしても疲労感が半端ない。

慣れない関係性の人と、普段の生活からは想像もできない非日常的な場所に来てるんだから。

「2人とも…開けるぞ」

葉山が教室のドアに手をかける。

あれはつい昨日の事、俺の顔面を包帯だらけにした人物がここにいる。

「開けるぞ…‼︎」

ガラガラッと音を立ててドアが開く。


          *****


正直なところ、今すぐにでも帰りたい。だって昨日あんなに殴られたんだぜ。

鋭い痛みにも耐えて、死をも覚悟した。いつもの俺だったらトラウマになって()()引き篭もるだろう。

まあ、あの時の悼みに比べればマシだったけど。

ただ一つ、計算外のことが起きた。早乙女美郷だ。

あんなそっくりな人間がいるとは思わないだろう。

他人の空似にも程がある。

俺は、そんな早乙女にあの子の幻影を見た。面影…の方がいいかな。

これが罪滅ぼしになると考えたんだろう。だから今、こんな状況に陥っている。

もしこれで、あの子が許してくれるなら…俺は、何だってやってやる。


          *****


ドアを開けた先に、奴はいた。

俺たちが立っている場所の直線上にある椅子に、脚を組んで堂々と座っている。

戦慄が走る。やはり恐怖は簡単に消えない。

縮こまる俺に構わず葉山が奴に言う。

「昨日ぶりだな。菅波龍兎」

今の葉山から感じる威圧感はまさに、雷神の如く(いかずち)を落としかねない。

「お待ちかねだぜ。雷神さんよぉ」

そんな葉山の圧にビクともせず、菅波は悠然と返す。

「昨日のナイスガールにもやし野郎も一緒だなぁ。理由は察しがついてるぜ」

「なら話は早い。早乙女さん…行けるか?」

「えぇ。大丈夫」

早乙女が葉山の前に出る。歩みを出したその足は、あの子に似てとても細くて綺麗だ。

そんな細く綺麗な足は、小刻みに震えていた。昨日の今日だぞ。怖くて当然だ。

「まず一つ、あなたの学生証を届けに」

本題に入る前に学生証を返却するようだ。そりゃ返さなければ窃盗罪になるからな。

「おぉ、全然気づかなかったぜ。どうもありがとうな」

まさか紛失に気づいてなかったのか。しかもあの見た目に反して律儀にお礼を…それは良くないな。

「そして二つ、あなたが私宛に書いた手紙について知りたい」

「手紙…あぁあれね」

これで真相が分かる。入学早々の一大事も、これで終止符が打たれる。

そんな俺の安易な考えは、即座に崩壊した。

「当然の話だが…何かを得るには対価が必要だよなぁ」

菅波がパイプを軋ませながら立ち上がる。

「交換条件だ。それが飲めるなら教えてやるよ」

「その条件は…?」

おいおい…まじかよ早乙女。葉山も何かを察したようで、顔を顰めている。

「こちらが提示する条件は、女かもやし野郎のどちらかだ」

女…早乙女のことだろう。もやしとは俺のことか。考えるに、昨日の報復をする気だろう。

「っ…そんな…」

「ふざけんなよ菅波。こっちはすでに害被ってんだからトントンだろうが」

「悪いがそう簡単には教えられないぜ」

どっちの条件も最悪だ…けど、あの子が許してくれるなら…

「とっとと選んだ方がいいぜ」

「はぁ?そんなに恥ずかしがるなんて、意外と乙女なんだなぁ」

葉山…あんま煽らんでくれよ…

「ちげーよ。もう時期あの人が来る。そしたら全員無事に帰れるか分かんねえぜ」

「あの人…?」

突然、いつの間にか閉められていたドアが豪快な音を立てて開いた。

そこにいたのは想像を遥かに超える人物だった。

巨人の様な巨体、太く鍛え上げられた腕脚、坊主頭に似合わない強面。

タンクトップに短パンと格好はラフだが、先刻の葉山とは比にならない程の威圧感。まさに暴圧だ。

「あーあ…残念だな。おかえり、ボス」

ボスと呼ばれた人物の本当の恐ろしさを、俺達はこれから体感する。

だんだんと複雑になっとるな…

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