第十五話:予兆
とれびやーん
「アイスコーヒー2つとホットコーヒーを1つ」
「かしこまりました」
カフェの雰囲気に似合う若い店員が注文を取り、去っていくのを確認した後に俺は話を始めた。
「まずさわりを話すと、早乙女が下駄箱の手紙を発見し、指定された場所に行くと例の男に襲われた」
「うん…概略はそんなところ」
早乙女が容認し、葉山が問題を挙げる。
「他校の生徒が早乙女さんの情報を知っていた事と、どうやって手紙を入れたのか…が謎なわけね」
現時点で挙げられる謎はそのくらいだろう。
「このデジタルな時代にアナログなヤンキーだな」
別にいいだろと思い、葉山の呟きを無視する。
「早乙女さん、例の手紙って持ってる?」
確かに。手紙に何か情報があるかもしれない。
「あるよ。今取り出すからちょっと待ってて」
んー…なんか違和感。
「将也はなんか見当ついてるか?」
「全然。もっとも、分かってるのがチンピラが通ってる高校だけだからな」
「高校か…」
葉山と話してるうちに早乙女が手紙を出していた。
「これがその手紙。この状態で下駄箱に入ってたの」
ちゃんとした手紙を想像していたが、実物は小さい紙を二つ折りにした簡素なものだった。
「思ったより地味…簡易な手紙なんだな」
葉山も同じことを思ったらしく、相応な感想を述べる。
「とりあえず読んでみるか。話はそれからだ」
俺が手紙を開く。小さな紙の中には、こう記されていた。
【 早乙女美郷さんへ
あなたに伝えたいことがあります。
今日、この場所に来てください。
某県鷹住市◯◯-×△まで 】
手紙の内容はとても簡潔に書かれていた。
あの厳つさからは連想できないような綺麗な字で。
頭を回転させ、思考を巡らせる。
チンピラが何を言っていたか全く思い出せない。
何たってこっちは死を覚悟してたんだから。
そんなことを考えていると、顔面に思い出し痛みを感じた。
頼んでいたコーヒーが届き、一口啜る。うむ、美味いコーヒーだ。
「コーヒーとは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように清く…恋のように甘いものだ」
18世紀フランスの政治家が残した名言にこんなものがある。まるであの子のことのようだ。
一緒にいるといつも暖かく、時折黒く、とても純粋で…甘い人だった。
「なんか将也が黄昏てるよ」
ゔっ…言われると恥ずかしいな。そんなに惚けてたのか俺は。
「だったら、直接聞きに行こうぜ。その方が早いだろ」
うんうん、葉山の提案に頷く。
「…」
早乙女は静止している。そりゃそうだ。
「葉山…それができたら苦労しねえよ。けど向こうは有名なヤンキー校だぜ。どうなるか容易に想像できるだろ…」
ここで早乙女の言葉を思い出す。
「なんの、あの程度ならオレ一人で充分よ。聞くのは二人に任せるからさ」
たしか葉山もヤンキーだったらしいが…
「そうしよう。私もこのままモヤモヤしたままにしたかない。命苫くん、お願い」
「なっ、安全はオレが保証するから」
えぇ…こう圧されると弱いんだよな。
「分かったよ。身の安全は葉山に託すぞ」
「おうよ!任せとけ」
何でこうなるのやら…一応俺怪我人なんだけど。
全員がコーヒーを飲み終え、会計を済ませる。
ごちそうさまも忘れずに。
「その高校ってここから遠い?」
「ええっと…そんなにかな。歩いて20分程度で着くよ」
まぁでも、不思議と嫌ではない。
あれだけ人を避けていた俺が、こうも馴染めるなんていまだに信じられない。
カフェを出て、目的地に向かって歩を進める。
昨日みたく危険な状況に陥らないことを、強く祈る。




