第十二話:目の寄る所へは玉も寄る
Che cosa sa?
結局学校に行ったのは、一限目の終わり際だった。
遅刻してきた問題児が傷だらけ…望まぬ形だが、悪名を広げる良い機会だろう。
ドアを前に立つ。これを開ければこの格好が多くの目に晒される。
さて、これも覚悟の上だ。切り替えろ…
「おっはよーございまーす」
「命苫、遅刻だ」
ドアが開くと同時に騒音級の挨拶をかました俺に、教師が無機質な声を掛ける。
この教師はあまり怒らなそうだ。
適当に流しておこう。
「どんな理由があれ遅刻したことに変わりはない。次から気をつけるように」
おぉ、此奴…言及してこないタイプか。
設定上色んな人に怒られることはザラにあるが、実は怒られるのが大の苦手だ。まあそれが道化である俺の宿命なのだが。
気まずい空気の中、俺は自席につく。
その時に、笑いを堪えてる早乙女が見えて、理由のわからない安心感と、多少の苛立ちを覚えた。
「め・い・と・ま・く〜ん」
午前の授業が終わり昼休みに入ったその時、俺はとある爆弾の存在を思い出した。
そう…この金髪ピアスこと葉山優希である。
昨日は絶体絶命のところを救われ、意識が戻らない俺をしばらく見てくれていたらしい。
が、このウェイウェイ系の葉山が昨日のことを黙っているとは思えず、遅まきながらも焦りが出てくる。
「聞いたぜ〜今日の放課後早乙女さんと二人でデートすんだってなぁ〜」
身構えていた俺の耳元で、葉山はとんでもないことを言い放った。
よし、ここは問題児らしく、ドッと言ってやろう。
「なっ…なんでお前が知って…‼︎」
あっ…ダメだこりゃ。問題児もクソもねぇや。もうどうにでもなれ。
「まさか昨日の借りを返せとか言う気か⁉︎」
もういっそ堂々と…覚悟はできてるさ…
だが意外にも、葉山は落ち着いた様子で、俺だけが舞い上がってるようだった。
「オレらも話したいことあんだ。邪魔するようで悪いけど、オレらも混ぜてくんね?」
ほうほう…つまり要約すると、昨日のことを二人で片付けるなってとこか。
平然を装ってたが、この後を考えるとなかなかに緊張していた。
この提案は俺にとっても都合がいい。願ったり叶ったりだ。
「ああ、俺は構わねえけど、早乙女の許可はとったのかよ?」
今回のメインは早乙女であって俺じゃない。従って、この提案の決定権は俺には無い。
「勿論。許可は得てるぜ。じゃあ決まりだな」
ついでに昨日話してたことも、そこで聞いてみるか。
…ん?
今更になって気づいたが、篠原の姿が見当たらない。朝はいたはずなのに。
「そういえば篠原は?」
「あいつは部活人と弁当食べてる。入学したてだってのに、スポーツ推薦は大変だよな〜」
成程、納得の理由だ。
さて、時は昼休み。
殆どの生徒は弁当の時間だ。俺もどっか空き教室探して食べるか。
「じゃ、俺は校舎徘徊に行くから」
立ち去ろうとする俺の肩を、葉山が引っ張る。
「オレ、いい場所知ってるぜ」
「は?」
本当に、は?である。
「………」
あぁ…察したぞ。
「そこで飯食おうぜ」
まさか問題児の俺に、共に弁当を食べる奴ができるとは…
驚きと呆れで渋々承諾した。
その中に、ほんの少しだけ嬉しさが混じってることに、俺は気づかなかった。
初めて友達とライン交換してから、どんどん友達の数が増えてくのがすごく嬉しかった。
けどそれは友だちって名前なだけで、ほとんどやりとりはしなかった。
いつしか、やりとりをする人数は手の指で数えられる程度になった。
それが2年前の話。
今もその指は変わらない。




