第十話:悔悟
Vorrei che fosse un sogno.
ここは…どこだ?辺りが真っ暗で何も見えない。何も分からない。
なのに、何故だかここにはいたくない。
「私のこと…忘れちゃった?」
この声…間違いなくあの子の声だ。
「そんな訳ないだろ。今までもこれからもずっと、明日香のことだけを…」
振り返るとそこには、光のない無限に続く暗闇だけが目に入った。いや、目を開けているかさえも分からない。
「本当に…?」
それでも声は聞こえる。明日香の、声だけが暗闇の中に存在する。
もしかしたら暗くて見えないだけで、目の前にいるんだろ。
俺は右手を伸ばした。指先が何かに触れた。
「そこにいるのか、もう怖くないだろ」
あいつは昔からホラーが苦手だった。だからきっと俺を探しているんだ。安心するために。
「違うよ、将也」
その言葉が暗闇を吹き飛ばした。
その先に広がるのは、横断歩道と1人の少女が立っている光景だった。
「私のこと、忘れてたんでしょ」
瞬時に理解できた。目の前に立っている少女は早乙女だ。この横断歩道はあの時の…
何が起きるのかは、いやでもわかる。だから早乙女を助けようと走ろうとした。
俺は左手に掴んでいるもののせいで、躓いてしまった。
気が付かなかった。けど、初めから左手にはこの感覚があった。
氷のように冷たくて、雪のように柔らかい、なにか。
それは同時だった。
俺が左手に掴んでいるものを認識し、耳障りなクラクションが鳴り響き、鈍い音がした。
「ほんとは将也もわかってるんでしょ?」
俺はあの時からずっとーーーーー
「全て自分のせいだって」
*****
「不良兄、はよ起き。いつまで寝とん」
「んん…あぁ…ふわぁ〜」
まだ寝ていたい欲求を押し殺して、目を覚ます。そうしたかったんだが、とても出来そうにないので、もう一度暖かな布団に包まる。
「昨日は大変やったろうけど、今日も学校に行くんよ」
そんなことを言いながら俺の布団を奪い取る。あぁ…さらば、幸福よ。
「珍しいなお前が起こすなんて」
「朝起きたらおはようでしょ」
「はいはい。おはよ、麻樹」
俺の一晩の温もりを全て奪い、少しの二度寝も許してくれない。
こいつが例の妹だ。昨日の件で俺は、不良扱いされてるのだが、よっぽどこいつの方が不良である。
目つきの悪さに、一つ結びの茶髪。メイクはナチュラルらしいがよく分からん。オマケにピアス穴を2つずつ開けている。
これが中学生の妹である。
「何ボケーっとしとるん⁉︎はよ準備しいや」
眠い…まだ冴えない頭で俺は洗面台に向かう。
「お兄…」
いつもより少しトーンの低い麻樹の声が、俺の視線を麻樹へと誘った。
「どうして泣いとるん…?」
なんだかんだ、あいつはあいつなりに俺のこと心配してたんだな。
あの事故で麻樹にも迷惑かけたし、立ち直れたのもあいつのおかげだ。頭が上がらないな。
「おはよう。命苫君」
後ろから呼ばれ、驚いて振り返る。
どうしてもあの子の顔が思い浮かぶ。
そんなことはないのに、現実は酷だ。
「お…おはよ、早乙女さん」
天使のような笑顔で、早乙女はそこにいた。
体の一部が異空間に飛ばされる病に感染したのでしばらく休みます。すいません。
2週間程度で回復します




