第九話:手遅れ
本当に…何でもないわ。
現在4月9日24時丁度。10日の0時とも言えるな。この時間になると、村は人が生活している場所か疑うほどに静かになる。
仕事や学校で疲れ寝ている人、宿題や資格の為に勉強している人。
例え中心部の影響で過疎化が進んでいても、人が存在することは確かだ。
俺は何をしてるのかって…?よくぞ聞いてくれた。
俺は今…1人反省会を催している。
*****
「今、何時?」
窓から外を見ると、橙を強調させていた夕焼けも、とっくに沈んで、無数の星が映し出されている。その中心には、満月に近しい月が出ている。
確か早乙女を助けたのが16時頃だったはずだ。ということは恐らく19時か20時くらいだろう。その時間なら妹も帰ってくるだろうし丁度いい。
「えぇっと…今は、22時ね。13分」
あはははは…これは笑うしかないな。
あの事件以降、母さんにだけは心配かけないようにしてきたが、夜中帰りとは間違いなくショックだろうな…恐らくはもう寝ているだろうが、低確率で般若化して帰りを待っているかもしれない。
…考えただけで寒気がする。一刻も早く帰らねば。
「命苫君…あなた…」
ん、なんだ?気になる切り方だな。
ふと気がつく。目が覚めてから俺は早乙女にどんな対応をしていただろうか…
問題児…俺はそうでなくてはいけないんだ。それがどうだ今の俺よ。
素だ。早乙女の前では完全に素が出ていたではないか。
今ならまだ間に合う。演じろ。道化として問題児を…
「学校で見た時と全然印象が違うわ…」
前言撤回。間に合いませんでした。こうなったら土下座してでも忘れてもらうしか…
「私は…今の命苫君の方が好きだよ。学校ではなんだかよくない印象だったから」
っ…‼︎今日は本当に驚かされる事が多い。
あの子にもこんなこと言われたっけなぁ…
あの子との思い出、早乙女の慣れない言葉が、俺の頬に涙を流した。
「まさか…そんなこと言われるなんて、思って…なかった…」
うまく呂律が回らない。
止まれ、こんな姿あの子に見られたくない。
「何故あなたが学校であんな事をしているのかは知らないけど、今のあなたの方がずっといい」
あの子に似てるせいだろうか。いつもは上手くできるのに、今は自分自身が出てしまう。
あぁ…道化失格だ。
「優しいあなたの方がずっといい…」
早乙女の言葉一つ一つが、心の重荷をなくしてくれる。俺を救ってくれる。そんな気がした…
そんなことある訳ないのに。
*****
「送ってくよ。怪我人を1人で歩かせる訳にはいかないし」
玄関を開けると、まだほんのりと残っている寒さが肌を撫でる。
確かに全身痛いが、そこまで酷い怪我ではない。ちょっと殴られただけだからな。痛いけど。
「大丈夫だよ。それに今日、あんな事があったんだ。夜は出歩かない方がいい」
俺はこの地域の土地勘なら自信がある。迷うことはない。
「一つ気になった事があるんだけど…聞いていいか?」
「えぇ…構わないけど、どうしたの」
確か葉山も言っていた(気がする)が、どうにも気になるのだ。
「家族はどうしたんだ?この家に他に人がいる気配がないけど…」
急いで口を閉じる。
振り返って見えた早乙女の顔は、今までにない程暗い顔をしていた。
触れてはいけない話題だったか…謝ろう。
「あ…悪い。プライベートなことを聞きすぎたな」
「別に、何でもないわ。ただ仕事で遅いだけ」
「そうか…」
最後に申し訳ないことをしてしまった。
「今日はありがとう。じゃあまた。明日ね」
あの子と同じように別れを告げる早乙女は微笑んでいた。天使のように。
「じゃあな…また、明日」
家に着くのは23時頃だろうか。
見事に予想は的中せず、俺と早乙女の家は徒歩10分も離れていなかった。
家に着いた俺は安心感から倒れそうになってしまった。
ここで倒れておけばまだこの後の事態が楽に片付けられたのに…
現在の俺の制服は、血だらけである。当然数分後に面倒なことになるのだが、それはまた別のお話。
一度出来上がったのに、保存してなくて全て消え去るという試練を乗り越え、何とか投稿できました。
将也の高校生活は明日からが本番ですよ




