表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/12

ハナコ、初陣!


ハナコ、はじめてのバトル。

 







 そうして暫くハナコとコミュニケーションを取ったことで、少し仲良くなれた気がする。

 鳴き方にもバリエーションがあり、通常時は「ぴょん」で機嫌が良い時は「ぴょい」になるようだ。今はそれしか分かってないけど。



 何はともあれ、ここでやることも残すところあと一つになった。

 さっきから待機状態にしていたシステムメッセージをタップして進めると、次のようなメッセージが表示された。




[最後にチュートリアルとして実際にバトルをしてみましょう。バトルは三回までありますが、プレイヤーの好きなタイミングで終わることも可能です]


「お〜!ハナコ、早速出番だぞ!」

「ぴょん!」




 ブオン!と物騒極まりない風切り音を鳴らしながらやる気満々で棘棍棒を一振り。心なしか目つきもキリッとしている。

 どのパトモンが相手でもアタシが粉々にしてやるわ!と意気込んでいる。頼もしいなぁ!

 ここまで来て焦らしても仕方がない、張り切っていくぞ〜!




「それじゃあ、一回目よろしくお願いしまぁ〜す!」

「ぴょぴょぴょ〜い!」


[畏まりました。チュートリアルバトルその①を開始します。対戦相手を召喚────完了しました]




 メッセージに合わせて、俺たちの対面側の地面から空に向かって一筋の光の柱が立ち昇る。

 先程と違って目を灼くレベルの光量ではないため、光の柱の中に薄らと黒い影が確かな輪郭を伴って現れたのを確認できた。



 本来なら緊張のあまりゴクリと生唾を飲むような場面かもしれないが、一つツッコミを入れさせてほしい。

 なんというか、君ちょっと小さくないですか?それが全身じゃないよね?

 なんて思っている間に光の柱が弾けると…………そこには0.3m程度の綿あめのようにモフモフした白い毛玉が転がっていた。




「フモモッ!」

「ぴっ!……ぴょん?」

「なんか聞こえた!?あの毛玉鳴いた!?」

「フモッ、フモゥー!!」

「今の絶対“不毛(フモゥー)”って鳴いたでしょ!えっ、空耳!?」




 見るからに弱そうなパトモンに動揺が走る。

 いや、別に弱い分には構わないのだ。ただメルヘンチックな見た目なのが問題である。

 今からあの毛玉に対してハナコの棘棍棒を振り下ろすの?マジで言ってる?絵面的にちょっと……だいぶ……かなり不味くないかな??

 そんな懸念なんて考慮してくれるはずもなく、すぐに状況が動く。




[それでは、バトルスタート!]


「フモモー!」

「ちょっ、このタイミングで!?あーもういいや、ハナコ!相手の動きをよく見て確実に『叩き潰す』を当てるんだ!」

「ぴょぉおおっ!!」




 えっ、何その鳴き声?と思った次の瞬間には、轟音と共に白い毛玉は叩き潰されていた。

 上から下に、最も力を込めやすい振り方で地面の染みに変えられてしまったのだが、どういうわけか地面そのものには傷一つない。破壊不能オブジェクトとかそういうやつかな。

 現実逃避で頓珍漢なことを考えていると、目の前にメッセージが流れる。




[フモッティを一匹倒しました。おめでとうございます!経験値を取得しました。綿毛×3、薬草×1をドロップしました]


「わぁ……さ、さすがハナコだな!凄かったぞ〜!」

「ぴょい!ぴょぴょ〜い」

「それにしても瞬殺とはね。いや〜、超高速で致命の一撃叩き込んでくるの怖すぎるだろ」




 このゲームはポ◯モンと違って、通常個体の間では能力値的な優劣は極めて少ないと言える。

 トータル600を割り振るのはどのパトモンも変わらないので、有るとすれば能力の振り方や強力なスキルの有無くらいだろう。

 そのためフモッティも合計600のステータスがあったはずなのだが、まさかの一撃死である。フモッティがクソ弱いのか、ハナコがクソ強いのかどっちなのか分からない。



 そのままチュートリアルバトルその②もやってみたのだが、フモッティが三匹現れたかと思えばハナコの『ぶん回し』によってまとめて消し飛んだ。

 所謂グループ攻撃的なアレなのだろうが、威力の減衰とか感じさせないパワーで一撃の元に擦り潰すのは王者の貫禄すぎる。



 これは次も期待できないかなと諦め半分でチュートリアルバトルその③を頼んでみたところ、どうやら今度は強MOBを召喚するらしい。

 その③のクリア率は今のところ1%未満だとか。高難易度ミッションみたいなものかな?



 ワクワクしながら見ていると、なんか妙に光の柱が太い気がした。

 不気味に巨大な影が揺らめく。フモッティと比べて、いやハナコと比べても明らかにデカい何かが居る。

 光が弾けると、そこには翼のないドラゴンがこちらを睨みつけていた。大蜥蜴というには荒々しく、ドラゴンと呼ぶには小さく、強いて言うならば恐竜と表すのが最も相応しいだろうか。




「グルゥ……ゲギャギャァアアアーーっ!!」




 空気がビリビリと振動する。反射的に耳を抑えてしまうほどの咆哮。

 高さ三メートル、頭から尾の先までを含めれば全長四メートルを優に超える体躯は土色の鱗に護られている。半端な攻撃では意味を為さないだろう。

 恐らく同じレベル帯のパトモンではないのだと、何となく気配的なもので分かってしまう。一つや二つの差でもなく、もしかしたら進化系なのではないかと疑念が湧いてくるほどだった。









リアリティ重視なので、ダメージ計算の際には速度×重さは当然のように適用されている模様。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ