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13 レオス・ヴィダールは圧倒する

 ムルムルと融合した体は嘘みたいに軽かった。

 そして力が漲ってくる。

 今なら何でもできる気がしてくるぞ。


「所詮はムルムルと融合しただけに過ぎん。その程度で私と張り合えるとでも?」


 ベリトが俺に問いかける。

 なんだかあれだけあった圧倒的な力量差が感じられない。

 ベリトが小さく見える。


「そうだな、それをこれから試してみるよ」


 俺は近くにあった剣を取り、ベリトへと一足で接近する。


「っ!」


 ぶらんと垂れ下がった剣をそのまま上へと振り上げる。

 ただそれだけの動作でベリトが動揺する。


 どうした?

 俺はまだまだ本気を出していないぞ。


「ほら、出し惜しみしないで全力でかかって来いよ。お前、強いんだろう?」


「人間風情があああああああ」


 そう叫んだベリトの体が膨張する。

 やせこけた体は筋肉隆々とした体に変貌し、頭にあった角は三本に増えている。

 蹄のあった下半身もかなり太くなっている。

 まあ見た目だけは強く見えるかな。


「それで?」


 それくらい俺でも出来そうだけど、醜いからしていないだけ。

 多分力を入れれば可能だろう。

 悪魔と融合したことで色々なことがわかる気がする。


「レオス、油断はよくないのです」


「悪い悪い、なんていうのかな、万能感? 今なら何でもできる気がしちゃってさ、気が大きくなってるのかな」


「ムルムルには分からないのです。今まで誰一人成功しなかったから」


「それならこれから思う存分分からせてやるよ」


「あまり私を舐めるなよおお!」


 ムルムルと楽しくおしゃべりをしていると、ムキムキになったベリトが襲い掛かってくる。

 その筋肉に見合うように先程よりも更に早く動いている。

 でも見える、どれだけ早くなろうと、俺の目にははっきりと動作が見えている。

 次の動きも、これは予知なんかじゃない、俺の今までの研鑽から導き出される予測だ。

 そしてそれを処理しきれる脳、ハハ、今までの努力は何一つ無駄じゃなかった。


 繰り出される拳、蹴り、爪、それら全てを紙一重で躱す。

 俺の体には傷一つついていない。


「ほら、どうした。俺はまだ傷一つついてないぞ」


「くっ!」


 素手での攻撃に無理を悟ったのか、ベリトが距離を取る。

 何かが来る。

 そう構えていると俺の上から雷が降ってきた。


「っはははは! さすがの貴方でも無傷では――」


「痛いなあ」


 俺の体は静電気でも走ったかのように全身がビリビリとした。

 髪の毛が焼けるかもと思ったけど、問題ないようだ。


「ムルムルは痺れてますう」


 ムルムルは痺れているそうだ。

 ならこの攻撃を食らうのはなしだな。


「ちい、ならこれならどうだ!」


 俺の腕にうっすらと魔力の痕跡が見える。

 すると腕からぽっかりと肉が消え去った。


「これは効いたようですねえ!」


 これは、空間に作用する魔法か? いや異能と言ったほうがいい。

 理外の外にあるこいつらに魔法という狭い概念で戦うのは危険だ。

 ベリトは俺のブラックホールからも出てきたしな。

 しかし地味に痛いな。

 回復しろ! こら!


 俺が気合を入れるとモリモリと肉が集まり、跡もなく綺麗に傷は塞がった。


「なんか治ったわ、まあ悪魔ってそういうもんだよな」


「ま、まあこの程度は想定内。貴方に傷がつくなら問題はない!」


「いや、痛いんでこれ以上はさせないよ」


 俺はベリトから流れ出る魔力を感じ取る。

 今度は左脚か。

 俺はその魔力の線を手刀で切り離す。


「なあ!」


 いや驚かれても、お前が出来る事がなんで俺が出来ないと思ったんだよ。

 慢心が過ぎないか?

 そうだな、これも試しておくか。


「ダークバインド」

「グラビティ」


 強くなった俺による闇魔法。

 どれだけの効果があるのか気になっていた。


「ぬおおおおおおおおおおおおお」


 現れたのはイカの化け物、クラーケンだっけ。

 闇の中から現れたそれはその触手を使いベリトを完全に絡めとる。

 身動きの取れなくなったベリトに超重力が襲い掛かる。

 最早立つことも出来ず、無様に地に伏している。


「どうした? 早くたって来いよ」


「ぐぬぬぬぬぬ」


 おおすごい。

 クラーケンの触手をぶち切り、立ち上がるベリト。

 俺が思っている以上に強い悪魔だったっぽいな。

 そしてベリトがグラビティの範囲から抜ける。


「先程から舐めた真似ばかりして!」


「ああ、舐めてるからな。お前だってそうだったろ? なんで俺がしちゃいけないんだ?」


 だめだな、悪魔と融合してから思考が悪魔よりになっている。

 これ俺人間に戻れるのかなあ、少し不安になってきたぞ。


「それが命取りになることを教えて差し上げましょう。


 ベリトがそういうと背中か翼を生やし宙へと飛び立つ。


「まだまだ若い命はたくさんある。貴方に構っている理由などないのですよ」


「あっそ」


 俺はそういって逃げるベリトに最後の通告をする。


「いつ逃げていいっていった?」


 ベリトがバンと大きな音を立てて宙に浮いている。


「これは……結界?」


 むしろなんで逃がすと思ってたんだよ。

 アインのこともあるし、レインやエレオノーラ、リボーンや他の生徒もいるんだぞ。

 最優先に決まってるだろ。

 もちろんアインは結界で守っている。


「俺は悪魔であり、人間なんだよ。お遊びだけで生きていないんだよ」


 俺は背中から翼を生やし、宙に浮いているベリトへと近づく。


「くそがああああ」


 怒り狂ったベリトが再び俺に襲い掛かってくる。

 その瞳に映るのは本当に憤怒だけか?

 恐れを抱いていないか?

 俺は手に持つ剣を掲げる。


 それを上段から勢いよく振り下ろす。

 それだけでベリトは頭の先から一刀両断された。


「やっぱ最後は剣だよな」


 ブラックホールでぐちゃぐちゃにしてやるのもよかったけど、俺は剣の方が好きだ。

 それにこれは俺一人じゃ敵わなかったことだ。


「ありがとうなムルムル」


「そうなのです、感謝するのです」むふー


 今こいつはどんな顔をして、俺はどんな顔をしているだろうか。

 分からないことだらけだけど、今は勝利に感謝しよう。


 そうだ結界も解かないと、俺は全体に作っていた結界を解いて、アインの元へ急ぐ。

 ひどい怪我をしていたはずだ。

 

「アイン!」


 返事はない。

 しかし息はしている。

 よかった。

 俺は回復魔法を使い応急処置を行う。


 これでひとまず安心だろう。

 安心したら急に疲れが出てきた。


「そういえばムルムル、これってどうやって融合解くの?」


「えーっと、そのうち勝手に切れるのです」


「んな適当な!」


 俺は思考を放棄してアインの横で寝そべった。

 そのうちどうにかなるだろう、とにかく疲れた。

 ひと眠りしてから考えよう。

 俺はそのまま眠りについた。


(ありがとう、レオス)


 ムルムルの声が聞こえてきた。

 馬鹿やろー、感謝したいのはこっちだって。


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