ギルド
いやはや、今回のタイトルを見ると前回のやたら長いタイトルは何だったのか。
まぁ、それはどうだっていい。
「問題は、いくらパッと見で6本の腕がわからないからとはいえ、簡単にばれちまうっつーことだ」
触れられたらばれる。じっくり見られてもばれる。うーん、4本の腕は2週間くらいで生え変わるし、斬り落としてもいいか?
いや、斬り落としたら俺めっちゃ弱くなるしな…。
多少のリスクがあっても入るか。ただ、孤児だったから、身分証を作らないといけないわけだが。身分証は冒険者として発行するか。
あれも一応身分証になるはずだ。村長に聞いた限りでは。
あれなら発行はゆるい。犯罪さえしていなければとれる。あとは…強さの証明が必要だけど、それは主腕だけでどうにかしよう。
グランは…?隠せないよなー。堂々としてるか。
ネロ町には門と呼ぶべきものがない。日陰の村同様に。簡単に出入りできる。だから、ちょうどいい。
この世界にはギルドなる組織が存在し、そこに冒険者という職の者たちが所属する。
ギルドは荒くれ者たちを集め、統括する組織。もともとは一部の冒険者同士の協定であったらしい。気付いたら冒険者全体に広まり、それがルールではなく組織へと姿を変え、ギルドとなった。
冒険者はそこに所属し、護衛や魔物退治などをする。
冒険者はギルドの中で団体を作る。俺でも知っているような有名どころだと、例えば総合統括“夕景の情”、討伐連合“剣の魂”、市場支配“どこでも何でも屋”、技神降臨“最終技術”、グレードを下げると、絶対勝利“黄昏の詩”管理運営“取り立て屋”、宿泊施設“極楽行きのベッド”。あたりだ。これは何十、何百人が所属する大きなギルド。その下に数人だけが所属する小さなギルドが無数にある。
ちなみに、ギルドはこれらの団体のことを呼ぶ場合も多い。ルールのほうをギルド連合と呼ぶことで差別化しているらしい。
「この街にはギルドがあるはずだが」
ギルドは夕焼け色の大地を背景に、綺麗な剣が目印だ。
その大地は、その土地ごとの景色。いわく、四大ギルドを表しているらしい。夕焼け色が“夕景の情”、大地が“どこでも何でも屋”、剣が“剣の魂”、精巧な作りの看板そのものが“最終技術”。
おっ、あれか。港町なので潮風に強い砂岩というかなんかその類の建材の建物だ。
特に存在を主張せずにドアを開けて入る。ギルド内の人は少ない。こんな片田舎ではギルドも仕事がないだろうしな。ただ、双子町、ネルとの行き交いで船を護衛する仕事があるから設置されているのだろう。
受付嬢の下へ行く。
「ようこそ、ギルド連合、ネロ町支部へ。ご用件を伺います」
「登録、ヴェルムンド行きの船の発着の時間と王都シェルディ行きの船の発着の時間が知りたい。それら費用も教えてくれ」
「わかりました。では、登録の費用として200エルいただきます。もしも推薦があれば不必要となります」
「いや、推薦はない」
金を支払う。村長がくれた500エルと俺がもともと持っていた300エルの残りは800エル。
「文字の読み書きは可能ですか?」
「ある程度は可能だ」
村長に勉強は教わった。商品の売買に必要な計算もできる。
自慢できるほどでは到底ないのだが。
「では、これを読んでサインをしてください」
冒険者とギルド、ギルド連合のルールか。
まぁ、それほど複雑なことは書いていない。馬鹿でも理解できるようなルールだ。
契約を見終えて、マレディとサインをする。
「ありがとうございます。カードを発行しますのでしばしお待ちください」
「こちらがマレディ様のギルドカードになります。所属するギルドはありますでしょうか」
「今はない」
「わかりました」
さて、身分証が完成。今は茶色いカードで、まだまだ強くないということを示している。ランクはFだったか。そっから、順番にAまで上がって、伝説級のSがラスト。
まぁ、俺はランクを上げるつもりなんて全くない。ランクを上げると無駄に存在が強調される。有象無象の一人であったほうが楽だ。
「続いて、船についてですか。まず、費用ですが一般の方でも乗れる精巧な手続きを踏んだ船になりますとヴェルムンド行きの船は100~200エル、王都シェルディ行きの船は320~400エルとなります。一応、船の護衛という名目であれば無料です。また、これは倉庫でもよければどちらも50エルに抑えられます。ただ、おすすめはしません」
倉庫でよければ、ね。まぁ、そっちでいいか。
「いつ出るのを目安としていますか」
「今日明日だな」
「では、今日の夜5時、明日の朝5時、夜の13時が該当します。残念ながら王都シェルディ行きの船の発着時刻はわかりません」
「今日夜5時のほうの乗り場は?」
「2つある発着所のうち、より奥のほうです」
「わかった。サンキュ」
「いえ、またのご利用、お待ちしております」
さて、あとはどうしよう…
「何してくれてんだこのおっさん!!」
「おいおい、最近の若人は気性が荒いねー、落ち着きなよ。おじさんお茶奢ってあげるから」
…。
胡散臭いおっさんががごろつきに絡まれている。だれも止めない。止めるメリットがないから。せめて美人の少女とかならだれかが止めていただろう。
そのおっさんは背丈が200㎝ほどあるうえ、元のガタイはいいのだろうが鍛えていないせいかひょろい。沈んだような黒い目に黄色いメッシュが入った黒髪。左手にだけ手袋をしており、上着も左側だけを隠すようにしている。右側はかなり楽そうな服。
「受付嬢さん」
不意に問う。
「はい」
「ルールには書いてなかったが、喧嘩を殴って止めるのはありか?答えてくれりゃそれだけでいーから」
「あの人はDランクです。強くはありませんが、Fランクでは敵いませんよ」
「いーんだな、わかった」
胸ぐらをつかんで威嚇のための前傾姿勢がごろつきの姿勢。足を後方に払えば転ぶ。
「で?」
ごろつきに問いかける。
「おっさん無事?」
「んー?おっさんは最近四十肩がひどくてちょっと無事じゃ…」
おい。
「で?お前はいうことある?」
威圧的に、高圧的に頭を踏みつける。村のみんなにどうにかしたほうがいいといわれた目つきで睨む。
「さて、どーする、俺は続けてもいーぜ」
足を退ける。
「くそがっ」
「おー、少年すごいね。おっさん尊敬しちゃう」
「やめろ気持ちわりーから」
ほんとに。
「で?何があったんだ?」
「いーやぁ?おっさん肩ぶつかっちゃったみたいでさー。…あっ、少年、この辺か、もっと西で魔物に関する変な事件知らない?おっさん、それ調べてるんだけどねー」
「…」
「む、何よ。男前なおっさんにびっくりしちゃった?」
「おっさん、強いだろ」
本能的な警鐘。
「そうよ、おっさん実は世界的に有名なあの暗殺組織“人形繰団”に所属して…」
知らねーよ。っていうかウソだろ。
「さて、準備するか」
グランについても何か考えないとな。とりあえず、麻袋か何かに入れて隠すか。それとも、魔物を飼育するジョブが存在したりするのか。俺は知らない。
「受付嬢さん」
「はい、何でしょうか」
「魔物を飼育するようなジョブって存在する?」
「テイマーですね」
「なるほど、奴らが敵か…」
俺のことでないように言う。まぁ、レッドグリズリーを仕掛けてきたやつらがテイマーである可能性もあるのだがな。
とにかく、テイマーとして連れ込むのはオーケーか。
今は昼間だからあと4時間ほどで5時になる。
とりあえず、傷薬や食料を買っておくか。




