2話・丸っこい石らしき、何かはよくわからないけど愛着が湧く、そんな感じの魔物
「ふっ」
どうやら俺は動くと息がわずかに漏れる癖があるらしい。直したほうがいーな。
今は、コボルトと戦っている。
「この森にはこのサイズのコボルトまでいたのか」
レッドグリズリーほどの大物の気配はしないが。
「…例のキノコの残滓とかだってーなら納得だが」
増えている。前まではもっと弱い魔物くらいしかいなかった。コボルトも滅多に見かけず、いても小さい個体ばかりだったのだが。
しっかし、村長の剣は安物だけどしっかりと斬れる。
苦戦せずに倒せた。
と、少し歩いたところで。
「!」
なんだこれ。
丸っこい石。岩というほどではねーが、石というと小さく感じられる。人の顔くらいのサイズ。かぁっぽりと穴が開いていている。
ダークブルーくらいの色味か。手と足らしきものもついている。脚は普通に動くうえで使えそーだが、だが、その短い手は果たして何のためにあるのかわからない。
「魔物、か?」
!
「キイイィィィン!」
音波?空洞は口に近い機関だったのか?
耳が痛い。よく見ると、角ばって丸みを帯びているのに、かけている部分がある。何らかの事故にでもあったか?
「あ、あー。…大丈夫だ、俺は攻撃をしない。むしろ昔はされる側だったんだぜ?信じられねーよな」
なんて、語り掛ける。
すると、その小さな手で俺の右前腕を撫でてくれた。なるほど、短いその手はそのためにあんのか。
石なのでごつごつしている。
「名前が分からないうえに、治し方もわからない」
どうしよ…。懐かれた以上、捨てはしないが。
「とりあえず、ついてきてくr…」
まずい気がする。嫌な気配が。
オーク…!
この辺りには川が流れていて、生物が過ごしやすい。なるほどなるほど、生育環境の問題で奥には強い魔物が多いと。で、レッドグリズリー進行によってずれたのか。
さらに、今の音波、おびき寄せられるだろうな。
「! 魔法が使えたのか、お前」
石の魔物、すごいな。魔法が使える魔物は少ねーはずだが。
「じゃ、頼んだ。オークには悪いが討伐されてもらう」
“石弾”と“岩弾”が使えるっぽい?いや、周囲の岩を操作しているのか?魔法に対する知識が俺は浅すぎる。そもそも、“石弾”と“岩弾”も威力以外に何が違うのかわからねーし。
「っと、“陸”」
“陸”は斬撃。全ての腕で順に繰り出す連撃。
「ダメか」
脂肪が…筋肉が厚い。ダメージにはなるが、決め手に欠く。“六”で心臓を狙うにしてもショートソードだから刃渡りが足りるか否っつーところだな。
「?」
岩が集まって、回転。コマと同じ原理でまっすぐ、高威力の槍となる。
キイイィィィンと、音波とは違うが、文字で表すと被ってしまうような音がする。
だんっ! と音を立てて発射された石槍はオークの腹に深々と突き刺さる。急所でこそないが、しっかりとダメージになっている。俺の攻撃以上に。
これなら攻撃ができる。オークの全身の筋肉が緩み、半端に収縮した。
さらに、首は比較的守りが薄い。まー、当然か。
「斬れる」
ずぁっと首を斬った。
「…すげーな、お前」
石の魔物。名称不明、不定。
「とりあえず…」
石、岩、ストーン、ロック、岩石、ゴーレム…。
「お前はグランってとこじゃねーか?」
大地、グラウンド。さらに、願いとしてグランド。壮大。クラン、家族。
割といいと思う。
「気に言ってくれたなら何よりだ」
そういうリアクションをとった。
じゃ、俺はこいつを抱えて日陰の村に戻るか。
オークを倒して体も動かした。目的も達成したわけで、仲間と呼べる奴ができたならちょうどいい。
ただ、問題は魔物と亜人が普通の町には入れるかという話だが…。それは置いておこう。
「よぉ、村長」
「ん、どう…何じゃそれは?」
「森の中にいてな。友好的でオークを倒すのも手伝ってくれた。すげー助かった」
「お前は何か知っておるのか?」
「俺はそれを聞きに来たつもりだったんだがなー」
なるほど、わからないか。
「ゴーレム系統の魔物なのは見てわかるんだが」
「それは違うぞ」
「ん?」
ゴーレムじゃないのか。
「ゴーレムには核が必要じゃよ。魔法生物には核がないものも多いがの。核がないのであればゴーレムというより錬金生物や物体生物と言ったほうが正しいじゃろう」
ふーん。
「じゃぁ、こいつを治すには錬金術でも使えと?」
「どうじゃろうな。じゃが、もしも何らかの治癒方法を獲得しておるのであれば、その限りではないの」
「サンキュ」
俺は錬金術を使えないし使う方法も使える奴も知らない。
しかし、何を食べるのだろうか。石?宝石?魔力?
魔物であるなら瘴気でも食べるのだろうか。
瘴気とは魔物が生まれる原因となる魔力とは違った力。瘴気がどこから生まれ、なぜ魔物を産むのかはわからない。ただ、瘴気が濃いと魔物が産まれやすい。
しかし、瘴気を必要とせず、自身の力で繁殖する魔物もいる。ゴブリンがいい例だ。人間の女犯して繁殖する。
ゴブリンは人と魔物の中間に分類されることが多い。
錬金生物は錬金術によって生まれた人工的な生物のことなのだろう。あまり詳しくは知らない。ちなみに、錬金生物もほとんどが生物ではないことは間違いない。生物的ではあるが。
じゃー、予定が思っていたよりも体を動かせたし、今すぐにでも家を出るか。
村長にその決定を伝えて、グランを連れてゴー。夕飯には豪勢なクマ料理が出るのだろうが、斬った本人だからわかる。あの肉は硬くて筋肉質でまずい。
うまく繊維をほぐして煮込んだりすればおいしいのだろう。少なくとも村一の料理人である俺が料理すればおいしいのだろうが、村で2番目に料理がうまい村長の嫁の料理だっておいしくなかった。
俺が料理に参加していないのなら、おいしくならない。素材の味を引き出すなんてことは到底無理だ。
というわけで、俺は村長に報告し、まずい料理から逃げるように村を出た。一応、村長には料理がおいしくないであろうということは伝えたが、すでに覚悟していたようだ。
道中には魔物もいたが、簡単に倒した。やはり、アルミラージなどではレッドグリズリーにもオークにも及ばない。
コボルトよりやや弱い程度か。
何の脅威でもない。グランの活躍もあったが、敵が弱すぎた。音波程度でもひるむ。
飯は倒した魔物をさばいてどうこうするだけ。パンもサラダもないたんぱく質だけの料理。
グランは石を分解するように食べている。口に当たるであろう部位に放り投げて食べている。音波で少しずつ削るようにしている。
さて、到着。
4つある大陸の1つ、北西のフェンリ大陸が俺らのいるとこ。その南西にある日陰の町から東に進んだらたどり着く町。
双子の港町、ネロ町。
ここにつくまでに6日。平原を抜けてきた。奴らの進行方向はおそらく海港都市、ヴェルムンド。そこから、北の増設都市、王都シェルディに向かった可能性が高い。
ただ、海港都市の時点ですでにほぼ間違いないが、という予想だから的外れである可能性もある。
半日もずれれば負えない可能性は非常に高い。単純に、あの時点ですぐに行く危険性が今の追えない可能性よりもデメリットがあったからこうしただけだ。
ここからが、亜人としてきついところだ。
ネロ町はともかく、ヴェルムンドと王都シェルディにはいるには、身分証がいる。
どーしたものやら。




