1話・事件
一部の人から見ればこのストーリーは知ってるな、似てる話があるな、と思うこともあると思います。未熟者ですが、これからよろしくお願いいたします。
俺はマレディ。呪われた人間。人というよりは亜人。年齢は19だが、果たして年齢という概念が俺に適用されるのかもわかんねー。そもそも、孤児である俺の正確な年齢は全く持ってわからねーから、暫定的な数字だ。18くらいかもしんねーし。
まず、魔法が使えない。つーか、魔力を持たないがゆえに使えるはずもない。魔力を生成する能力が欠けている。
で、そんなのがちっぽけに思えるような欠点。
六本の腕。俺には腕が六本も生まれつきある。普通じゃない
そのうえ、金髪金眼なんていう貴族っぽい風体のせいで嫌われる。やたら王族と貴族に多いんだよこの感じ。
どこでも受け入れてくれなかったが、今ではここ、“日陰の村”で暮らしている。
っと、誰か来たようだ
「誰だ?俺はいつでもオーケーな男だぜ」
まぁ、そんなことは全然ないが。
「マレディ兄ちゃん!緊急事態だからふざけないで!?」
おう、ラック少年。
近所の少年。
「どうした?」
「来てくれ!魔物が侵入してきたんだ!“日陰の村”に!」
「わーた、今行く。場所は?」
「北の門だ!魔物はレッドグリズリー」
わかった。サンキュ、教えてくれて。
あっちなら気配が感じ取れないはずだ。
「けが人は?」
「僕が来るまでにはいなかった!僕が見つけたんだ!」
「お手柄だ、ラック!」
窓から、家を出る。この日陰の村自体は大きくねーから、北の門までせいぜい40mしかない。
門と言っても入口くらいしかないような小さな村だよ。すげー暮らしやすいけどな。
「よう、村長!ヨキよこせ!」
ヨキってのは木こりとかが使う斧だ。
「ふんっ、倒せるのか?」
「俺はできないことのほーが多いが、これなら大丈夫だ。クマ、悪いが村に被害を出す以上死んでもらう」
3mはある巨体。
曰く、レッドグリズリーの名前はその赤く木の実のようにまぁるい瞳ではなく、返り血で赤く染まったその巨躯に由来するらしい。
まぁ、普通の人間であれば死ぬ。村が滅んでいてもおかしくはなかった。
俺がいたから大丈夫だが。
「なら、任せたぞ!」
「あと村長!主婦の研いだ包丁とかなんかその辺くれ!六本の腕全部使わないと勝てねーよ!」
俺は力なんてないんだから。身長も160なんだよ。体格も普通の成人男性よりも華奢だ。村長は年いってるが、腕相撲で負けてるからな!?俺は腕六本あるから腕相撲とか意味わかんないけど。
だから、俺の長所は手数と速度だ。活かせる形じゃねーと勝てない。先述の通り華奢だから体力もやや少ない。
「これを使え!」
「サンキュ!」
四本くれた。腕が一つ余ってるな。門の松明とかでいーか。燃えるしな。
「これ駄目になるかもしんないがいーか?」
「ふん、村の人間の命に比べれば安いわい!」
「あんた最高の村長だ!」
俺は六本の腕を持っている左右に二本ずつ増えてだ。それを、前腕、主腕、後腕と呼ぶ。前腕と後腕は蛇の体のような形(骨の形がなんかそんな感じなんだよ)をしていて自由に動かせる。主腕が普通の腕だ。前腕と後腕はかけてもまた生えてくるが、主腕は失ったら生えてこないだろーな。それこそ“憐憫故の雫”やらなんやらでもないと。
前腕がいわゆる腕の前腕と分かりにくいのは許してくれ。
で、左前腕、右前腕、右主腕、右後腕に主婦の包丁を…いや、右前腕のは肉の革とかを剝ぐまたちょっと別のナイフだな、これ。どうでもいーが。左主腕に松明を。左後腕にヨキを持っている。
「どりゃぁ!」
五連斬り。で、怯ませ…
「だっ…!?」
強っ。吹っ飛ばされた。殴られるというよりは凪がれた感じか。
「おい、マレディ!ほんとに大丈夫じゃろうな!?」
「んー、左前腕が折れただけだ」
クッソ痛い。殺意がほとばしるね。
「っし、再戦だ」
左前腕はもう邪魔になるだけだから切り落とす。六本腕は手数が増える。一方で、邪魔になる。多分、これ普通なら絡まって戦いにくい。腕が少なければ可動域も増える。
「ふっ」
と、息が思わず漏れる。速いわ、このクマ。巨躯に反して速い。だから、吹っ飛ばされたのか。
確かに、熊って普通人の全力疾走よりも速いんだったな。
「だったら、もっと近づくだけだ」
離れずに、こちらの間合いに入れる。
「内側から燃えちまえ」
目を斬って怯ます。口ん中に松明入れりゃぁ、死ぬよな。
「っと、すご」
生きていた。いや、口なんて半分くらい露出した内臓だろ?なんで燃えて生きてるんだ?
「“六”」
今使える技、かな。“六”と“陸”という技が使える。技と言っても、俺が13歳くらいの頃、幼馴染に当たる少女が使っていた技の俺バージョン。
“六”は心臓とその周辺を狙った6回の突き。まぁ、包丁の刃渡りが長くてよかった。しっかりと刺さる。
「…勝ったぜ、村長」
「今夜は宴じゃな」
「俺はなんでこいつが来たのか、森のほうを見に行ってくる」
「任せたぞ」
「安心しろ、生きて帰ってくる」
「聞いとらんわ」
「はっ」
笑い飛ばす。
近所には日陰の森なる森がある。やたら日陰を主張してくるのは、地形上の都合だ。東から太陽が昇り、北を通って(世界が違うからな)西に沈む。しかし、この辺りには南に大きな山があり、ちょうど、昼に日影ができる。それが村の名前の由来だ。しかし、おかげで農作物を育てにくい。
「しっかし、そー考えると不思議でなんねーよな」
こんなところに、森がしかも俺の金髪のように乱雑に葉を生やした木々なのにあるなんて。
普通、木が死ぬだろ。森が死ぬというべきか。
「…むっ」
人の気配だ。
「おめーらだな!?」
ガサガサ、と逃げていく。
追いつけない。
あいつらのせいで、日陰の村が襲われたと考えるのが妥当か。
…あいつらがいた場所には、キノコ、食料、ランタン、メモが残されている。
「持って帰るか」
このキノコは見てもわかんねーし、メモは魔法陣が書かれている。
俺の仕事は基本的に狩りなので採取ではないし、魔法は使えない。当然、読めない。
…。
……。
………。
「で、村長、このキノコが、魔物に対する幻惑をもたらすと」
「うむ」
「しかも、この魔法陣、支配に関する魔法なんだな」
属性は無。
この世界には大きく分けて12種の魔法がある。
火、水、風、地、氷、雷、光、闇、命、自然、次元、無。
魔力でそれらを使いこなす。魔法には向き不向きがあり、光属性を仕えても回復が使えないとかはある。そもそも、一人当たり5属性くらい使えれば多いほうだろう。
「わかった。 …村長」
「なんじゃ」
「俺が離れても、この村は大丈夫か?」
「ふんっ、もともとこの村にお前はいなかったじゃろ」
「なら、俺はあいつらを追う。おそらく、この村はもう襲われない。襲っておいてもいいか、くらいの感覚だったろ」
この土地にそこまでの価値があるとは思えない。手に入りそうだったから襲ったけど手に入らないならいらない、つースタンスが妥当だ。
「俺は旅立つとしよう」
「待て、お前に腕を隠せる服とマント、六本の剣をやる」
「?」
「お前はどーせ、トレーナを追いかけると思って準備しておいた。こんな形になるとは思わなかったがな。剣も服も勝手に捨てていい」
「じゃ、遠慮なくもらおう」
アルミニウムを基調に銅や錫あたりを混ぜ込んだ素材の安いショートソード。当然、安くとも剣なんて高いし、六本ともなればなおさらだ。服に関しては腕を覆える大きめの黒い服。マントもついているのでしっかりと覆えるだろう。素材も丈夫だ。構造を見ると俺のためだけに作られたのだとすぐにわかる。
感謝してもしきれない。
「金も500エルほどやろう」
助かる。
「いつ出る?」
「もう少し、強くなってからだな」
「具体的にはどれくらいじゃ?」
「やっぱり明日に出よう」
追うのが目的ならできるだけ早いほうがいい。
今日一日、日陰の森の奥で体を動かして慣らすだけだ。




