私が主人で貴女が奴隷で
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馬車の荷台には沢山の奴隷がいた。
しかし生き残りはシルバーテイルのシアンただ一人だった。
シルバーテイルという種族が頑丈だったからか、それともシアンの幸運なのか。馬車が横転した段階でほとんどの奴隷が亡くなっていたようだ。
無理やり詰め込まれたような荷重積載の荷台がかなりの勢いで横転したのだろう。
下敷きになった奴隷は押し潰されて絶命し、生き残った僅かな奴隷も上半分を吹き飛ばしたブラックベアの腕によって肉片となってしまった。
ちょうど中間にいたシアンだけが幸いにもほとんど無傷の状態で生き残ったのだ。
本当に奇跡のような確率で彼女は生存した。
俺と出会ったことも含めて。
俺はとあることを決めていた。
この世界に転生して新たな人生を歩むにあたり。
自分はリリアになろうと。
リリアはキャラ作成時にデザインだけでなく設定もかなり詰めた。
もともとロールプレイをしようとして作成したキャラで、彼女を演じることは苦ではない。いや、演じてすらいない。リリアという少女はもう一人の俺なのだ。
なので自然に言葉もリリアとしての口調になる。
「私の名前はリリア。これから私は貴女の主人となる」
「リリア様……。素敵なお名前です」
なんだろう。
やけに最初から好感度が高い気がする。主従契約の副次効果だろうか。
「私に尽くしなさい。そうすれば貴女は幸せになれる」
「はい。尽くします。いえ、尽くさせてください!!」
熱量が凄い。
悪い気はしないが若干引く。
「とりあえず貴女のその格好は見るに堪えないわね」
「ご、ごめんなさい……」
謝ると同時に狐耳がぺたんと垂れる。
可愛い。
「近くに湖があるからそこで水浴びをしましょうか。貴女の綺麗な髪や肌が血肉で汚れているなんて私我慢ならないもの」
「綺麗……」
呆然としているシアンの手を取り、引っ張るように立ち上がらせて歩き出す。
「綺麗……。ふふっ」
何やら嬉しそうに呟きながらシアンは大人しくついてくる。
何故嬉しいと分かるか。それは彼女の銀色の尻尾が左右にぶんぶん振られているからだ。
可愛いなこの生き物。
湖に戻ってきた。
戻ってきてすぐにシアンのボロい布切れのような服を全部脱がしてしまう。
シアンはすっぽんぽんである。
発育途中の未熟なお胸に桜色の突起がぽつんと可愛い主張をしている。
下半身はまだお子様そのもの。
それを見てもまったく性欲が湧かない。
可愛い、愛おしい。そんな気持ちは溢れてくるものの、下半身からくる邪な衝動がほんの僅かにもない。
凄い。
完全に俺はリリアになってしまっている。
多分恋愛対象は女性でも性欲の対象が女性ではなくなっているのだろう。
ということは性欲の対象は男性ってことだろうか。それは嫌だ。男の裸で興奮するのは嫌すぎる。勘弁願いたい。
そんなことを考えているうちにシアンの髪と体はすっかり水で清められていた。
服の方はまだ薄らとシミが残っているものの、どのみち街に着いたら可愛い服を買い与えるつもりなので問題ない。
所持金がないのでお金の問題はあるが所詮初心者帯のエリアだ。余裕で無双出来るのでいくらでも稼げるだろうとたかを括っている。
最悪は身に付けたアクセサリーのひとつでも売ればかなりの金額になるだろう。
「うん。もっと綺麗になったわね」
「ご主人様、私本当に綺麗ですか?」
「ええ、貴女はとても綺麗よ」
シアンは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
さてはこの娘俺に惚れているな?そう思わずにはいられないくらいの反応だ。
しかし俺は勘違いなんてしない。そんな童貞みたいにちょろくはないのだ。……初体験は風俗嬢の素人童貞だが、素人童貞にも意地があるのだ。
童貞臭いことはしないという意地が。
既にこの考えが童貞臭い気もしなくもない。
いや、今となっては童貞ではない。処女だ。
童貞だと情けないイメージだが処女なら付加価値に思えてくるのも童貞ならではなのだろうか?
異世界に転移して童貞とか処女とか考えているのも俺くらいのものだろう。
「?」
不思議そうな顔でシアンがこちらを見つめている。
考え事で突然黙り込んだのを見て話しかけて良いものが悩んでいるのだろう。
「貴女の服を乾かしましょう」
適当な焚き木を集める。
湿気が残っていると焚き木には不向きらしい。キャンプ漫画に書いてあったから間違いない。
乾いてあるかどうかは手で折ってみてパキッと乾いた音で鳴るかで確かめられる。
らしい。
間違っているならキャンプ漫画描いた人が悪い。
火は魔法で簡単についた。
便利なものだ。
俺の上着をすっぽんぽんのシアンに貸してやり、焚き火でボロ布を乾かす。
結構肌の露出が多いキャミソールだけの格好になってしまった為、若干肌寒い。なんで俺はこんな肌面積の多い装備を着ていたんだ。
性能が高い装備は布面積が少ない傾向にあるの本当になんでなのだろう。
「ご主人様、これからどうするんですか?」
「街に向かうわ」
「街、ですか?」
「ええ、この近くにミストンという名前の街がある筈よ」
ある筈だ。
あって欲しい。
なかったらゲーム知識が使えるという大前提が狂ってしまう。
「ミストンから貿易都市を経由して城塞都市へ、そこから西に行って港町で海を渡って違う大陸を目指すわ」
「違う大陸ですか……」
少し不安そうな目でこちらを窺うように見ている。
上目遣いがめちゃくちゃに可愛い。
体が勝手に動いて思わず頭を撫でてしまった。
「わふ、くすぐったいです……」
「遠くに行くのは不安?」
シアンは黙って頷いた。
尻尾が丸まっている。
怖いのだろう。
愛しすぎる。
後ろに回って彼女を抱えるように抱きしめた。
「大丈夫、私がついているもの」
何があっても絶対に守る。
こんな可愛い生き物を危険な目には合わせない。
サポート特化のこのキャラでどこまで出来るかは分からないが。
「遠くの大陸には何があるのですか?」
ここではない大陸は脱初心者向けエリアとなる。
初期大陸はゲームリリース当初に開設されたエリアで難易度は低く、得られる報酬もそれなりだ。
後に追加された隠しイベントを除けば上級者は近寄らない。
そこで下積みをして海を渡ることでようやく初心者卒業と言われていた。
ゲームでの話だが。
そして違う大陸にはリリアの拠点があった。
つまり家だ。
この世界に家があるかは分からないが、とりあえずの目標として定めるには悪くはないだろう。
サポート特化のこのキャラでは出来ることに限りがある。
下手に高難易度エリアに行けば死にかねない。
ほどほどの難易度エリアでぬくぬくと無双していい感じのスローライフを出来れば言う事なしだ。
「ご主人様、あったかいです」
そういえば彼女を抱き抱えたままだった。
半裸の美少女を後ろから抱えて、私がこうすることで喜ばぬ女はいなかった。をしていても許されるのはやはり自身も美少女だからだろう。
美少女最高。
抱きしめるのもそうだがいずれは耳を触らせてもらったり尻尾をもふもふしたりと野望は尽きない。
しかしいきなり距離を詰め過ぎたら引かれるのは明白。徐々に仲良くなりつつ要求を少しずつ上げていくのがベターだろう。
時間はいくらでもある。
「これからが楽しみね」
「?」
何も知らない無垢なシアンに対して俺は下心しかない。
酷い話である。