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処女はめんどくさいらしい

読んでくださりありがとうございます。

評価やブックマーク等のご協力ありがとうございます。


 手首と足首には頑丈な手錠。

 手錠は壁と鎖で繋がれており、自由に動ける範囲は狭い。

 狭い部屋には何もなく、床と壁しかない。

 

 唯一、鉄で出来た扉だけが私の届かない場所にあった。

 扉には小さな小窓があって、そこからほんの少しの光が差し込んでいる。

 小窓は換気の役割も果たしており、あれがなければ私はとっくに窒息死していることだろう。


 部屋には本当に物が無かった。

 寝床もトイレすらない。


 私が催して我慢出来なくなったらそこら辺に撒き散らせばいいのだろうか?

 こんな空気の循環が悪いところでそんなことをしたら匂いが充満して私がどうにかなってしまいそうだ。

 

 私はこれから奴隷として売られるらしい。

 その、見た目が良いからそれなりの値段で買い取られると見られているとの話だ。

 その話が本当だとしたら殺す気はない筈だ。

 汚物まみれにする意味だってないだろう。

 不衛生だし、売る前に綺麗にする手間だってある。


 つまり食事や排泄のチャンスはあるということだ。

 そこが脱出のチャンスにはならないだろうか。


「えっと、私はセシリアと言います。えっと貴女のお名前を教えて頂けませんか?」

「あん? 暇だしいいか。あたしゃオウカってんだ」

「オウカさん、ここから脱出する為に協力してくださいませんか?」

「本気で言ってんのかい?」

「私は本気です」


 長い沈黙。

 

 私は黙って返答を待つ。


「ここは貿易都市ミランにおいて恐らく最も強固な牢獄だ。重罪人の囚人よりも厳重に監視されている。そこから脱出するのが並大抵のことではないって理解してんのかい?」

「どんな手段を使ってでも脱出する覚悟なら、あります」

「どんな手段でも? 軽々しく言うねぇ、アンタ処女かい?」

「はい!?」

 

 突然何を言い出すんでしょうかこの人は。


「答えな、協力うんぬん以前の問題だ」

「……しょ、処女ですけど!? 何かいけませんかっ!?」

「ちっ、男を知らねぇのかめんどくさい」

「なんで何がどうなって私が経験してるかどうかなんて関係ないじゃないですか!?」

「あるんだよ。ここから脱出する手段はそう多くない。牢屋には何もない。手錠は強固で魔法も使えやしない。鎖は壁に繋がって自由に動けもしない。だろ?」


 その通りですけど。

 全然話が見えてきません。

 ここから私が処女だということに繋がる気配ないですけど!?


「この頑丈な鉄の扉が開く瞬間はひとつしかない。しっことんこの時だけだ」

「あのですねぇ……っ!! もう少し綺麗な言葉を使えませんか!?」

「男の目が気になるってか? ここはあたしとアンタしかいないってのに?」

「そういう問題では……!!」

「いいさ、清楚系か。男受けは悪くない。……ここは食事と飲み物は鉄の扉にある小窓から出てくる。使い終わった食器は小窓から魔法で回収されちまう。本当にあの鉄の扉が開くのはここに入る時と出る時を除いたら、排泄行為の瞬間しかない」

「だからそれがなんだって言うんですか!?」

「察しの悪い生娘だね。排泄の監視に来た男を誘惑しろって言ってんのさ」


 それ私が処女かどうか関係あります!?


「なんでもすんだろ、男のアレくらいしゃぶれんだろうな?」

「あ、アレ!?」

「ち〇こだよ。〇んこ。見たことねぇのか野郎のちん〇」

「連呼しないでもらえます!?」


 本当に最悪だこの人。

 相性が絶望的に悪いと思う。

 この人と協力しないといけないのは不運極まりないけど、確かに脱出の手段としては現実的だとは思う。

 どんな手段でもと言ったのも確かに私だ。


「流石にいきなりその、口でするっていうのは抵抗が……」

「だから処女はめんどくせぇんだよ。体も売ったことないのかい? 孤児のわりに随分と暢気な人生送ったんだね」

「そういう貴女はどうなんですか!?」

「あたしゃ月の物が来る前からもう膜なんて残ってないよ。それで飯食ってた時期があったからね」

「…………ごめんなさい」

「侮辱かい? 立派な仕事だろ? 何を謝る必要がある。あたしゃ生きるために自分に出来る精一杯をやった。同情ならやめてくんな」


 同情したつもりはないのだけれど、確かに彼女にはそう聞こえたかもしれない。

 反省だ。

 私の言葉は軽く、そして考えがなかった。

 彼女の言葉は鋭く突き刺さる。


「というかなら貴女はどうしてその方法で脱出しないんですか?」

「あたしがどんな手段でも使うことは知られてるから警戒されてんだよ。それに一緒に働いてた顔見知りも多いからな、戦場で腹掻っ捌いて腸ぶちまける女相手に野郎もおっ立てたりはしねぇだろ」

「そういうものですか……」

「それに比べてアンタは見た目麗しいみたいだしな。処女は処女で初々しくて野郎もそういうの弱いだろ。多分な」


 脱出する為には仕方がないかもしれません。

 奴隷として売られるよりはましだと割り切るしかないでしょう。


「そもそもその、口でするところまでしなくても良いのでは?」

「あん? テメェ男知らねぇ女がしゃぶりもしねぇで男誘惑して油断させて一発で意識奪えんのか? チャンスは一度きりだぞ? やれるってんなら、止めはしねぇけどよ」


 はい。 

 自信ないです。

 

 男の人なんて孤児院で一緒だった人としか関りがありません。

 それはもう家族のようなもので、実質兄妹達です。


 それ以外の男性は私にとっては好意から求婚されて断るだけの相手でした。

 ずっとサラサと一緒なのもあって男の人と話したことそのものが少ないですし。


 しゃ、しゃぶるしかないんですかね。

 

 なさそうですね。


 覚悟を決めます。


 ……嫌だなぁ。


 泣きそうです。


「アンタ冒険者なんだろ、役職は?」

「回復術師です」

「魔法を使えないなら無能もいいとこじゃないか。それで両手両足手錠で繋がれた状態でそれなりに訓練された男を油断させて気絶させる。しゃぶらないで出来るようなら感心だな」

「ああもう煩いですねっ!! やったろうじゃないですか、出る為なら!! ち〇こでもたま〇までも舐めますししゃぶりますよ!! これで満足ですか!!!!!!!」

「上等だお嬢ちゃん。これであたしとアンタは共犯者だ協力しようじゃないか」


 ああ、神様。

 私これから綺麗な体じゃなくなります。

 

 サラサ。

 私、先に大人の女になるね。


 サラサ、先だよね? もしかして私が知らないところで色々な経験とかしちゃってないよね?


「看守役がアンタを舐め腐ってて一人きりならチャンスだ。まずは話しかけて声を出させろ。その声を聴いてあたしがそいつが誘惑可能な相手か判断する。可能なら合図を出す。無理なら沈黙する。で、誘惑して野郎のアレを口に咥えたら全力で嚙み千切りな。おっ立ててからのほうがダメージはデカい。そのまま意識を失うか絶叫して行動不能になるぜ。あとは鍵を奪うだけだ。どれだけ絶叫してもここの声は外の上の階には漏れねぇ、それは保証する」


 本当に嫌だ。

 覚悟は決めたけど今から気が重くなる。

 男性の性器なんて咥えたくないし、そこから嚙み千切るのも嫌だ。

 暫くご飯食べれなくなりそう。

 噛み切った感触とか夢に出そう。


 想像しただけで気分が悪くなってきた。




 計画した時から三度。トイレの時間があった。


 時間になると足音が徐々に近付いてきて。

 鉄の重厚な扉が開く。


 一度目は二人組の男性だった。

 一人は無表情で不愛想な丸刈りの男。もう一人は帽子を深く被った軽薄そうな男だった。

 二人組だ。

 話しかける必要すらない。


「出るもんはあるか?」


 黙って頷く。


 手錠に繋がれた鎖だけ外された。

 手首と足首に残った手錠はそのままだ。

 歩きにくい。


 私は前方と後方を挟まれる形で連れていかれる。


 二人とも警戒していて隙が無い。

 両手両足の自由が利かない状態で一瞬で二人を無力化する術は私にはない。


 長い廊下だった。

 

 小窓のついた鉄の扉がところどころに並んでいる。

 そのうちのひとつにオウカがいるのだろう。

 

 他の牢は全て空室なのだろうか。


 暫く廊下を歩いた後、トイレについた。


 最悪だった。


 扉もない。壁もない。衝立もない。

 排泄する穴があってそれ以外は視界良好の広い部屋だ。


 私の排泄を隠す要素がどこにもない。


 本当に最悪だった。


 こんな状況で出るものも出ないけど、無理やりにでも出さないと牢屋で漏らすのは最悪だ。

 

 屈辱だけど仕方がない。


 私は心を無にして、する。

 せめて目を背けてくれないかと願うも男性二人はしっかりと見ていた。

 それが仕事なのは分かるけど神はいないのか。

 軽薄そうな男の股間が膨らんでいるのも最悪だった。




 二度目は無表情で不愛想な男一人だけだった。

 話しかけてみる。


「あの、お願いがあるんですけど……」


 なるべく媚びた声色で。


「……なんだ」

「その、恥ずかしいので私がする時は後ろを向いてもらえますか?」

「昔の話だ。目を離した隙に襲い掛かった女がいた。俺の古い同僚だが、それで亡くなっている。無理な相談だな」

「目を逸らすだけでも……」

「断る」


 オウカからの合図はない。

 この男は誘惑しても駄目なのだろう。




 三度目。

 二人組だった。

 諦める。




 そして時間を置き、四度目。


 その時は来た。


 軽薄そうな男一人だった。


 多分、ここがチャンスだろう。

 確信があった。


「あの、お願いがあるんですけど……」

「なんだよ?」

「私がする時だけでいいので、後ろを向いてもらえませんか?」

「わりぃな、仕事なんだ。それは出来ねぇ相談だな」


 何が仕事だ。絶対に好きで見てる癖に。


 がんっ。と、金属が叩きつけられる音が響く。


「あん? オウカか? うるせぇな」


 作戦開始の、合図だ。


 私は覚悟を決めた。

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