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情報屋

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 薄暗い店内だった。


 カウンター席の並んだテーブルの反対側では筋骨隆々な男がグラスを拭いている。

 男の背後には沢山の酒瓶が並べられていて、奥の厨房からは何かを炒める音が聞こえてくる。

 

 店内の端では四人組が楽器を持って演奏し、店内のBGMとして賑わせていた。


 店の死角になるような席を探す。

 

 本当に見つけ難いな。なんだこれ、騙し絵のように壁と柱で上手いこと錯覚するようになっている。

 

 そこにシアンと二人で座る。


 するとエプロンをした女性が注文をとりに来た。


「ご注文は?」

「ミルクと蒸留酒を、蒸留酒ならなんでもいいわ」

「……飲めるの?」

「貴女エルフの見た目で年齢が分かる程エルフに詳しいの?」

「倒れなければ店としては何歳だろうと知らないけどね。ミルクと蒸留酒、他は?」

「店主お薦めの情報屋をお願い」

「頭おかしいの?」

「店主にそのまま伝えなさい。注文を受けたら伝えるのが貴女の仕事でしょう?」

「はぁ……」


 ため息を隠さずに女性はカウンターに向かって歩いていく。


「店長ー。なんか変なエルフ来てるんですけどー?」

「変なエルフ?」


 おい、思いっきり聞こえてるぞ。


「ミルクと蒸留酒おまかせと、あと情報屋? をご注文みたいっすよー?」

「……蒸留酒は考えるから少し待ってくれとだけ伝えろ」


 態度の若干悪い女性が戻ってくる。


「蒸留酒時間かかるみたいだけど大丈夫っすかー?」

「構わないわ」


 情報屋の準備に時間がかかるという意味か?

 いや、深読みしすぎかもしれない。

 単純に蒸留酒に時間がかかるだけかもしれない。


 とにかく待ってみよう。


 ミルクはすぐに来た。

 それを俺の蒸留酒が来るまで待っているつもりだったシアンに先に飲ませて待つ。

 

 すると壁が開いた。

 

 文字通り壁が開いたのである。

 俺が座っている側の壁。ただの壁にしか見えないが一部が隠し窓になっていて、小窓から誰かの影が少しだけ見えていた。

 小窓の向こう側は暗くあまりはっきりとは見えないものの、誰かの腕らしきものは辛うじて見えている。


 腰ほどの低い位置にある小窓はぎりぎり腕一本通せる程の大きさしかない。


 そこから小さい男の声が聞こえてきた。


「情報屋を探してるってのはあんただな?」


 店の喧騒や演奏にかき消されてしまう小さな声。

 恐らく俺にしか聞こえていない。

 対面にいるシアンにすら聞こえていない様子である。

 テーブルの死角になっていて小窓が開いたことにさえシアンは気付いていない。


 俺はシアンに聞こえない大きさの声で情報屋だろう男に答えた。


「ええ、そうよ」

「何が知りたい」

「奴隷を探しているの」

「……特徴は?」

「人族と吸血鬼のハーフ」

「そいつはまた、分かりやすい特徴だな。そう市場に出回る代物じゃない」

「恐らく近々どこかのオークションで出品される筈よ」


 男は少しだけ沈黙する。


「予算は?」

「どういう意味?」

「報酬額で出せる情報が違うって話だ」

「知ってるってことね」

「で、予算は?」


 ブラックベアの爪の余りと、アニスの行方を報告したことによって得た報酬が現在の有り金だ。

 その全額を伝える。


「その予算内なら、その奴隷が今いる場所は伝えられないな。どのオークションに出展される予定なのかは教えられる」

「追加でどの程度払ったら今いる場所を教えてくれるのかしら?」

「高いぞ?」

「とりあえず聞くだけよ」

「追加で金貨三枚は必要だな」

「居場所だけで金貨三枚も?」

「それだけやばいって話だ。俺も危険な橋を渡る」


 教えるだけで危険な場所に捕らえられているということ。

 知ったところで忍び込んで助け出すのは難しいだろう。

 

 やはり現実的なのはオークションで出品された彼女を競り勝って買い取るか、オークション会場で彼女をなんとか盗み出すかのどちらかだ。


 懐から持っている通貨の殆どを小窓から男に渡す。

 なるほど、この小窓は報酬の受け渡しの為にある訳か。


「いいだろう。一応教えておくが、その奴隷が出品される予定のオークションは現状決まっているが、この先変更になる可能性は0ではない。それだけ覚えておけ。……出品されるオークションはこの貿易都市最大の裏オークションだ。裏通りにあるリリムという風俗店の地下で開催される。名前はガウンオークション。代表者はガウン。商人組合の幹部の一人だ」

「勿論人族と吸血鬼のハーフなんて他には出品されてないわよね?」

「安心しろ。最近どころかここ十年でも聞いたことがない。見た目も悪くない処女だそうだ。とんでもない金額になると想定されている。次のガウンオークションの目玉商品だ。周辺都市や王国からも人を集めて準備を進めている。すぐには開催されないだろうな」

「なるほどね。ありがとう、助かったわ」

「構わない。仕事だ。……他に聞きたいことはあるか?」

「もう結構よ」


 静かに音もなく小窓が閉まる。


「シアン、行くわよ」

「ふえ!?」


 慌ててミルクを飲み終えると席を立った俺の後についてくる。


「ご主人様のお酒まだ来てないのですよ?」

「来たわよ。極上のが」


 料金を支払い店を出る。


「情報屋さんにも会ってないのですよ?」

「シアンは気付かなかったみたいだけど、実は小窓で情報屋とやり取りしていたのよ」

「ええ!? ……全然分からなかったのです」


 シアンの耳は良い。それでも聞き取れないということは店内の演奏はそういう意図もあったのだろう。


「情報屋によるとこの都市最大のオークションに出品されるようね」

「今はどこにいるか分からないのです?」

「情報屋は知っているようだったけど、持ち合わせが足りなかったの」

「そうなのですか……」


 だが大体の居場所は予想がつく。

 

 恐らく彼女は商人組合所有の相当強固な倉庫かどこかに軟禁されているのだろう。

 情報屋が教えるだけで身の危険を感じる場所はそう多くはない。

 この都市で一番権力と影響力があるのは商人組合だろう。

 攫われたアニスは既に売られて商人組合の手にあり、商人組合はアニスの希少性からオークションを開催して莫大な利益を得ようと画策している。

 現状商人組合にとってアニスは金の生る木だ。

 並大抵の管理ではないだろう。


 それこそ自警団の戦力の大部分を使って守っているに違いない。


 それを搔い潜って盗み出すのはあまり現実的ではないだろう。


 やはり正規の手段でオークションに競り勝つか、オークション中に盗み出すか、オークションで競り勝った人物からなんらかの方法で手に入れるしかあるまい。


 幸いなことにオークション開催までには準備時間が掛かるらしい。

 それまでにこちらも準備が出来る。


「アニスが出品されるオークションの開催までには時間があるそうなの、だから時間に余裕がないって前提は一度崩れたわ」

「ということはこちらも準備が出来るってことなのですね?」

「その通りよ。一度セシリアとサラサに合流して作戦を練り直すべきね」

「でもどこにいるか分からないのですよ?」

「仕方ないわ、時間を潰してから羽休めの前で待っていましょう」


 二人は貿易都市を歩きまわりながら適当に時間を潰し、羽休めの前で二人を待つことにした。

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