天使の願い
天使様視点です。
時系列としては千秋が羽を拾う2,3時間前です。
一面真っ暗な空間。
ここは追放する前に罪を犯した天使達の力を回収するための場所。
そこで私は人間世界で言うなら10年近く過ごしている。普通の天使なら大体2年しないくらいで力を失い、追放されるのだが私の場合2番目に誕生した天使ということでかなりの力を持っていて時間がかかっているようだ。
コツコツと誰かの足音が聞こえる…
と言ってもこの空間にわざわざ来る天使なんて一人しかいないのだが。
現れたのは6枚の羽を携え、肩まで伸ばした金髪の男。
彼はその鋭く蒼い目で鎖に繋がれた私の羽を見つめると
「だいぶ力が抜けたみてぇだな。」
と言いながら私の前へ椅子を出現させ足を組みながら座る。
「飛ぶ力も無いと思いますよ、シフ先輩。」
ため息を付きながら
「はぁ…俺はもうお前の先輩じゃねぇ…エル」
「ではシフ様と読んだほうが良いですか?」
とわざとらしく言ってみると
「気持ち悪いから元の呼び方で良い。自分の立場わかってんのか。」
「わかってますよ。優しいシフ先輩が私のことを気にかけて話しに来てくれてる事も含めて。」
この空間に入ればどんな天使だって力を吸われるので、ほとんどの天使が入りたがりません。
なので私の様子を見るためだけにこの空間に入ってくるシフ先輩はだいぶ優しいです。
「はぁ…誕生した時はもう少し可愛げがあったんだがなぁ…可愛くねぇ…」
む、またため息。あと私は今も可愛いです。
「もう少ししたらお前を追放する。」
「そうですか…リースちゃんとシフ先輩と会えなくなるのは残念です。」
リースちゃんっていうのは私のことを物凄く慕ってくれる私の次に可愛い後輩天使ちゃんです。
リースちゃんは一度仕事を放置して無理にこの空間に入ってきてしまい、力をだいぶ吸われてしまったので入室禁止になりました。
「だから気持ち悪いっての…」
気持ち悪くないです。可愛いです。
「はぁ…今までの仕事の褒美を与えろって神様に言われたが無くていいんじゃねぇかこいつ…」
ご褒美!!貰えるならなんでも貰いますよ!!
「うわ、褒美って聞いた瞬間に目キラキラさせやがった…」
「罪を犯した天使に与える褒美なんざろくなもの貰えねえっての。あんま高望みすんなよ?」
しゅん…
「わかってますよ…それに物を貰ったりしてもどうせ天界から追放だから意味ないですし、力貰ってもそのまま吸われてここにいるのが伸びるだけですしね…」
「そういうこった。せいぜい観光とかそういったことしかできねぇよ。それとできるだけ早く決めろよ。俺だってこの空間にいるのは嫌なんだ。」
観光!そっか!それがあったか!
「シフ先輩ナイスです!お願い決まりました!私をあの子の転生先にまで連れてってくれませんか!」
「あの子の転生先って…まさかと思うがお前が最後に私情で転生させたあいつか?」
「そうです!そうです!最後に会いたいんです!」
「はぁ…ほんと碌でもない褒美の使い方しやがるな…神様に確認取らねえと…」
そう言いながら伝聞の魔法を使った羽の先を飛ばしました。
普通の天使なら直接聞きに行かなければ怒られるのですがシフ先輩は最高位天使であり最も神が頼りにしている存在なので問題はありません。
しばらくして羽の先が戻ってきました。
「確認が取れた。問題ないとよ。だけど会うのは無理だ。出来るのはあくまでお前が顔を見るだけだ。それでいいか。」
むぅ…話したりしたかったですが仕方ないですね。
愛しいあの人を見ることが出来るだけ他の追放された天使たちよりか恵まれてる方でしょう。
「大丈夫です!天は急げです!とっとと行きましょう!」
「急かすなよ…ほんと立場わかってんのか…準備するから待っとけ…くそ…」
碌でもない使い方とか言いながらもOK出してくれるシフ先輩はやっぱ優しいです。
「楽しみだなぁ…元気に暮らしてるかなぁ…」
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「はぁ…準備できたぞ。」
とため息をつきながら鎖を外していきます。
私はというと力を失ってほぼ動かない羽をバサバサさせながら今か今かとソワソワしてます。
「落ち着きねぇな…声が聞こえないようにしてあるのと見えないようにしてるだけで普通に触れるんだから会えた喜びで抱きつきにいったりすんなよ?マジで頼むぞ?」
「わかってますよ!」
わくわく
「ほんとわかってんのか…じゃあ転移始めるから捕まれ。置いてかれたらそのままご褒美終了だ。」
!!!私は急いでシフ先輩にしがみつきます。
「必死すぎんだろ…ったく…」
必死にもなります。彼を見れる最後のチャンスなんです。
「転移!!」
読んでいただいてありがとうございます。
もう1話だけ天使パートやります。
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