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 んあ〜、よく寝た。え、昨日のこと? 所詮他人事何でどうでもいいです。家にいること自体は別にいいけどマジでどうしよ? 植物の動画でも見て癒されとくか。ジョブを取得してから視界の隅にHP、MP、SPの残量を表すバーが出現して地味に鬱陶しいんだよ。これ、消えねえかなあと祈ってみてもステータス画面くんみたいに消えてくれない自己主張の強い厄介者だよバー(これ)


 味気ない週末を乗り越えて、またまた味気ない平日の遠隔授業である。学校からも外出自粛要請ってこの1件をすごく重く見てるんだな、知らなかったわ。


 ババっと課題を終わらせて新しく手に入れたスキルで遊んでいると困ったことが判明した。カッターで使わなくなったプリントの束を丸ごと切断したことでスゲェって調子に乗って釘をカッターでふざけて切り付けたら弾かれずにしっかり切断出来た。


 ……これ不味くない? 下手すると爪で誰かを掻いたらスッパリいきそう。追加でシャーペンを使ってプリントの束に軽くぽすっとおいたらぽすっと全部貫通した挙句、プリントを載せてた週刊誌までガッツリ突き刺さったんだけどこれどうしよう。念のため机に週刊誌を置いて机に穴が開くことは避けられたけど、普通に書いてたら机に穴開けそうで怖いんだけど。


 それからどのくらいの物を切断、貫通できるのか検証してみたけど大抵のものなら切れるし貫くわ。あれかな、よく漫画に出てくる手刀で物を切るとか貫手で鉄を貫くとかできんのかな? トンファー的なものに刃物つけたり手袋して指先に針でもつけたら出来そうな気がしてきた。危険だということは分かっているが不安よりもワクワク感の方が大きい俺は山本のことを馬鹿に出来ないかもしれない。


 それからスキルの検証と身体の調整に時間を費やしていくとあっという間に週末になってしまった。いや、友達と時間のことについて電話したりもしたけど意外と暇せずに過ごせたな。この1週間で警戒モードは収まりかけており、世間ではもう事件を忘れたかのような感じだ。


 あれから別にモンスターが外に出てくるということも特になかったし当然かもしれない。外国では同じようなことが起きて騒動にもなったがこちらは比較的平和だった。ある国ではダンジョン目掛けてミサイルを撃ち込んで破壊するという提案もされたくらいだからな、却下されたけど。


 ……個人的には面白そうな提案だったけど、正直ミサイルを撃ち込んでダンジョンを破壊出来るかどうかは微妙なところだと思ってる。あれが壊れるかどうかよく分からんし、ジョブについただけでも結構人間辞めたことが可能になっているのに中にいるさらに強靭な存在であろうモンスターに有効かどうかかなり怪しいぞ。


 俺ですら“被ダメージ軽減”を持っているのにモンスター側が持っていないのは少し都合が良すぎると思うし、耐久力が高いやつなら何食わぬ顔して耐えてそう。想像しただけでもファンタジーの生物どもがバケモノな件はどういうことなんでしょうね?


 人間にももう少しアドバンテージをくれよ、こっちは姿変わっただけだぞ。ダンジョンからモンスターが丸ごと出てきたら滅亡する自信があるわ。


 再びの週末、昼前ごろに役所の人が訪ねてくる来るらしいのでそれまでに準備しとけとのことなのでバッチリと決めて待っていたらインターホンが鳴った。はーいと母さんが迎えに行ったのを手持ち無沙汰なのでついていったらおう、自衛隊の人が役所の人をガッツリ囲んで厳重な体制だな。


 いいことだと思うよ、安全第一なのは。命は大事だしな、でもいきなりそんな光景を見せつけられる俺たちの身にもなれよ。思わず身構えるし母さんなんてフリーズしてるぞ。


 「すみません、何しろ先のような事件があったもので……。このような物々しい体制で来たことを謝罪いたします。ですがご理解とご協力をどうかお願いいたします。私、本日のステータス登録を担当いたします、田中 次郎と申します。本日はよろしくお願いします」


 「い、いいえ。大丈夫です。少し、驚いただけですので。こちらこそお願いします」


 「そうですか、では早速ステータスの登録を開始したいと思うのですがよろしいですか?」


 「は、はいどうぞ……あのそちらの方々は?」


 「ああ、彼らはご自宅には上がりません。威圧感を与えてしまいますから。ご心配ありがとうございます」


 担当だという礼儀正しい田中という人だけが家に上がってくるらしいが流石に慣れてるな〜、これが何回目か知らないけど絶対いい慣れないとそんなスラスラと言えないだろ。


 作業はほんの数分で終わるらしいが家族全員集まってすごい面倒な説明をされた。


 「本日、ご登録いただくステータスは個人情報として厳格に扱わせていただきます。そのため、登録いただいた情報を第三者に不当に扱われるといった事態は心配はご無用です。何か他にご質問ありましたら気軽にお願いします」


 流石お役所仕事、事務的だわ。親父も母さんも妹もそんなこと言われてもという顔してるので遠慮なくいかせてもらおう。


 「今回のステータスは第三者に利用、閲覧されることはないとのことですが国からは利用されますよね? 具体的にどう利用されるのか説明いただけますか?


 そう言うと意外そうな表情を浮かべたがすぐに消して


 「申し訳ありません、利用方法は機密となっておりましてお伝えすることが出来ません。誠に申し訳ございません」


 そう言ってきた。まあ、それなら仕方ない。別にそこまで聞きたいことじゃないしどうでもいいか。質問タイムが終わったので家族4人がステータスと唱えて内容を確認するだけの作業が開始されたのだが親父、母さん、妹が既に終えて最後の俺の番でちょっと騒ぎが起きた。


 そういや忘れてたわ、ステータスにレベル欄と職業欄が追加されてたこと。案の定突っ込まれた。


 「永瀬 秋様、こちらはどのようにして追加されましたか?」


 「どうもこうも、ここ付近で起きた事件って知ってます?」


 そう言うと頷いてくれたのでわざわざ経緯を説明する必要なさそうだ。


 「その時に、近くにいたんですよ俺は。それからまあ、色々あってあのモンスターを倒したらこんなことになったんです」


 そう言うと俺のステータス画面を見ながら「なるほど」と呟いて


 「そうですか、こちらの質問にお答えいただきありがとうございます。ステータス登録も済みましたのでもう仕舞っていただいて結構です」


 そう言ったのでステータスを仕舞うと田中さんは


 「本日はご協力頂きありがとうございました。本日の登録作業はこれで終わりましたので帰らせていただきます」


 といって家から出てまた隣の家に向かって行った。それを見送ってから勉強でもするかと家に身体を向ければ何か言いたげな3人の顔、発見。詳しく説明さなさいと言われたので丁寧に説明したらめっちゃ怒られた。


 おかしくない、俺一応人命救助をした英雄だよ? え、危険過ぎるって。そう言われたらそうですねとしか言いようがないし大人しく正座して1時間程の説教を受けてヘトヘトになったところで妹からステータスについて目をキラキラさせながら聞かれた……お前そんなキャラだったか?


 のらりくらりと交わしているとお昼時になったので昼食を終えて家族で雑談をしてた。思ったんだけど今まで家族のステータスを見たこと無かったし見せたこともなかったな。


 気になったので見せてと頼んでみた。


 「そういえば、母さんと親父と美波のステータスはどんな感じなんだ?」


 快諾されたので遠慮なく見ればそんなに変わらない、言ってしまえばヘェ〜と流せる程度のものだった。強いて言うなら家族全員3つ以上の固有スキルを持ってることくらいか?


 それからの日々をダラダラ過ごしてたら、外出自粛ももう大丈夫だと判断されたため外出が解禁された。やったあ。


 そんなわけで懲りずに山本と買い物だ、また2人だけだと寂しいので柴崎と浅倉も誘った。佐藤と高橋も現地で合流予定だ。


 サクッと合流を果たして大所帯となった俺たちは受験生あるあるで盛り上がりつつ近くのファミレスで一息つくことにした。待ってる間も愚痴を言い合っていたがふと話が途切れた瞬間、浅倉が別の話題を出してきた。


 「永瀬、あんたあの事件に巻き込まれたって聞いたけど大丈夫だったの?」


 何でコイツがそんなこと知ってるんだと思ったら山本が申し訳なさそうに両手を顔の前で合わせていた、いや別にいいよ隠してないし。ただわざわざ話題にする必要がなかっただけだし。軽い感じで最早朧げとかした当時の記憶を掘り返しつつ


 「大丈夫だったよ、モンスターがやってくる前に逃げたし暴れていた時も離れた場所に避難してたし」


 そう言ったら今度は柴崎が


 「あの、ネットで調べたんだけど人が食べられたりとかしてたんでしょ……モンスターってそんなに危険なの?」


 と恐怖と興味が半々の顔で尋ねてきた。何でそんなに興味あるのかな、全く分からん。ホラーゲームみたいに怖いけど見たいな感じか? 佐藤と高橋も聞きたそうにしてるし、山本はブラックコーヒーでも飲んだかのような顔してるし。そこまで酷かったか? 少なくとも命の危険は無かったし安全だったろ。


 「人によるだろ、俺にとってはそこまでやばい感じではなかったけど他の人にとっては脅威かもしれないし。簡単に説明すると小型犬に猪並みの速さとクマ並の膂力をのっけた超好戦的なヤツだな」


 確かそんな感じだった。どうやらご満足いたたげたようで興味深そうに頷いてた。山本が付け足すように


 「いや、そんなんじゃないでしょ。もっとこう、禍々しい感じで凶暴っぽいやつだったでしょ」


 そう言ったら表情が凍りついた、どうすんだよ。怖がらせちゃったじゃん。ちょうど頼んでたラザニア他注文した品が届いたのでこの話題を一旦置いといて食事にした。


 食べてる途中でどうでもよくなったみたいで誰もがこの話題を忘れて別の話題で食事後に雑談してその後は適当に街をぶらぶらしてお開きとなった。実際、自分に差し迫ってなけりゃこんなもんだよな。俺だってフィリピンで大地震が起きましたと報道されても一時は気になるけどずっとは気にしないし。


 受験まで残り1週間程なので気合いを入れるか〜と机に向かって頑張るけど勉強、飽きてきたな。学んだ知識って受験にしか使わないし、社会で何に使うのかよく分かんなくてモチベーションが上がらないんだよなあ。


 翌朝、しっかりと身支度を行い爽やかな目覚めの中リモートから出勤へと戻った両親を見送りポストから新聞、チラシ、何通かの封筒を受け取り優雅にトーストとコーヒーを堪能しながら新聞を読んでるとすっごい大人になった気分。


 「どう? 俺めっちゃカッコよくない?」


 「朝から間抜けヅラ晒すの辞めてよね、気が抜ける」


 妹に聞いたら嘲笑された挙句に辛辣な評価をいただいてしまった……そんなダメ? 行けると思ったんだけどなあ。


 朝食と片付けを終えてから授業まで暇なので郵便物を仕分けるようにした。もう、俺ってば何ていい子なんだろう。神も思わず志望校に合格させてくれるに違いない。


 えーと、これが不動産のチラシで薬局、新聞……ゴミだな全部。服屋とスーパー、飲食店は置いといてと、あと残ってんのが封筒か。どれどれ、これは親父のゴルフ関連のやつ、こっちは母さんの美容品関連で……何だこれ。やけにデカい。


 『永瀬 秋様宛』


 ?俺何か雑誌か何かで懸賞に応募したっけ。こういうのって本人が忘れた頃に届くから何に応募したのか大抵忘れるんだよなあ。どうせ中身は落選したことが書かれた書類か何が届いたのかのカタログと図書カード500円分の組み合わせだろ。とりあえず開けてみるか。


 『永瀬秋様、この度は国立魔導学校ご入学おめでとうございます。この度は入学までに必要な手続きと確認事項を記した書類及びこれからの予定を記載したプリントをお届けしました』





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