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職業

 家に帰ると家族全員が1階のリビングでTVを観ていた、何を観ているのか気になったため手洗い、うがい洗顔、をこなした後画面を見ていると周りに人が騒がしく動き回り救急車のサイレンとパトカーの特徴的な音をBGMに慌ただしく作業をしている。


 『……現在私は事件のあった現場に来ております。ダンジョンから抜け出してきたモンスターの影響によって死者15名、重軽傷者多数といった甚大な被害を齎しました。事件発生から1時間ほど経った現在でも現場に残った血痕から事件の悲惨さが伝わります。現場からは以上です』


 そこはとても見覚えのある、具体的にいうとつい先程までいた場所だった。あの時はモンスターがやってきて考えもしなかったが、あれほどの騒ぎなら報道されてもおかしくはないかと変に冷静に納得した。そして家族が見ている理由はここからそんなに離れていない場所で起きたからだろうとも。


 報道された現場が自分の知っている場所であり尚且つ報道される内容に関してもほとんど自分の方が知っている内容の為一気に観る気がそがれ部屋に戻って夕食までの時間スマホで事件の概要を調べることにした。


 ネットによるとあのダンジョンからモンスターが抜け出した結果ショッピングモール周辺は初め物珍しいものを見るようにスマホをかざして撮影をする人が多かったらしい。それからしばらくモンスターはじっとしていたがいきなり近くの見物人を捕食、それからパニックになったらしい。


 その後見張りの警官が発砲したがモンスターは死なず、逆に敵意を持ったモンスターに殺されそれからも順調に人を捕食し続け、あとは俺の見た通りとのこと。


 知りたいことは調べたのであとは気になることについて対処するか。


 「ステータス」


 名前:永瀬 秋

 レベル:0 (合計レベル:0)

 職業(ジョブ):無し  《選択可能》


 ステータスと唱えるとあまりにもごちゃごちゃした画面が出てきて鬱陶しいためどうにかできないかと試しているといきなり画面がこのように省略化され、このような表示に変化した。慌てて戻し方を調べようとすると戻ったためこのステータス画面は念じるとその要望に答えてくれるらしい。スマホですらできていない機能を保有しておりほんと、高性能だ。今は面倒なので省略化された画面にしている。


 画面を見るとレベルという表記と職業という見慣れない表記が新たにステータス画面に確認できた。初めてステータス画面を確認した際には記憶が確かならばなかった筈なのでこれらが新しい要素である筈だ。


 問題は全く使い方がよくわからないということだろう。どう使えばいいのか分からないため画面に触れないかな〜と《選択可能》というところ目指して手を伸ばすと感触は無かったがいきなり画面が切り替わった。どうやらこのステータス画面は触って操作できるらしい、これ多分三馬鹿は知ってたよな。簡単に想像出来るわ嬉々としてステータスと叫んだ後、画面にタップする様子が。何で教えてくれなかったんだと思ったがアイツらからしたらステータス画面に触れないという選択肢を取った俺の方が理解出来ないのかと思い直し思考の隅に考えを追いやる。


 そんなことより、切り替わった画面の方が重要だ。


 《取得可能な職業(ジョブ)系統一覧》


 【戦士】系統

 【剣士】系統

 【槍士】系統

 【炎術師】系統……


 どうやら俺の取得できるジョブ系統一覧が載っているらしい。適当に系統をタップするとその系統内に存在するのであろうジョブが載っており恐らくこれを選べば俺はジョブとやらにつけるのだろう。画面を戻して系統一覧をスクロールしながら見ていくと系統一覧の末尾に気になるものを発見した。


 ……

 【鍛治士】系統

 【特殊】系統


 ?特殊って何だ。今までのものは曲がりなりにも何の系統かわかるように記載されていたのに全く分からん。疑問に思ったのでタップすると驚くべき内容が記載されていた。


 【特殊】系統 《取得可能職業(ジョブ)一覧》


 【斬神(ザ・エッジ)】、【突神(ザ・ピアース)


 今までのジョブは剣士やら槍士、冒険者やらいかにも駆け出しっぽいものだったが明らかに格が違いそうなジョブがそこには存在した。気になったので【斬神】をタップすると


 【斬神】を取得しますか?《はい》《いいえ》


 と表示された。どうなるのか分からないため躊躇しつつも好奇心に負けて《はい》にタップした瞬間異変は起きた。


 「うわっっ!?」


 何しろ選んだ瞬間に身体中が光に包まれたのだ、驚かな訳がない。光はすぐに収まり身体には何の異常もないように感じられ、まるで夢か幻のように思えたが記載されている文字列が事実であると告げていた。


 名前:永瀬 秋

 レベル:1 (合計レベル:1)

 職業(ジョブ):【斬神】 《選択可能》


 先程までは何も書かれていなかった欄に変化が起きていた。画面を簡略表示から標準に戻すとそこにも見慣れない要素が加わっていた。


 スキル:《我が刃は全てを断つ》

     《我が刃は不毀なり》


 今までは固有スキルが一番下だったがその下に新たにスキルという欄が誕生し、そこに斬神由来であろうスキル群が記載されている。効果が気になったのでダメ元でスキルをタップするとそのスキルの効果であろうものが表示された。


 《我が刃は全てを断つ》:斬属性で攻撃時、自身の器用分だけ相手の耐久力を落とす。

 《我が刃は不毀なり》:斬属性を装備時、装備に自身の筋力分だけ耐久値を増やす。


 能力値も見てみると最初と比較してHPなどを除けばかなり上昇している。多いもので120前後は増えている。まだジョブは選択できるらしいので【突神】を選ぶと


 【突神】を取得しますか? 《はい》《いいえ》


 【突神】をメインジョブに置き換えますか? 《はい》《いいえ》


 新しい文言が追加された。とりあえず両方はいと選択すると先程と同じように光輝き俺のステータスには【突神】が追加された。


 名前:永瀬 秋

 レベル:1 (合計レベル2)

 職業:【突神】 《選択可能》


 標準サイズに戻して確認すると能力値は初期の倍ほどまでに上昇しており新たなスキルも追加されていた。


 スキル:《我に貫けぬ物なし》

     《我が切先は朽ちず》


 内容としては【斬神】のスキルが突属性に変化したものだった。それから【斬神】に戻るにはどうすればいいか試行した結果またジョブ一覧から【斬神】を選び直せば戻れると判明したところで夕食の時間になった。


 夕食に舌鼓を打っているとあの事件のことが話題に上がった。


 「ダンジョンからモンスターが出てくるなんて危ないわ、あなたたちも気をつけてね」


 「ああ、父さんからも注意しておくぞ。もしモンスターを見かけたらすぐに逃げるんだ。下手にちょっかいをかけるんじゃないぞ」


 「分かってるよ、そもそも危険なことには近づかないよ」


 「はーい、でもダンジョンの近くなんて寄ることあんまないけどね」


 両親から注意されたが好き好んであんな危険地帯に行きたいなんて現場を見れば思うわけがない。辛気臭い話題をしている食卓には今回の事態には対策不足があるのではないのかと国会で民主党が野党から散々責め立てられている会議中継が流れている。


 よくもまあ、予算をかけすぎていると批判していた野党が今回は対策が不十分だったと批判できるな。とりあえず応急的な対策として人を入れないように見張りを立てることは勿論出てきたモンスターを殺害するために銃を持たせた自衛隊員を派遣することで決まりそうだ。


 チャンネルを変えれば今回の事態を受けてダンジョンの近くに住む人々へのインタビューが流れており、いつか自分の住む街もこのようなことが起きるのかと怖いと言っている。


 食事を終えて自室で上昇した身体能力について確認と固有スキルの効果を確認したところでお風呂の時間となった。速度が上がると行動が早くなるためいつもよりかなり早めにお風呂を出て髪を乾かしていると両親が少し声を落として


 「秋、明日からしばらく外出は控えなさい。外は危ないから、安全が確認できるまでは家でじっとしているんだ。父さんも母さんも今回のことでしばらくは在宅で仕事することになった。それほど危険と会社は判断しているということなんだ」


 「別にいいけど、(美波)はなんて?」


 「『そもそも、怖くて友達が外出しないよ』だとさ」


 どうやらニュースをあれからも聞いていてさらに不安になったらしい。ただ懸念事項がいくつか。


 「買い物はどうするんだよ? 2人が仕事で忙しいなら俺が行こうか、勉強は大丈夫だし授業もすぐ終わる課題ばっかりで時間はあるからさ?」


 これは本当だった。課題は簡単なものばかりだし勉強は高い速度のおかげで今までより体感時間を縮めることが可能になったため捗るようになったし5時間程体感でやってもまだ3〜4時間程しか経ってないということがある。というより今の時期に詰め込んでもあまり意味がないので知識を忘れないように復習して基礎をしっかり固めておけば問題はない。


 「いや気持ちはありがたいが、しなくていい。買い物は全てネットで行う」


 それならとまた別に


 「じゃあ来週のステータス登録の時はどうすればいい?」


 確か来週に役所で登録する手筈になっていた筈だ。その時はどう行くのか聞くと


 「ああ、それなら心配ない。向こうがこちらに訪問してくるそうだ」


 らしい。どうやらダンジョンから比較的近めの地域では外出することに関して渋ったため役所の人が自衛隊員を護衛につけながら個別訪問するらしい。


 どうやら本格的にしばらく暇になりそうだと分かったためどうやって時間を潰そうかと考えながらベットに向かい、長い長い1日を振り返りながら意識を微睡の中におとした。

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