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夏休み明け

 「学生を戦力としてカウントすんなよって思うのは俺だけかな?」


 夏休み明け一発目からダンジョン探索とかおかしいでしょ、校長先生のお話とか面倒そうだからサボってたらいきなり探索のお知らせ来てビックリしたわ。


 「昨今の状況ならば仕方あるまい、それに見方を変えればそれだけ私たちが頼りにされているということだ」


 現在俺、有栖、一ノ瀬さんの3名プラス以前にもお世話になったゴブリンいける系の護衛で探索してるけどほんと何故って未だに思うわ。そして前回と違って植物が至る所に生えてて驚いてる。


 「あの事件のせいで農地が汚染されて作物が全滅して食料不足になったのは分かるよ? そして遠隔地から食料を輸送しようにもモンスターのせいでうまくいかないことも分かるよ? ……だからといってモンスターの肉を調達してこいは分かってたまるか、食いたくねえよそんなの」


 確かにあのクソトレント君のせいで土地に大ダメージ入って食料が足りなくなって首都近郊では価格が高騰してるのが問題視されているのは流石に知ってる。


 でもだからといってモンスターの肉で不足分を賄いましょうとか……日本人、食に対して挑戦的過ぎない?


 「……が、害は無いから……」


 有栖、言い淀んでるってことはお前も食いたく無いんだな?


 「皆様、資源を発見しました。回収するので護衛をお願いします」


 「了解」


 偵察役の一ノ瀬さんが植物の回収をしようとするので護衛をしつつ何を発見したのか確認すると、ゲッ、これかよ。


 「あのさ、それダンジョンイモじゃない?」


 「それが何か?」


 「それも回収すんの?」


 「ええまあ、毒もなく栄養価も高いことに加えてひと月足らずで収穫できますから」


 授業で習ったからそれは知ってるよ、でもそれ美味しくないんだよね。例えるなら噛み続けたチューイングガムみたいな味ともっさりとした食感、煮ても焼いても変わらないから好きじゃないんだよ。


 試食させられたけど何が一番辛いって吐き出すほどの不味さじゃないことが辛かった、中途半端に食える程度だから微妙に拒みがたいし。


 しかもこいつ【農民】とか農業系のジョブ持ちがスキル使って適切な環境で育てたらすぐに育つからコスパもいいっていうね……誰か品種改良してくんねえかなあ。


 こんな感じでダンジョン内の植物は魔法薬にも使える種類や食用の品種もあるので積極的に回収して欲しいと言われているのだが


 「思ったんだけどダンジョン探索でちまちま集めるより植物工場的な感じで外で大々的に育てた方が効率良くないか?」


 薬の材料として集めるのなら致し方ないとも思うが種芋として集めたり、育苗用に集めた物もあるはずなのでそこまで集める必要はないと思う。


 「聞いた話によると何度も外で育てているとやがて効率が落ちるらしい。だから常にダンジョン産の作物を回収してるとのことだ」


 「あー、要するに劣化すんのね」


 確かに外の土壌環境とダンジョン内の土壌環境は違うからそこまで順調にはいかないか。


 ダンジョンイモを回収してからまた探索に戻った、前は四人一組だったのに今では三人一組とか……どんだけ俺らが強くなってると思われてんだよ。


 聞くところによると学生の大半は下級職を1つはカンストさせて今は2個目の職に就いていたり夏休みを利用して2個の下級職をカンストさせた学生もいるらしいから妥当っちゃ妥当だけど命懸けの環境に放り込むんじゃねえ。


 「おっと、ここで止まって。そこに鳴子が張ってあるから注意して、あと鳴子を超えた先に罠があるから油断しないように」


 時たま罠が仕掛けられてるから気も抜けないし、簡単な仕組みの罠ならモンスターも使ってくるから厄介なんだよ。


 先の曲がり角に《遠見》と“空間把握”で反応捉えたからおかしいと思った、コイツら知性まで備えてるとか厄介すぎるわ。


 危ないので光弾でモンスターは倒しつつ罠を除去してからまた探索し続けた。


 幾度目かの戦闘を終えて獣型のモンスターを解体中にふと思った。


 「これ魔石って呼んでるけどちょっと詐欺だと思わない? 魔()って聞いたら石だと誤解するよね?」


 「最初に名前を付けた人がそう決めたので何とも、個人的には別にそれでも問題は起こってないので気にしてませんけどね」


 魔石使うのって生産職とか研究職だから関係ないか、でも魔石って石のように硬い魔物の心臓を略したものと知ってちょっと首を傾げたのは記憶に新しいわ。


 午前中目一杯探索をして地上に帰還すると太陽が眩しい、ダンジョン探索が日常となるとこれが職業病になるのかな?


 3人で探索成果を急設された学校の買取場に売り払い午前の部は終了した。……校内のダンジョンが潰れたからって近くのダンジョンに授業に行かせんなよ。


 ダンジョンから車で学校に戻って食堂に行くと同じように探索を終えた学生たちで賑わっていた。


 「そっちはどうだった?」


 昼食を持って先に戻っていたグループの連中に成果を聞いた、別の班だと配属される先が違うから様子が分からないからちょっと気になる。


 「こっちは普通に、モンスターを倒し続けて食料を回収していただけだよ」


 「私たちは氾濫した土地で探索してましたけど……特に何もありませんでした。護衛の人も助けてくれましたし」


 班は違えどやってることは同じか、どんだけ困窮してるんだよ。


 「キャーーーー!!」


 何かあったのか? 気になったので声の元に行ってみると前衛職の生徒が後衛職の生徒を突き飛ばしていたようだ。なんだ、調子に乗ってしまった奴が暴走しちまっただけかよ。


 大方午前の探索であんまりにも独断専行とかしてしまったからクレームを言われて切れたってとこか。急速に興味が失せたので席に戻ろうしたら後衛職の生徒が


 「……調子に乗るなよ!! 《火球》!! っ!?あぁぁぁ!!」


 自爆した。


 「おい、誰か早く水を持ってこい!! 水魔法使える奴らはすぐさまコイツに水をかけろ!?」


 周囲の協力もあってすぐさま火だるま状態は収まったけど大丈夫かコイツ? 全身火傷ほど酷くはないが腹が内側から吹っ飛んでやがる、回復薬か回復魔法で何とかなるか?


 「ごめん柊さん、回復魔法を頼む」


 「え、ええ」


 やがて先生が来たので後の対応は任せて食事に戻った。中断前と同じようにいきたいけど雑談の内容はやっぱりさっきのことになった。


 「あいつ何で炎上したんだ? 魔法を撃たれた方が燃えるのは分かるけど魔法を使った方が燃えんのはおかしくねえか?」


 「多分、座標設定をミスったからだろ」


 魔法職じゃないやつには分かりづらかったか、……何で魔法職の柊さんと西園寺さんも疑問符浮かべてるんですかね?


 「魔法と言ってもイメージだけで発動する便利な代物じゃないんだ。ちゃんと必要な式を組み上げて発動する必要がある、これをミスると発動しない。……しないんだけど唯一例外があってな、座標設定の式は別に組み込まなくてもちゃんと発動するんだ」


 「へっ、じゃあその座標? 設定の式? とやらは何のためにあるんだ?」


 「狙った場所に発動させるためだよ。そうだな、時間があるからちょっと実践してみるか。ちょっと眩しいぞ」


 『《光源》』


 「これがちゃんと座標設定した魔法、設定した通りに前方1mに光源が発動してるだろ?」


 うんうん頷いてくれているので理解してくれてるらしい。


 『《光源》』


 「「「わっ!?」」」


 まあ、驚くだろうな。何しろ全身光ってんだから、もういいか。ずっと光らせてると鬱陶しいんだよ、早く消そ。


 「んでこれが座標設定しなかった魔法、見た通り使った魔法は前と同じだ。でも全然違ったことがあったろ?」


 流石にもう理解できたか。


 「別に座標設定しなくても発動するけどしないと、自分の体を起点に発動すんだよ。さっきの奴はテンパり過ぎて式を組むのを忘れたから火球が体内から発動したせいでああなったんだ」


 「あの、私魔法職ですけど秋さんの言ってた座標設定の式? は認識したことが無いんですけど……」


 「私も、恥ずかしながら……今の話は初耳よ」


 「2人は詠唱式だろ? なら仕方ないさ、今の話はゼロから魔法を組み立てる時にしか当てはまらないからな。魔法名を唱えて発動するときはイメージした座標に勝手に発動してくれるから余程意識しなければ気づかないさ。」


 「ええと、ならさっきの生徒はどうして座標を間違えたのかしら。きちんと詠唱していたようだけど」


 「確かに自動で式は組み立ててくれるけど冷静じゃないと自動で間違った式を組み立ててしまうんだ。これが詠唱式の欠点だな、結果が出るまで正確に発動するかは分からないから。2人の場合は攻撃魔法は使えないから心配はいらないだろうけどね」


 2人でこの反応なら他のやつらはどんな知識で魔法を使ってんだ。この様子だと魔法の危険性も知らずにホイホイ使ってるっぽいな……子供が爆弾で遊んでるみたいで急に不安になったんだが。


 「そうそう永瀬さん、以前頂いたレシピの対価をお渡しいたしますわ」


 まさかの通帳ごと! 受け取った通帳を見てみるとわービックリ、0が何個並んでんだろう。桁間違ってるんじゃない?


 「正当な対価ですわ、ちなみにレシピの内容は毒消し薬でしたわ」


 「今回のことでかなり儲けてそうだね」


 絶対荒稼ぎ出来ただろうし遠慮なく貰っておこう、ぶっちゃけこれから先の世界を生き抜くためには金はいくらあっても足りないからな。動揺して受取拒否なんてしないぜ。


 更にはあの一件の報酬もくれるらしいけど何を渡すかは決まっていないから待っててほしいとのこと。他の人も報酬をくれるらしいから楽しみだな。別に対価を求めて行動した訳じゃないが貰えるものは欲しい。


 昼食を終えて午後の部に入った。探索場所は別のダンジョンだがかなり様子が違う。今までは曲がりなりにも洞窟といった印象だったが今回のダンジョンはかなりオープンというか……広いというか……その……広大だ。


 「俺の目がおかしくなったのかな、ダンジョン内に青空が見えるんだけど」


 「それは正常だよ、ダンジョン内では時折このような地形が見られるんだ。研究者たちはこぞってこの謎を解こうとしてるけどそれが何だという話だよね?」


 「うすうす感じてたけどあんた口悪いな!?」


 「ははっ、外に行けば不平不満をここぞとばかりにぶつける市民(ブタども)が出迎えてくれるからね。ちょっと精神がダークサイドに堕ちるのも仕方ないさ」


 ……業が深い……。俺絶対自衛隊に入るのはやめとこ、今のご時世だと特に風当たりが強そうだもん。


 「午後はダンジョン跡地での稀少資源の採集だったよな? リストは?」


 「こちらです」


 「どうも」


 えーと何々、


 採集目標


 ・ミスリル

 ・ダマスカス鋼

 ・魔宝石

 ・黄金樹の果実……etc……。


 ……難易度高すぎねえ?


 違うわ、これあくまでも目標で実際に集めてくるのは薬草とかだったわ。


 「そういや学校の生産職の連中は外の加工場に駆り出されてるんだっけ?」


 ジープで目的地周辺に向かってる途中で雑談として話題を振った。


 「そうだ、モンスター素材を加工したり魔法薬などの魔法関係の品物を作る人手が足りないから猫の手も借りたい状況らしく学生が応援に向かっている」


 「確かに忙しそうだよなあ、最近めちゃくちゃモンスターが街を襲っただのダンジョンが氾濫したとかニュースで流れるからそれへの対処用の資源も大量に必要だよなあ」


 「それ用ではありませんよ? もう政府はモンスターから全ての街の奪還は諦めてますから。資源は重要都市の防衛と治安維持及び経営に使われますよ?」


 「さらっとヤバそうな情報漏らすのやめてくんない?」


 それ漏れたら国民から大バッシング食らうでしょ? ……別に食らったからといって何かが変わる訳じゃないし反対派が行動を起こす体力も無いから問題無いんだろうけど。


 ちらっと外壁の街を見れば内壁より寂れてたし外壁の街を超えた街なんて最早日本の領土かと思うほど荒れてたしな、スラム街かよ。


 そんな状況で騒いでももう遅いし、したとしても陰で殺されそうだな。


 「あと調子に乗る奴が増えてきたよな。やっぱ力を持つと人は変わるのかな?」


 「いわゆる選民思考というやつだな、自分はすごいとステータスが上がって勘違いするものが出るのも致し方ない。それに同じジョブでも伸び方が違うのもそれに拍車をかけている。それでお嬢様にも粉をかけるような真似をするゴミ共も増えたからな……そいつらには後で身の程というものを叩き込んだが」


 「私にもちょっと紳士的じゃないお誘いも増えましたからこっちとしても嫌な感じです。坊っちゃんも当てになりませんし。その点永瀬さんは安心ですね、強いですしそれでも驕ることはありませんし……あれ? とんでもない優良物件では?」


 「別に俺程度はゴロゴロいるってことと調子乗っても碌なことは起きないとわかってるだけだよ」


 目的地に着いたので探索を始めた。ジープは運転手が守ってくれるから安心して探索してねってことらしいけど役割を交代したい……。


 なんだかんだで順調に資源を回収していきもうそろそろ終わりかと思ったところで気になるものを見つけた。


 「あそこの山に変なものがないか?」


 「どこだ?」


 「ほらあそこの崖の……ギラギラ輝いてるやつ」


 おかしいだろ、何で植物が黄金色に輝いてるんですかね?


 「あれは……黄金樹ですね。でもやめておきましょう、黄金樹周辺は強いモンスターが徘徊してる事が多いですから私たちでは力不足です」


 あれが黄金樹って書かれてた物の正体か。あんな物何に使うんだ?


 「常識では考えられない程の治癒力を保有する薬の材料だな、流石に肉体の欠損が治るほどではないが逆に言えばそれ以外なら大抵治せる。あれ単体でもかなりの治癒力があった筈だ」


 「んじゃあ俺が採ってくるよ、2人は先にジープに戻っといて」


 言いたいことを言って山に向かった。何か言おうとしてたけど無視した、だって夏休みの成果を試してみたいし。後で絶対怒られるだろうなあと思いつつポーチから剣を取り出していつでも戦えるように準備しておく。


 森ってこともあって昆虫型のモンスターが多いな、蟷螂みたいな両手にすごい鎌を携えた死神のようなモンスターからデカいコーカサスオオカブトみたいなやつまでいやがる。


 しっかりと型を意識して剣を振るうがイマイチだな、もっと力を抜いても良かった。


 試し切りしつつ目的地にたどり着くと目に煩い色をした樹に実る黄金のリンゴみたいな果実をもぎ取る……重い……。これ本当に果実か? 純金より密度がありそうなんだが。


 目的を達成したので崖から飛び降りてジープに戻るとちょうど荷物の詰め込みが終わったとこらしい。タイミングバッチリじゃん。これで1日の活動が終了した。





 ちなみにこの後怒られることは無かった。むしろ良くやったと褒められた。……スタンドプレーを許容するとか……いかに追い詰められているのか分かるぜ。

大体の主人公のステータス(現在)

※小さい値は切り上げ

合計ジョブレベル:900付近(内訳、光術師系統の下級職で600、上級職で200、【斬神】【突神】が共に45、後は今のジョブ)

メイン:【煌術師】

HP:約10万

MP:約12万

SP:約5万

筋力:約2万

耐久力:約2万

器用:約6万5千

速度:約2万7千

幸運:約2千


 普通のカンスト前衛のバランス型は器用と幸運を除いて2万付近を想定してます。特化型なら2万5千をどれかの項目が超えます。HP、MP、SPは前衛か後衛かによるけど前衛ならHPは十万、SPは3万MPは2千付近を想定してます。


 ちなみにニア・レンジのステータスはMP、器用や速度を抜きで考えると素が大体倍くらいでした。さらに切り札を使うと倍に増加するのでめちゃくちゃ強いです。


 幸い速度は1万を元が切っていたため倍化してても2万付近なため対応出来ました。


 富士山のドラゴン達はカンスト前衛職1人では勝てないですしバランス良くパーティを組まないと相当厳しいです。


 主人公が力をつけても調子に乗らないのはモンスター側がめちゃくちゃ強いことを知ってるのでこの程度で威張っても無駄だしなあと悟ってるからです。


 余談ですが器用は戦闘職には不要なので基本上がらないです。上がるのは生産職ですし成長係数も器用が最も高いので本来の主人公の適職は生産職ですね。

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[一言] 主人公の職業は増えないのかな?
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