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ダンジョン探索の時間

 「《スラッシュ》》!」

 「《スマッシュ》!」

 「《スピア》!」


 以上が青空レベル上げ教室(in人外魔境)を終えてしばらく経った鍛錬場の様子です、皆さん張り切って新しく手に入れたスキルの力を試そうと叫んでますね。


 でも俺知ってるんだよ、スキルの発動に発声が必須じゃないこと。あの時、森山は発声が必須って言ってたけど慣れたら別に要らないんだってね。


 『《乱切》』


 ね、森山くん? 君さらっとマスターしてるけど一言あっても良くないかな。別に言う必要もないけどさ。


 わざわざ技名を言うとか敵に対して親切すぎるわ、お返しに反撃をもらいそう。そして神と名のつくジョブに就いてるのに一個もああ言った感じのスキルを覚えないのは何ででしょうね?


 俺合計ジョブレベルならもう800近いのよ? それなのに覚えてないっておかしくない? 確かにほとんど魔法職で埋まってるけどさあ。


 その魔法職もイマイチ使いこなせてない感あるけどな、魔法を使うたびに一度俺が止まって一息入れないと発動出来ないし。


 多分、慣れたら動きながらでも行使できるんだろうけど今の俺の実力じゃ夢のまた夢だな。


 それに使われてるスキルたちを見ると今の俺にはもう必要ないかもなあと思えて来たわ。何しろパッシブスキルでまず同格相手なら接近戦ではかなり有利になれるしわざわざ通常攻撃にほんの少し色をつけただけの攻撃は不要だし。


 必要なのはかなりコストがかかってもいいから一撃で格上にも通ずるスキルかな。それが前の時にあったら絶対もうちょっと楽に勝てたわ。


 『《光線》』


 魔法職用に特設されたエリアで威力を確かめてるけど強いなあ、光線が当たった地面が融解通り越して蒸発してるわ。


 しかも攻撃範囲:視界とか強すぎるなあ、なお発動コストには目を瞑るものとする。これ適当に遠距離からモンスター相手に撃ちまくってたら楽勝なんじゃない?


 ……人間兵器みたいな火力が出せるようになった今の俺でさえ“直感”が反応したとかマジであそこ人外魔境だよ。


 どんだけステータスあげてもいざという時にはアッサリと死にそうな世界だしなあ。無双とかしてみてえなあ、何で人間ってこんなにモンスターと比べて性能低いの?


 「森山、これからの時間割見たらレベル上げはともかくダンジョン関連やモンスター関連の授業が多くないか?」


 この数ヶ月でお互い心の距離が詰まったので呼び捨てで呼び合う仲になったんだ。鍛錬場とかジムで汗を共に流してたら勝手にそうなっただけだけど。

 

 「今のご時世を考えたら仕方ないんじゃないかな? それに速度の問題でかなりの効率で勉強が出来る様になるということも認められたからね。特別テストで合格すれば必要な単位は履修したとみなす制度ができたらその分特別な授業が増えるのも分かるよ」


 そうなのである、遂に速度が高いとめちゃくちゃ早く学習できるということを国が認めてくれたので海外の飛び級制度みたいに必要な学力をテストで判定して条件を満たせばもう授業に出なくて済むのだ。


 ちなみに俺はこの制度が発表された日に即行で高校3年分の履修単位をとりました。残念ながら大学での単位は大学に入学してからしか取れないがわざわざ退屈な授業を毎日聞かなくて済むのは大きな利点だろう。


 だからといって超常学のような特殊な授業は免除されないけどな。


 「でもモンスターの生態についてとか教えられてもどうしようもなくないか? 知ったところでどうしろというのもあるし、後、モンスターの素材の利用方法を教えられても生産職じゃないから活用できないんだが」


 「でも知らなかったから不慮の事故に遭うことも無くなるわけだし、自分がどういった特性の素材で出来た装備をしているかを把握しとけば十全に装備を扱えるだろう?」


 そうだけどゴブリンの社会形態を教えられてもどう活かせばいいの? コロニーを築き上げて王を中心とした社会基盤を作り上げて強固な軍備を敷いているため始末する時には見張りが周りに接敵を伝える前に殺れとかもはや特殊部隊の域なんよ。


 装備にしてもスキルが使いやすいものや特定のスキルが使いにくいものとかは分かりやすくて参考になるけど魔鉄は生産職のスキルじゃないと加工が難しいとか言われても魔法職()にどうしろと?


 講義を聞いてるとなんか生産職に就きたくなってくるから不思議だ、一応前衛職と生産職用に2つジョブを空けてるけど衝動で決めていいもんじゃない気がするし。


 でも【錬金術師】がどういうジョブかの説明は結構面白かったな、一次素材を加工して中間素材にするジョブとは思わなかったわ。


 完全に中世ヨーロッパの錬金術師とおんなじで金属関係のジョブかと思ってたし。


 これどうなんということも多くあるけど全く新しい知識が入って来るのはちょっと楽しく感じるけどな。


 



 「それでは各班、こちらの指定した素材を集めてきてもらう」


 そんなことを話していたのが数週間前、現在教官たちからダンジョンに入って自力でモンスターをぶっ倒して素材を剥ぎ取ってこいと言われております、頭おかしい。


 確かに結構レベル上げをしたから俺らのステータスは上がってるよ? でもだからといってそれはあんまりじゃないでしょうか? こんなん非難轟々でしょ。


 「ふっ、遂に俺の見せ場がきたな」

 「これで小うるさいお守りからも離れられるぜ」

 「僕たちだけでもモンスター如き余裕で勝てるってとこ見せてあげますよ」


 訂正、調子に乗っている人が多すぎるわ。コイツら授業が終わる頃にはダンジョンの養分になってそうなんだが大丈夫か。


 ちゃんと護衛役も付くけど基本ノータッチで危ない時しか手を出さないのでかなり本格的な探索になりそうだ。


 ダンジョンは狭い空間なので前みたいに五人一組ではなく四人一組でグループ分けをするらしい。そんなわけで俺のグループは俺、相原、森山、佐々木の野郎軍団となった。


 グループのジョブ内訳

 俺:前回同様【波動術師】

 相原:【剣士】

 森山:【騎士】

 佐々木:【指揮官】


 ……佐々木、お前のジョブって何が出来るの?


 「俺が《号令》をかけた相手の能力が僅かだが上昇できる。ただあんまり上昇はしない上に俺自身の戦闘能力は皆無と思ってくれていい」


 まじで後方支援担当じゃん、強いて言うなら【付与術師】は1人しかかけられなかったが佐々木は上昇値は控えめだが大人数にかけられるという違いがあるか。


 更衣室で学校支給の装備品に着替えていると相原が


 「あのさ、もうテストも終わって夏休みまで1週間切ったんだぜ。俺もうてっきり大きな行事はないと思ってたんだけど」


 「安心しろ、俺も完全にそう思ってた。寝耳に水だよ今回の話は」


 もう7月の終わりに近いんだぞ、そりゃ後はもうすぐ訪れる夏休みを待つだけと思うだろ。


 しゃーない、これを乗り越えれば存分に遊び倒せる日々がやって来ると信じて頑張りますか。


 「佐々木、指定された素材って何?」


 「少し待て、リストを開くから。ええと何々……剛毛犬の毛皮、ゴブリンの魔石、魔鉄5kg、ダンジョン産の植物……以上だな」


 「それ結構面倒な方なんじゃないか? 運が悪いな」


 「そうは言っても仕方ないだろう、モンスター素材は戦闘職が頑張って集めるとして問題はどうやって持ち運ぶかだな。流石に前衛に荷物を持たせるわけにはいかないから……」


 「荷物役はお前が行けよ、佐々木。俺だって魔法の発動をしなきゃならないんだ。荷物が多そうなら俺も手伝うがそうじゃなかったらやることないお前が持っとけよ」


 「ま、そうなるか。仕方ない」


 「それじゃフォーメーションを決めようか、どうしたらいいかな?」


 「俺と森山で永瀬と佐々木をカバーできるようにした方がいいだろ? なら前が森山でその後ろが永瀬と佐々木、殿が俺ってことで」


 ダンジョンに向かう途中でプランをざっと立てて護衛役の人に挨拶をしてダンジョン探索に入った。


 にしても外と違って日が当たらないから視界が悪いな。


 「明かりをつけるぞ」


 『《光源(ライト)》』


 光魔法で視界を確保して事前に渡された地図を見ながら魔鉄が取れるポイントへ向かう。


 道中いつモンスターが襲って来るかわからない状況で進まなければならないためとても張り詰めた空気だ。平地ならまず不意打ちされることはないが洞窟のように入り組んだ場所だと曲がり角でバッタリ遭遇とかあり得るからな。


 俺もイマイチスキルを使いこなせていないから動いているとそんなに広範囲のことが分からないし。それでも死角はカバーできるから個人としていいけどパーティとしては不十分だし。


 「止まって」


 「どうした?」


 先導する森山がストップをかけたので佐々木が疑問の声を上げた。ここ一本道だぞ、モンスターの不意打ちも無いし何があった。


 「あそこ、植物が生えてない?」


 「ん? どこだ?」

 

 「ほら、あそこの壁に同化するように生えてる地味な色の」


 ああ、あれか。言われなきゃ分からんわ、俺基本生物にしか反応しないから素材系統はほんと力になれないんだよなあ。


 取り敢えずダンジョン産の植物を確保してあとは3つゲットすれば終わりだな。


 何事もなく採掘ポイントに到着したので俺と佐々木で壁を鶴嘴でカンカンしながら魔鉄を採掘してるんだけどこれ結構重労働じゃない? それに音が意外と出るからモンスターがやってきそう。


 見張り兼護衛に相原と森山がモンスター素材は来ないか警戒してるけど絶対くるなこれ。


 「! モンスターが来た。数は3、姿からして多分剛毛犬」


 よりにもよって獣型かよ、あいつら体が人間よりも低い位置にあるから前衛だと攻撃しにくいんだよなあ。


 「支援はいるか?」


 「頼む」


 支援はいるらしいので採掘しつつ横目でモンスターが来るタイミングをはかって


 『《閃光》』


 太陽の光が入らないダンジョン内だから強烈な光への反応も外のモンスターと比べてはるかに大きいな。そして目を閉じて怯んでいる隙を見逃すほど2人は甘くない、すぐに勝負はついた。


 「佐々木、俺は解体やるから残りは任せた」


 流石に警戒してる2人に剛毛犬の解体をさせるわけにはいかないので俺が解体をすることにした。


 スキルのおかげでこの距離ならどこを切ればいいのかわかるし簡単に切れるのでさほど時間もかからずに3体とも解体して毛皮をゲットした。……残った肉はどうしよう。


 「肉はこちらで回収しよう。モンスターの肉も立派な食料だからね」


 護衛役の人がまとめてくれたので任せるとしよう。……もしかして食堂の肉料理ってこれが原材料だったりしない?


 毛皮3枚を持ち運びしやすいように纏め終わると佐々木が魔鉄の採掘が終わったので袋に詰めて毛皮と魔鉄、そして謎の植物をバックパックに入れていざ最後のターゲットに向けて探索しようとすると


 「すまん、永瀬。レイスが出やがった、対処頼む」


 ほんとについてないな、レイスとか物理無効の前衛職お断りのモンスターじゃん。その代わりに魔法にとても弱いから魔法職からすればいい相手だけどな。


 こっちでも知覚した範囲を確認すると半透明な女性型の幽霊がフラフラとこっちに向かってきている。


 『《光弾》』


 光の弾丸を射出するとその存在がまるで幻のだったかのように姿を消した、霊系モンスターは素材を落とさないからあんまり旨みがないって教わったけど本当だったんだな。


 あー、でもポーチになんか入った感覚があるわ。何が入ったんだ?


 「レイスに遭遇して思ったんだけど一回ダンジョンから出ないか? 荷物を外に置いて身軽になってから探索をした方が安全だと思うんだ。それにもうすぐ昼ごはんの時間だし、お前らだってダンジョン内で飯は食べたくないだろ? 別にさほど期限は迫ってないんだし確実に行こう」


 そう提案すると他の面子からも賛同を得たので一回ダンジョンから出ることになった。護衛役の人が頷いてるのでむしろこれが正解なんだろう、確かに荷物を抱えての戦闘とか正気の沙汰じゃないしな。


 「ゼーッゼーッ、おい……永瀬、頼む少しだけでいいから荷物を持ってくれ。限界だ……」


 「《光源》を消していいなら考えるぞ。魔法職じゃないお前に言っても仕方ないけど魔法を動かすのって座標を相対座標に設定する必要があるうえにコロコロ座標設定を変える必要があるから手間がかかるし繊細な作業なんだぞ」


 お前ダンジョンに入る前に《号令》かけてからやることないんだし頑張ってくれ。俺だって嘘はついてないぞ、繊細な作業なことには違いない。


 ただ、俺にとってはさほど負担ではないというだけで。


 佐々木が息を切らせながらも荷物をダンジョン外に運び終え途中だが目標を提出してお昼ご飯をとった。


 「……別にさあ、俺も文句言いたいわけじゃないよ……わけじゃないんだけどな、これはないだろ」


 「でもあんまりお腹に詰めすぎると身体の反応が鈍るからこのぐらいがちょうどいいんじゃないかな」


 これ、軍用のレーションじゃね? 相原が文句を言ってるようにそんなに量もないし美味しくもない。栄養を詰め込むことだけを考えられた食事だ。


 森山が言ってることも分かるけど食事はうまい方がいいよ。


 食べ終えてからしばらく休息を取っていよいよ最後の目標に向けての探索を開始した。

 

 「ゴブリンってどこにいるんだ?」


 「ん、今がここだから……その角を曲がると小部屋があるみたいでそこにゴブリンが湧くらしい」


 本当にダンジョンからモンスターは湧くらしいがコイツら生物かどうか疑問が残るぜ。


 佐々木の案内に従うと小部屋にゴブリンが確認できた、4体ほど。ちょっと多いな。


 角でどう対処するか作戦会議を開いた。


 「俺が《閃光》でアイツらの目を潰している間に相原と森山が突貫すればなんとかならないか?」


 「それでもいけると思うけど永瀬の《光弾》じゃダメなのかい?」


 「別にそれでもいいけど……」


 というわけで俺が《光弾》を使った後に息の根があるやつを《閃光》を使って怯ませて前衛が始末することになった。


 『《光弾》』


 4体の四肢を穿つ軌道を設定して狙い違わず四肢を光弾がもぎ取った。


 『《閃光》』


 やがて間をおかずして死ぬがそれでも息の根があることには違いないので2人が突撃してけりをつけた。


 ……ごめん、俺がモンスターを倒すと自動でポーチに収納されちゃうからそれを見られると説明すんのが面倒くさいんだ。


 「じゃ、佐々木。魔石の剥ぎ取りやるぞ」


 「はあ! 何で俺が!」


 「俺が魔法で攻撃、前衛が撃ち漏らしを撃破、お前が剥ぎ取り。完璧な役割分担だろ? それに俺も手伝うんだしあんまり文句言うなよ」


 「……まあ、仕事してないのも悪いしやるか」


 俺がゴブリンの遺体をまとめて捌きやすいように整えて佐々木が捌くという役割分担となった。


 モンスターとはいえ人型の胸を掻っ捌いてるのはちょっと猟奇的だぞ佐々木。そしてゴブリンの肉も食用になるんですか、護衛役の人。


 「少しクセの強い味だから賛否が分かれるかな、ちなみにボクは結構イケると思ってるよ」


 俺は絶対食いたくないですけどね。


 割といいペースで指定された素材を集め終わったのでダンジョンから出て授業は終了となった。はじめてのダンジョン探索で不安も多かったけど振り返るとわちゃわちゃ出来て意外と楽しかったな。


 ちなみに調子こいてた奴らは漏れなくボロ雑巾と化して帰還しました。

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[一言] 主人公の歳より上下した年齢でステータスが高い人は放置されてるのかね? 年齢無視の召集じゃ無いみたいだし。
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