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それから~レオンの場合~

 レオンが連れてきてくれたのは、学園の食堂だった。アマリアは初めて利用することになる。病み上がりなこともあり、外ではなく温かい場所にしてくれたのだろう。悪名高い二人とあって、周囲も避けている。気にしていられない、と彼らは堂々と座っていた。

「誘ったのでおごります。先輩、何が飲みたい?」

「そんな、悪い……。いえ、今回はごちそうになるわ。次はこちらの番ね?」

「わあ、アマリア先輩うまいもんだね」

「……?」

「ううん、なんでも。あ、これ期間限定だって」

 初回ということで、レオンが手慣れた様子でアマリアの分も注文してくれた。レオンが頼んだ果物の炭酸ジュースがあまりにも美味しそうだったので、アマリアも同じものをお願いした。

「……どうせ、もう広まるからさ。アマリア先輩にまず見て欲しくて」

「そちらは……」

 暴力沙汰を起こさないようにと生徒会長が容易してくれた誓約書だ。だが、破れたままだ。

「実際書いたのはさ、会長に預かってもらってる。で、こっちをもらってきた。あの人さ、わざわざ取っておいちゃってて。……でもってさ、すぐきちんとした誓約書を出してくれてた」

「そう……」

「……わかってくれてた。信じてくれてたのかなって」

「きっとそうよ」

 レオンは頷くと、敗れた誓約書に視線を落とした。当時の自身がやらかしてしまったこと。戒めとしてレオンは持ち続けることだろう。この学園のことだから、レオンが署名したことも広まるだろう。少しは状況が変わると、アマリアは実感できた。

「ま、そういうことで。……で、アマリア先輩。他にもなにか頼む?オレ、肉頼むけど。先輩もいっとかない?」

「いえ、これ以上は悪いわ。それに朝、張り切って食べたのでお腹もいっぱいなの」

「なんだ。色々お世話になるし、ごちそうしとこうって思ったのに」

「……?ああ、これからの交流ってことかしら。ええ、嬉しいわ」

「んー、当たってるけど微妙に違う気も。ま、放課後楽しみにしてて」

「???」

 アマリアには何が何だかわからない。

「あと、オレだけじゃないかな?」

「???」

 レオンが加えた内容によって、アマリアはもっとわからなくなった。結局予鈴がなったこともあり、レオンは肉料理を頼むことは断念したようだ。

 途中までは一緒なので二人は並んで歩く。そして、四年生の階に到着した時だった。

「な、なぜです!フィリーナ!」

「止めないで、ロベリア。……ふう、わたしは自由を選ぶの」

 縋るロベリアに遠くを見つめるフィリーナ。廊下で二人のやりとりが注目されていた。どう触れたらいいのかわからず、他の生徒達は遠巻きに見ていた。 

「で、でしたら!わたくしもそちらに参ります!」

「ううん、ロベリアはちゃんと残った方がいい。……変に会長とかににらまれない方がいいよ。わたしもね、今回危ない橋を渡ったの」

「そんな、フィリーナ……」

「わかってロベリア。わたしがそうしたかったの」

 フィリーナは自分で望んだ。彼女の選択肢は、より生徒会の反感を買うものだったという。

「……定期的にご連絡願います。そちらの方も!」

「私!」

 アマリアは指名された。ロベリアは息を荒くしながらも、それで妥協することにしたようだ。アマリアにさらに詰め寄り、言い寄る輩がいたら逐一方向するようにと言いつけられたいた。

「お、フィリーナちゃん!うまくいった?」

「うん。びっくりした。居合わせるなんて驚き」

「ねー。狙ったようなタイミングじゃん?」

「ねー」

 アマリア達そっちのけで、二人はのほほんとしたやりとりをしていた。本当に気がある二人だ。

「ぐぬぬ、今はまだ色気のある関係でなくともです!あの男がフィリーナに心奪われるのも決まったようなもの!是非ともお願い致しますね、アマリア様!?」

「ええと……。微笑ましいものだと思うけれどもわかったわ!」

 痛みを背負ってきた二人でもある。心が弱くも優しかったからこそ、苦しんできた二人だ。そのような二人が幸せになるのならとアマリアは思う。けれどもロベリアの心情を察するので、全力で応援するのも迷ってしまっていた。

 空気を読んでか予鈴が鳴る。一人学年が違うアマリアは戻ることにした。

「あ、アマリア様!放課後よろしくね!」

 フィリーナまでもそう口にする。

「は、はい。よろしく……?その、放課後に一体何があるのかしら?」

「あ、そっか。言ってなかった。それはね―」

「気にしない、気にしない。ほら、楽しみにしとこ?」

 せっかく答えようとしていたフィリーナに、レオンはストップをかける。サプライズ!と明るく言う彼のせいもあり、アマリアはこの疑問を放課後まで抱えることになってしまった。


 そして放課後である。レオンが焦らしに焦らしてきた回答であるが、それは案の定というべきか、アマリアは直前に知ってしまったことになる。

「いやー、この学園プライバシーなさすぎ。せっかく驚かそうと思ったのに」

「うんうん。あの会長もそういうとこ取り締まってほしい」

 レオンとフィリーナと不満をもらす。彼らの満月寮に立ち寄り、そのまま何故か三人は新月寮へ辿る道を歩いていた。

「会長も頑張られて。……いえ、お待ちなさい。まさか、放課後の件とは」

「うん、一緒に帰るの」

 フィリーナが答える。現にこうして共に下校している。

「いえ、待つのです。フィリーナ様もレオン様も、お帰りになるのはこちらではないでしょう?」

「こちらなんだなー」

 レオンが答える。フィリーナもうんうんと頷く。

「いえ、待って。理解が追いつかないの。もちろん歓迎は間違いないけれど、あまりにも突然すぎて」

 アマリアは頭を抱えながらも状況を整理しようとする。その間にと、二人は近くにいた新月寮生に挨拶をすることにした。

「どうもー!お世話になりまーす!」

「みなさま、よろしくお願い申し上げます。っと、そこまで畏まらなくていいんだっけ」

 新月寮に着くと、二人はお辞儀をした。手にしているのは軽い荷物だけ。レオンがかなりフィリーナの荷物を抱えていた。彼の場合は軽々とである。衣類などは後日送られてくるそうだ。

「よ、レオンじゃん。お前ガチで来たのな」

「うん、ガチできちゃった!先輩、よろしく!」

「おうよ。そうだ、そろそろ歓迎会やっとくか。一気に増えたことだし」

「よしきた!」

 早速、レオンは寮の先輩と打ち解けていた。

「わあ。本当にフィリーナ様だぁ……。お綺麗……」

「あら。ふふ、よろしくね」

「は、はいー!」

 お約束のごとく、フィリーナは寮の後輩に憧れられていた。フィリーナの元にやってきたのは彼女の愛鳥だ。

「これからはもっと一緒にいられるね」

 そうして小鳥と頬を寄せ合うフィリーナは実に絵になった。周囲から感嘆の声があがる。そんな和やかな雰囲気も、とある人物の襲来により緊張が走る。

「ようこそ、二人とも。……うん、決定事項なのでコメントは控えます。ひとまず荷物置いてこようか。それから色々と案内するから」

 寮長のクロエのおでましだ。お世話になります、と挨拶したまではいい。クロエは発見してしまう。

「……小鳥、かぁ。小動物きちゃうかぁ」

 クロエは黒い小鳥を横目で見る。バレバレだったが見つかってしまった。寮で動物を飼うなど前例がない。クロエは断るだろうと誰もが思っていた。

「……だめ?……クロエ様?」

「ううん!可愛いからよし!」

 フィリーナの上目遣いの懇願が決めてだったのか。クロエ当人は小鳥が小鳥が可愛いからと連呼しているが、どうみてもたらしこまれていた。フィリーナに。

「……鳥苦手な子もいると思うから、そこは気をつけてね?それじゃ、改めて二人とも。……そこの小鳥さんも」

 項垂れたクロエは、二人を連れ立って寮へと入っていく。

「あ、アマリアさん。二人とは親しいでしょ?大丈夫だとは思うけど、フォローよろしくね?」

 振り向きざまにクロエがそう言った。その二人も能天気に手を振っている。

「ええ、お任せください!」

 どういうつもりかはわからないが、彼らも新月寮の一員となったのだ。賑やかな彼らとの新しい生活が始まる。アマリアは期待に膨らむだった―。

もう少し、もう少しで区切りがつきます・・・!

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