夜明けの盤上遊戯②
「……とはいえ、そろそろ。お開きにしないとよ。あ、私その札で上がりよ」
「……といいつつ、楽しんでいるアマリアだった」
フィリーナに実況されてしまった。
「ああ、先輩。もう少しポーカーフェイスの方がいい。レオンとかそこついてくるから。フィリーナは。……対策しようがない。運でねじ伏せてくるから」
「ありがとう、エディ。勉強になるわ」
アマリアは教えられた通り、表情を作る。あまり効果はなくとも、エディは密に悶えていた。必死だと。
「いや、なにアドバイスしてんの。エディ君というやつは」
レオンはため息をつきつつ、カードを切る。
「それで最後にした方がいいかも。長く遊んだし」
「確かに。誰が勝ってもそれで終了で」
フィリーナとエディはそう提案してきた。アマリアもその通りだと思った。
「えー。まだまだ夜は長いっしょ―。遊び足りなくない?」
「いえ、そろそろ良いと思うのよ。十分楽しんだわ」
「またまたー。勝ち逃げのアマリアだからですかー?」
「……なんとも不名誉な。いいのよ、誰が勝とうと」
器用にカードを切るレオンに応戦していたが、アマリアは堪えることにした。こう、彼女は予感がしていた。これはレオンなりに言わせてもらうと。―フラグだった。
「―あなた達、随分楽しんでるね?こんな時間になにしてくれてんのかなー?とっくに朝だけど?」
「ちょっ。誰、真似してんの?オレより似て……」
「ん?似てない?」
レオンはゆっくりと顔を上げる。そして震え出した。
「……いえ、似てます」
「本人だからね」
まさかもまさか。クロエ本人だった。レオンだけではない。アマリア達も緊張してしまった。共犯も同然だったからだ。
「ひいっ!も、申し訳ございません!私が、私が誘い出し……」
「なんだろ。似たような流れのような」
「なぜですか!クロエ先輩はおられなかったのに」
「私に言われても。……にしても」
部屋を抜け出して遊びに興じていた四人を見る。それぞれ覚悟を決めていたが。
「……鬼の寮長も、たまにはね。私も一戦交ぜてくれる?」
「えっ!?」
「アマリアさんはいつも驚くなぁ。……必要以上に」
「それは失礼致しました。ですが……」
「たまには、ね。そんな気分の時もあるの」
クロエはいたずらに笑うとカードを手にとった。
「気分。……ふふ」
アマリアはなんだか可笑しくなってしまった。
「クロエ様ー。一戦といわずー」
「くっ、フィリーナさん……。その手には、その手には……!」
甘えるようにこられても、クロエは鉄の意思で断ろうとしたが。結局は一戦では済まず。
「……そうね。こんな時があっても良いわよね」
勝負に白熱していた。クロエも一緒にだ。
まだまだ先は長い。こんな時くらいあっても良いのだろう。アマリアはそう思った。
一区切りとなります。
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