エディと新たな世界
そうしたやり取りがあった。アマリアはマレーネとは教室で別れてエディが待つ教室へと向かう。暖房が効いているものの、エディにはせめてゆったりとした所で体を休めて欲しい。急ぎ足だった。
「失礼するわね……」
アマリアはそっとエディの教室の扉を開ける。エディが寝ていること前提だった。
「せんぱ……。っと」
エディは起きていた。教室にやってきたアマリアの方を見て、声を掛けようとしている。だが、アマリアの呼び方で迷いが生じてしまっているようだ。
「……ふふ、ノア様も困った方ね。私はなんだって構わないわよ。あなたが呼んでくれるのだもの」
エディが自分を呼んでくれるなら、どう呼ばれてもいい。呼んでくれるだけでも嬉しい。それがアマリアの純粋な思いからくるものだった。
「えっ」
「!」
エディが目を見開く。アマリアの自然な思いから出た言葉だったが、相手を予想以上に驚かせてしまったようだ。アマリアも言い方が良くなかったかもしれないと思い始める。相手に変に気を遣わせる言い方だったかもしれないと。
「……あなたはほら、変な呼び方はしないでしょう?ガチダッシュ先輩とか、生命力桁外れ先輩とか」
「呼ぶわけがない。何、その呼び方」
これは実際にアマリアに提案されたあだ名である。某後輩に。レオンだ。
「そうね、普段通りが落ち着くわ。エディ」
「……うん、先輩。帰ろう」
「ええ」
エディは席から立つと、手にもっていた手紙を懐に仕舞った。アマリアは思い当たることがある。―夜に行われる特別講習、『ナイトクラス』への案内状だ。
エディは成績に問題があることもなく、出席日数もぎりぎりではあろうが進級自体は出来ている。それでも案内が来たのは、勉学の機会を与えようとしてのことだろう。
「……」
「……先輩?」
「ああ、ごめんなさいね。ぼうっとしてたの」
人の名前を呼ぶのもそう。エディは人と関わることが苦手なのかもしれない。基本的には授業に過ぎないが、新しい交流をすることに抵抗もあるかもしれない。
「……」
エディは悩んでもいて、焦ってもいる。何てこともないといつもの無表情の下でもあった。
今回もこの長さという。
いつもが長いという話ですね。
もっと区切らないと。