表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/230

あだ名問題

 その後も暴露話で盛り上がり、歓迎会はお開きとなった。アマリアは自室のベッドで横になって思い返す。いつもながらの寒さだ。アマリアは布団にくるまる。

「ああ、楽しかったわ。……それでもって、苦かったものね」

 口直しにと果実水が振る舞われた。そのおかげもあってか、そこまであとはひかずには済んだ。だがトラウマとして残り続けることだろう。

「それに……」

 楽しかった一方で、アマリアは頭を悩ませていた。帰り際にフィリーナとレオンに話しかけられた件だ。

『よそよそしい。あの子はエディ呼びなのに』

『まー、もうちょっとくだけてくれると嬉しいかなー。ここの寮の人たちってさ、基本様づけはしてないんでしょ?』

 要するに自分達に様づけはやめてほしいとのことだった。

『ちなみにオレ!フィリーナちゃんはフィリーナちゃん!』

『レオン様はレオン』

『いいね、呼び捨て大歓迎!』

 ノリノリでお互いの呼び名を決めたようだ。

『よそよそしい……。その通りね』

 アマリアは素直に受け入れる。確かによそよそしかったのかもしれないと、彼女も考えていたのだ。そして得意げにいう。

『ふふん、私もちゃんと呼べるのよ。寮内の雰囲気は損なわない所存よ。先輩は先輩。同い年や後輩の皆さんはこう呼ぶの。つまり、フィリーナさんにレオンさん!』

『却下』

『なんと!』

 容赦なく却下してきたのはフィリーナだった。あまりにも容赦なさすぎたのでレオンがフォローする。

『容赦なさすぎ。まー、それじゃ寂しいってのはあるかな。出来たらでいいからさー』

『え、ええ。善処はするけれど、そのあだ名ということかしら』

『そうそう、あだ名でもいいよ』

 レオンはそういうが、アマリアはあまり縁がない話だったので困惑していた。

『といっても難しいわね。そうね、お二人が希望の呼び方もあるでしょうし。それでも良いと思うの』

『……まあ、あるっちゃあるけど』

 レオンは言葉を濁している。アマリアとしては希望があるのなら応えたいと思っていた。どんとこいと彼女は構える。

『本当、レオン様?では、そちらでいきましょう―』

『なら、レオンがいい』

『!?』

 呼び捨てだった。確かにさっきもそう言ってはいた。ただ、アマリアには衝撃が走る。身内以外で呼び捨てなどしたことがなかった。それも異性、殿方相手となるとアマリアにはハードルが高かった。

 もちろんレオンにはその反応は想定済みだった。レオンは言う。

『っていうのも困るでしょ?だからさ、アマリア先輩の呼びやすいのがいいんじゃないかって』

 それをいうと畏まった呼び方となるが、また却下されるだろう。

『わたしもお願いね。えっと、アマリア先輩。……うーん、先輩?』

 自分もそうするようにとフィリーナはそう呼ぶ。だが、どこかしっくりきていないようだった。

『……結局、強制しているだろ』

 壁にもたれかかっていたエディが口を挟む。彼は寝ていたのか、それとも実は起きていたのか。

『おっと、後方彼氏面』

『その手にはもう乗らない』

 エディがむせてしまった一因はこのレオンにある。レオンの発言が起因していた。残念、と当のレオンはにやけながら返事した。

『……あの、私も親しい呼び方をしたいとは考えているの。ええ、鋭意制作中ってとこかしら』

 彼らとはもっと仲良くなりたいとアマリアも考えている。彼らもそれを望んでくれているのなら、何とも嬉しい話だろうか。

『お、期待しちゃっていいの?』

『楽しみにしてるね』

『ええ!』

 ハードルを高くしてしまった感は否めないが、アマリアは応えたいと思っていた。

『エディ君起きてるってこと?よし、起きてる。良かったらさ、オレのこと気軽に呼んでよ。レオンとかー』

『……』

『あれ、寝ちゃった?』

 エディの目は開いているが、返答はない。レオンは明るく言うが、しばらくしてからのエディの反応は冷めたものだった。

『……起きてる。馴れ合うつもりないんで』

『……エディ、あのね』

 それはいかがなものか。ばっさりと言い捨てたエディに、アマリアは声を掛けようとする。

『先輩がこいつと和解したっていうのはわかる。これは個人的に思っているだけだから。あんたが気にする必要はない』

『それは……』

 確かにエディの個人的な感情にまで干渉は出来ないかもしれない。エディとしては思うところが多々あるのだろう。

『エディ君て、はっきりしてるよね。……まあ、当たり前だね』

 レオンもそれ以上強くは出られなかった。

『……わたしも反省する。呼ばせるものでもないね。―まあ、今夜はこのへんで。おやすみなさい、みんな』

 夜更けまでやっていた歓迎会のあとでも、クロエ寮長の点呼は行われるとのことだ。お互いに挨拶を交わすと、それぞれの自室に戻っていった。

「……眠れるかしら」

 あれこれ考えている内に、結局はアマリアは眠りについていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ