プロローグ① 隕石が見た夢
新規の物語です!
よろしくお願いします!
―隕石も夢を見るのか。
それを言い出したのは彼だったか。人々が見る夢と同じように、隕石も夢も見るのだろうか、と。
もし、悪夢だったとしたら。
人々と同じように、隕石も縋るのだろうか。
一刻も早くその悪夢から逃れたいと。そして、眠りから目覚めさせて欲しいと。
『うわああああああ!』
『……だいじょうぶ?』
まだ夜が明けてない頃、私の横で寝ていた男の子が飛び起きた。幼かった私達にとっては当たり前の事だった。その夜も彼は怖い夢にうなされていた。目に浮かべながらも、私に抱きついてきた。
『こわかった……』
『よしよし、もうこわくないよ』
私も彼を受け止め、背中をそっと撫でる。ここはもう怖い夢の中じゃないよ。皆がいる優しい世界だよって、彼に伝え続けていた。
『……うん。―ここにはおまえがいる』
『うん、わたしはいるよ。いなくならないよ』
『……もう、きえないで』
『うん、きえないよ。ちゃんといるから』
彼は言っていた。彼が見る夢の世界には私がいないと。おかしな話だ。私達はずっと一緒だと。―そう、約束されているのに。
私の服の裾を掴んだままの彼を連れて、窓のカーテンを開いた。朝日が昇る。朝が訪れたのだ。もう大丈夫だよ。
『……また、夜が来るんだ。……いやだ、ねむりたくない。みんなきえてしまうんだ。だれもいなくなる。……おまえも』
『……』
『……またおまえが、いなくなるんだ』
それは夢の中の話でしょう。悪夢の中の私はどうかはわからない。けれど、日常の私はいつだってあなたと一緒だった。本当におかしな話だ。
―いいえ、おかしい事などなかった。それが、彼にとっては『現実』だったんだ。
あの夜からずっと。彼は夢と現実をさまよっている。あの。
―隕石が降ってきた夜から、ずっと。
隕石が夢を見る。そのような話は、大抵の人々は突拍子のないものだと呆れるだろう。馬鹿げていると一蹴されるようなものだ。
それでも。
―彼ら。いや、少なくとも『彼』にとって、それが真実だった。
ありがとうございました。
まだまだ続きます。