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ルフナ 好き 5/17 16:40~

「凄いじゃないか!こんなに早く、あれほどの魔法を成功させるなんてなぁ!」

紹介所を出ると、ハゼットは開口一番にわたしを褒め称えた。まさかあの状況で、ハゼットがわたしの魔法に気付いていたとは思っていなかった。

「え!?気付いてたの??」

「ずっと言いたかったんだが、どうせなら、二人きりになってからと思ってね」

魔法を使ったわたしですら半信半疑だったものを、ハゼットがここまで確信を持って祝福できるのが、もの凄く不思議だった。

「なんで、わたしがやったって分かるの?何も見えなかったでしょ?」

「そういうものじゃないのかい?水撃魔法だろう?あれは見えにくいからね。後で見たら、地面も濡れているようだったから、ルフナがやったんだろうと思ったんだ」

ハゼットらしい、でも仕方のない勘違いだった。それでもハゼットは、わたしが魔法を出したことを微塵も疑っていない感じだった。そこに、もしも信頼のようなものが微かにでもあるなら、わたしは少し自分を誇らしく感じられる。

「嬉しいな~。ありがとう!なんの魔法かの答え合わせは、明日の朝。。。それとも、夕食会の時にしようかなっ」

「それは良い余興になりそうだ。是非、そうしてくれ」

夕食会と口にして、ハゼットの分の報酬を預かったままだったことを思い出した。わたしは内ポケットから、嬉しい重さのある袋を取り出した。

「これ、ハゼットの分ね。4等分なのが、ちょこっと申し訳ないんだけど、なんと!9000リンもあります!」

「凄い額だな!私の1ヶ月の食費分はあるぞ。近頃は夕飯まで、教会で頂く日も多いしなぁ」

命を天秤にかけたと思うと、決して高額とは言えない。それでも、わたし達には大切なお金だった。それに今回は、しっかりとした目的もある。

「これで、明日のお肉が買えるよ!」

「わはは!やっぱり肉が食べたかったんだな?この食いしん坊め」

それはもう、とっても食べたかった。初めは食べられたらいいな、ぐらいのものだった。それがこの巡回依頼の前後から、ムクムクと成長を遂げて、今や、食べなくてはならない、というぐらいにはなっている。

「明日はお肉を食べなきゃならないんだから、絶対に元気じゃなきゃ駄目だよ?ガルシアとヴァレンは、ヘトヘトだったのかもしれないんだけど、ハゼットは大丈夫?」

「ふん、軟弱なやつらだな。私は。。。もちろんヘトヘトさ。雷撃魔法の連発は、なかなか堪えたよ。午前は暑かったしなぁ」

これは聞くまでもなかったかもしれない。今日、一番頑張ったのは、間違いなくハゼットだった。わたしを導き、暑さに耐え、最後には魔獣を倒してしまったのだ。わたしはしっかりと、お礼の気持ちを伝えておいた。


 その後も、今日の思い出をたくさん話した。ハゼットとの会話は、やっぱり面白かった。わたしは、ハゼットとのお喋りの時間が大好きだった。

ハゼットには意外と細かい相談をする機会も多かったし、そのおかげか、わたしの気分に合わせた会話をとても上手にしてくれる。

ハゼットは自分のことを紳士的だなんて言っていたけれど、意地悪さえしなければ、確かにそう言っても良いかもしれない。わたしはまだ恋なんて分からないけれど、ハゼットに関しては、間違いないなく好きだと言えた。

というより、わたしはきっと、教会に集まる皆が大好きなのだ。



 教会が近づいてきた頃、お肉の話につられて、討伐報酬について伝えていなかったことを思い出した。

「そうだ!ハゼットには魔獣の討伐報酬もあるらしいから、明後日ぐらいに紹介所に取りにおいでって、受付のおじさんが言ってたよ」

「まだあるのか!ずいぶん太っ腹なんだな」

先程から話していて、ハゼットが巡回依頼について、初めて受けるどころか、全く知らないというのが不思議だった。ハゼットぐらい強力な魔法を使えれば、冒険者の人や、兵士にさえ声をかけられそうな気がしたからだ。

そこには何か大事な理由があるのだと、何とはなしに察した。ハゼットの格好良い秘密なんてものがあれば、それはちょっと聞いてみたかった。

「ハゼットって、紹介所の巡回依頼受けるの初めてだったんだよね?どうして今までやろうって思わなかったの?」

勇気を出して単刀直入に尋ねてみると、ハゼットは口に手を当てて、瞳に鋭い光を宿した。

「。。。そうだ。それには私の、昔からの、生き方へのこだわりというものが関係してくるね」

やっぱり何か、重要な秘密を話してくれそうな気配がした。わたしは静かに頷いて、真剣な表情を心掛ける。ハゼットも至って真面目な顔のまま、わたしの目を見つめていた。

「私は好きな女性のためになら、命をかけるのだって本望だ!しかし、お金や、冒険そのもののために命をかけるなんてことは、私にはできない。それだけさ。だから、今回は()()なんだ!」

「うーん。。。なるほど。。。ハゼットらしいね」

自分から聞いてみたものの、それは色男と呼ばれる理由のように、わたしには聞こえた。それでもハゼットが、いつになく真剣な表情をして語るからには、本当に大事な話をしているんだというのは、よく分かった。

ハゼットがまだ何か、返事を求めるような目をしているので、わたしは妙な心地がした。

「男の人のこだわりは、大変そうだね」

そういえばあの人のこだわりにも、わたしは付き合いきれる自信がないなぁと思ったりして、何故だか胸が苦しくなった。

しかしここで、ハゼットの目元にきゅっとシワが寄ったかと思うと、急に視線を外されてしまった。

「。。。私の声は、届いていないようだね」

そしてハゼットは、少し横を向いて、寂しそうな声まで出し始めたから驚いた。何か傷つけるようなことを言ってしまったのかと、自分の言葉と態度を振り返った。

「ごめんね?ちょっと前に、ヴァレンのこだわりに付き合わされて、大変だったから。。。」

わたしが謝ると、ハゼットは左手をこちらに向けて、話を遮るみたいにした。わたしの不安はいよいよ深まった。

「。。。明日はご馳走の日だったね?」

「そうだね。。。?」

ハゼットが上を向いて、突然、話を戻した。わたしは、続く会話が全く読めない。ハゼットの表情が知りたくて、下からキョロキョロしていた。

「それなら明日は、ワインでも買ってこよう!ご馳走がルフナの領分なら、ワインを用意するのは私の仕事だ!」

ハゼットはなにやら鼻息荒く、張り切った声を上げた。教会でお酒なんて飲んでいいのかは知らなかったけれど、神官であるハゼットが良いと言うなら大丈夫なはずだった。

「じゃあ。。。そっちはよろしくね。明日は頑張るからっ」

「任せてもらおう。それじゃあ、また明日な」

ハゼットは手を振って、くしゃっとした笑顔で挨拶してくれた。わたしはほっとして、同じように笑顔で手を振り返した。

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