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ルフナ 不意打ち 5/17 魔獣が倒れた後~

 魔獣が動かなくなってから少しの間、わたしは息をするのも忘れて、それを凝視していた。

「すまん!!全く役に立たなかった!」

そんな中でガルシアが、わたしとヴァレンの方へと振り向いて、頭を下げた。その時は、ぽやっとしていたから、つられるみたいに自分も頭を下げてしまった。

「はっはっは!見事な空振りだったな、大男め」

ハゼットが横から、ガルシアを真似た笑い声を上げて茶化した。もうちょっと気遣ってあげた方がいいんじゃないかと、わたしが横目でちらりと確認すると、当のガルシアはなんでもないみたいに、にかっと笑っていた。

「見事な雷撃魔法だな!一度外れた時はどうなるかと思ったが、キッチリ仕留めやがったな」

ガルシアは言うや否や右手を差し出すと、ハゼットもすぐさまそれに応じた。そのまま二人はがっちりと握手すると、歓声を上げてはしゃぎだした。どこか不思議と馬の合う二人なのかもしれない。

ハゼットとひとしきり騒いだ後、ガルシアは再びこちらを向いた。

「あんたのもすごいな!あんなものは、初めて見たぞ?()()()()()()()()?」

わたしもヴァレンのスキルは初めて見たけれど、あんなものとは一体、どれのことだろうと、どきどきしながら身構えた。さっきは皆が魔獣の方を見ていて、こっちを見ている余裕なんて無かったはずだった。

「ただのスキルだ。あんなもの、別に俺が凄いんじゃない」

ヴァレンがわたしの方をちらっと見てから、素っ気ない感じで答えた。

あの魔獣の跳ね返るような動きは、わたしの魔法が炸裂したためなのか、それともヴァレンのスキルによるものなのか、実はわたしも、よく分かっていない。

「やっぱりこっちがヴァレンか!ルフナが適当な紹介をしやがるから、さっきまで分からなかったんだ」

「え?!そうなの?」

そんなに変な紹介をした記憶はないけれど、あの時は緊張していたし、きちんと覚えていなかった。名前ぐらいは、ちゃんと伝えていたはずだと思う。

「まぁ、おかげで面白かったぜ。不思議に思っていたことも、いくつか解決した」

わたしとヴァレンを交互に見ながら、ガルシアは意味深に微笑んだ。他にも何かしただろうかと、わたしは気が気でなかった。


「大丈夫か!?」

そこで左右の草原から、1組ずつ冒険者のパーティーが現れた。彼等は地面に横たわる魔獣を見つけて、驚きの声を口々に上げている。わたしはヴァレンの後ろにこそこそと隠れて、成り行きを見守ることにした。

そうしている内に、魔獣を取り逃がしたパーティーの一人が、火魔法で手早く火を起こすと緑色の狼煙を上げ始めた。どうやらそれが、討伐完了の合図みたいだった。

彼等はその後、魔獣がたった一撃で倒されているのを確認すると、それを囲むようにして喋りだした。

「これは雷撃魔法の跡じゃないか?上手く頭部に当ててある」

「あんな素早く動いてたやつの頭部を、どうやったら当てられるんだ?」

「いや、俺は魔獣が空に、ぶっ飛ばされるのを見たぞ」

そんな輪の中へ、ガルシアがハゼットを引っ張るようにして乱入した。

「こいつがやったんだぜ!惜しくも初撃は外したが、あれを続けざまに2発も放てるのが、また凄いってもんだ」

冒険者達はそれを聞いた途端、ハゼットを揉みくちゃにした。ハゼットは初め、嫌そうな顔をしていたものの、すぐに照れ笑いを見せた。

そこで、わたしの前で黙りこんでいたヴァレンが突然、振り向いたと思うと、じろりとわたしを見下ろした。

「丁度良い。手柄はあいつに全て、押し付けておけ」

ヴァレンは小さな声で呟いて、すいっと視線を前に戻した。それ以上何か尋ねられても、わたし自身、あの時何が起こったのか分からないわけで、その提案には賛成だった。けれどもヴァレンは、わたしがあの時、何かしたと確信している感じだった。

ふと気付けば、さっきまでヴァレンの右腕に装備されていた盾は、いつの間にか外套の下へと仕舞われていた。

「さっきのは、ヴァレンがやったの??」

わたしは、魔獣が跳ね飛んだ理由を確かめたかった。ヴァレンのスキルでどうにかしてくれたなら、それはそれで嬉しい気もする。でも、あの時、わたしの魔法が発動したという感覚だけは確かだった。ただ、わたしの魔法が、魔獣を吹き飛ばすという結果に繋がったのか、そこには自覚も自信もなかった。

「俺のは初めの突進と、最後の不意打ちの水撃魔法を防いだだけだ。感覚で、大体わかる」

ヴァレンの言葉が正直なものなら、わたしの魔法があの魔獣を吹き飛ばしたということになる。興奮が、心の表面をざわざわと撫でた。

「水撃魔法??」

ただ、よく分からない部分も増えてしまった。水撃魔法なんて、いつ、そんなものを受けたのか全然わからなかった。最後の攻撃といえば、魔獣が跳ね飛んできて、押し潰されると思ったあの時ぐらいしか思いつかない。

「ヤツが地面から跳ねた後に、一瞬、間をおいて、周りの地面が弾けただろう?あれは、俺のスキルで受けきれなかった水弾によるものだ」

あの時は全く気が付かなかった。そう言われて、先程までわたし達が立っていた場所を見ると、水しぶきを浴びたように地面が黒くなっているのが分かる。

「全然気付かなかった。。。何かされて、逃げれないな、とは思ったんだけど」

水撃魔法に気付けなかったおかげで、動揺せずに魔法を放てたのかもしれなくて、わたしは自分の鈍さを褒めたくなった。

「本当に危なかったんだ。あれは上空に飛び上がった瞬間に、水撃魔法を発動させたんだろう。ヤツは魔法で攻撃するために、こちらの注意を上空に向けたんだ。実際に俺は、上を見ていた。ガルシアの所まで、少し無理をして"守り"を広げていたから、たまたま防げたに過ぎない」

あの数秒の間に、そんな危険な攻防が繰り広げられていたと思うと改めて恐ろしくなる。やっぱり気付いてなくて良かったと、ふにゃふにゃと身体の力が抜けた。

「だから、おまえの一撃がなければ、どうなっていたか分からん。もちろん"守り"をもう一度発動させていたが、間に合っていたかどうか。もはや確認する術もない」

「じゃあ、わたしは、ちゃんとやれてたんだね。。。」

初めてで上手くいき過ぎだった。緩んだ体に、震えが走った。ハゼットの教えと勇気の腕輪と、自分の多少の鈍感さに、改めて感謝を捧げた。

疑問に思うことはまだあるけれど、答えはどうせ明日分かるのだから、今は別に良かった。わたしの見えない魔法に対する答えは、確証がないだけで、既に自分の中にある。

「良かったぁ。。。役立たずじゃなくって」

一人言みたいに言って、その場にへたり込んだ。今はとりあえず、何も考えずに、ぼーっとしたかった。あの短いけれど恐ろしい時間は、わたしの中の勇気や乏しい知力を、根こそぎ使い果たすのに十分なものだった。

「しかし、本当に凄いな。本当はこっそり、魔法の練習をしていたんじゃないのか?」

気を抜いていると、ヴァレンが突然、真顔でわたしを褒めだした。こんな素直な称賛は、ヴァレンと出会ってから初めてだった。

「し、してないよ!多分、たまたま上手くいっただけなの!」

顔が熱く、赤くなるのが分かったから、わたしはとっさに後ろを向いた。

褒めて欲しかったのに、いざ本気で褒められたら、とっても恥ずかしかった。

顔色が早く戻るように、心臓を落ち着かせるように、わたしは何度も深呼吸を繰り返した。


 けれどもそこで、熱くなったわたしの頭を、何かが優しく撫でるみたいに、そっと叩いた。

「上手くいったんだ。喜ぶといい」

思いっきり吸い込んでいた息が、行き場を失って爆発した。かと思った。それぐらい胸が苦しかった。

不意打ちはずるい。そんなことを思う、今日のわたしはやっぱり変だ。


 わたしは、吸い込んだ息を利用して、自分に逃げ場を作ることにした。

「皆行くよ!!まだ依頼の途中なんだから!」

勢いよく立ち上がって、大将らしく、大声で皆に檄を飛ばす。そうして、真っ赤な顔を見られないように、後ろも見ないで歩き出した。

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