ルフナ 身支度 5/17 日の出~
昨日の夜はどうなることかと思ったけれど、なんとか今日も、紹介所に行くことを許された。巡回依頼という言葉は一度も出さなかったものの、三人は間違いなく察していたと思う。
昨日のハゼットは凄く協力的で、反対する姉さんを一緒に説得してくれた。でも、意外だったのはアレンさんだ。姉さんと同じように反対すると思っていたけれど、アレンさんは不思議と何も言わなかった。結局、ハゼットの"命懸けで守る"という言葉に、姉さんが折れる形でその話は終わった。魔法のことも、そのまま尻切れとんぼになってしまった。
あとは、わたしがヴァレンを説得できるかに懸かっている。昨日はハゼットに助けてもらったから、今日こそは自分でなんとかしようと、自分の頬をぴしゃりと叩いた。
ステータスを確認すると、調整中の文字と、残り24時間の表示がされていた。以前の画面ではスキルの表示までおかしかった。能力値の異常を考えれば、表示がおかしいだけで、わたしにも何らかのスキルが備わっている可能性は、十分にあった。
だから魔法についても、巡回の最中にもう一度、ハゼットに尋ねてみるつもりだった。身を守る術があるなら、その可能性を捨てるわけにはいかない。
あとは、わたしの勇気次第だ。
だからわたしは、勇気の腕輪を装備した。
それを右手に巻いても、別に何が変わるわけでもない。それでも、わたしの気持ちは変わるのだ。
勇気の指輪は、勇気の腕輪として新たに生まれ変わった。それに今日からは、3色の飾り紐を2本に増やした。これでひとつが切れてしまったとしても、落とす心配はなくなった。手首から外す時は、日記を縛っている紐と一緒に括りつけておくことに決めた。これでどこへ置いたのかと迷う心配もないはずだった。
右手を水槽の前にかざす。
「ピチちゃん、見てよこれ!似合ってるかな?」
ピチちゃんはお洒落な服を着てるから、きっとこういう装飾にも敏感なはずだった。彼女は朝からふりふりと、挨拶するように泳いでいる。内気でも礼儀正しいピチちゃんの隣で、コピ君は忙しそうに泳いでいた。
ふたりに、ぱらぱらとエサを落としてから、ベッドの下から水の入った小さな桶を取り出した。布を湿らせて、顔や身体の気になる部分を丁寧に拭う。これはもう、寝る前と起きた後の習慣になっていた。向こうの世界では違ったのだろうけれど、それはもうよく分からない。気にもならない。今はもう、エレスが水上都市に戻ったら、思いっきり水に飛び込みたいという渇望が、心の中にあるだけだ。泳げるかどうかは、その時に分かるだろう。
服を新しくして、最後にこの赤髪をしっかりと、櫛でとく。今日こそ結んでみようかとも思ったけれど、わたしは簡単なひとつ結びしか知らなかった。少し色んな風に巻いたり、結んだりしてみてから、結局そのままにしておいた。
目をつむって、一度だけ深呼吸をしてから、両手で勢いをつけて立ち上がる。今日も、色んな初めてが待っている。
ドアを開けて、気合いを込めてまずは一歩、外に踏み出した。




