七話 派閥
……世界、と来たか。国内を超えて、一気に。
「具体的には、巨大衝突――二枚の《月鏡》が対消滅した時、月のみに作用する強力な引力が発生するのよ。《月鏡》の引力に引き寄せられた月は、約一時間で地球に衝突する――それでこの星が滅ぶ、ってことね」
緋花里さんが補足説明してくれたことで、先程の言葉がツクヨミの分かりづらい冗談であるという可能性もなくなった。
……世界が、滅ぶ。《月鏡》がこの世に同時に二つある状態がこのまま続くと、いずれ。
輝夜がこの世界にいる限り――
――――。
「…………はは」
思わず、笑みがこぼれた。
思考は海より浮き上がる。
頭が妙に冷えていく。
もしかして俺は今、悩み始めていたのか。動揺していたのか。
だとしたら……ああ、ダメだな。
そんな時間はない。
俺はゆっくりと目を閉じる。
俺がすべきこと。俺がしたいこと。
やるべきことを思い出す。
俺は……中史時はどんな人間だ? どんな人生を歩んで、今ここにいる?
悩む必要はない。悔いることもない。
答えは既に決まっている。
「それは……」「流石に予想してなかったね」
歴戦の猛者である中史の皆さまも、いくらなんでも驚いている様子。それでも錯乱して叫び出したり、意固地になって信じようとしなかったりする奴がいないのは、流石といったところだ。
もうほとんどの中史が、世界滅亡という事実を受け入れているようだった。
「へぇ。デカい手見上げじゃねえの、中史時」
「うっ……」
往人がからかうように俺の行動をあげつらう。
元はと言えば、俺が輝夜を連れて来たからこうなったのだ。
それに関しては俺は何も言い返すことができず、往人から目を背けた。
「ねえトキ、あいつ殺していい? ボクのトキをバカにしたんだけど」
「ものまねタレントみたいな軽いノリでそんなこと言うな、多分ルリより強いから無理だ、そもそも俺はお前のものじゃない」
「忙しそうね、トキ」
明るい笑顔の母さんにとてもイラついた。
「まぁ、そういうことだ」
もう一度、すべての中史に話しかけるように声を張り、父さんが――当代の中史当主が告げる。
「月見里輝夜が持つ《月鏡》に、どう対処するか。それが今回の本題だ」
にわかに、場に緊張が走るのを感じる。
皆一様に思考を巡らせ、あらゆる可能性を模索している。
中史にとり、危機とは日常だ。自分の身に危険が及んだ際、その危機に対してどういう姿勢で臨むかといういわば「覚悟」を、それぞれがそれなりに持っているはずだ。
これだけいれば、当然様々な意見があり――
「どうするかって、んなの一つしかねえだろ」
中には、過激な主張もあってしかるべきだ。
「月見里輝夜をこの世界から追放する。それで済む話だ」
さっさルリをキレさせた、行方家の往人が言う。
静かに頷く者、顔を顰める者、反応は大きくこの二つに分かれる。それだけでおおよそ、誰がどういう考えを持っているのかが把握できる。
それを見た上で、俺の感想は……まあそうだろうな、というものだ。
単純に考えるなら、それが一番手っ取り早いし被害も少ない。
輝夜がいるから、この世界が滅ぶ。ならば輝夜をこの世界から追い出せばいい。それだけの簡単な話だ。
そもそもが異世界人の輝夜だ。別に全く知らない異国へ行けという訳でもない、ただ自分の世界へ帰れということなのだから、その案は正しいのだろう。
事実、中史でもほとんどの人間が往人の案に賛同しているようだ。
だがもちろん、それを良しとしない者もいる。
「わたくしは、その案には強く反対しまする」
声を上げたのは、神島家の若き当主、椛だ。
優し気な垂れ目、けれどとても鋭く強い意思の込められた目で、彼女は往人の意見に真っ向から反対していた。
「……そりゃどういうことだ、神島」
当然、往人は椛に食って掛かった。
それに椛は、落ち着いて対応する。
「どうもこうもありませぬ。一人の少女を世界の敵のごとく無下に扱う其方の意見を、わたくしが認めることはできぬと。ただそれだけのこと」
「それで世界が滅ぶのを待つのか? 優秀な平和主義者だな」
「月見里輝夜が守る価値無き悪人ならば、其方の主張も通ろうが……わたくしはこの目で、かの姫をしかと見た上で物を言っておる、その意味をよくよく考えよ、行方往人」
椛の剣幕に、往人が一瞬ひるんだのを俺は見逃さなかった。
あの小さい体で家を背負っている理由を、椛はこの場の全員に知らしめた形になった。
「……ま、俺も直接その姫さまを見たわけじゃねえ。だからこそ、今はあくまで言わせてもらうんだぜ? 月見里輝夜は追放すべきだってな」
対する往人も、大まかにはそのスタンスを変えてはこなかった。明確にこの二人は対立する形になったな。
「くだらない感情論だとか、そんな反論はしないんだな? 往人」
せっかく事態が収まりそうだったのに……父さんが往人に茶々を入れる。
「……馬鹿言え。んなことを無遠慮に言えるようなら、俺は今この場に来てねえんだよ」
父さんの言うように、『中史』を知らない人間からしたら、今の椛の意見はあまりに甘い、くだらない感情論に思えてしまうかもしれない。なぜ今の場面で、往人が負けたのか理解できないかもしれない。かわいそうだとか人の命は平等だとか、そんな小学校の道徳の時間に習うようなつまらない議論をこの場でするな、と憤るかもしれない。
これが国会や裁判所ならば、往人の言い分が通っていただろう。
だが、ここは『月の間』だ。中史が集う中史家本邸だ。
そんな正しいだけの意見は通らない。
中史は法律では動かない。
中史はどこまでいっても魔術師なのだ。
だから俺たちは、人の想いを何よりも重要視する。
人の想い、人の願い、人の祈り。法律や意見の妥当性よりも、これらが勝る。
たとえ国を敵に回すことになろうと、一人の人間が真摯に願うならば、中史はそれに応えるだろう。
くだらない理想論を、理想論で終わらせない。
小学校の道徳の授業を、絵空事で終わらせない。
社会は法律と金と権力で動くのだというまともな大人は、この場には必要ない。
そもそも中史は国家に帰属しない。俺たちが絶対者と仰ぐ人物は政府にはいないからだ。
ここはそういう場だ。中史とは、そういう存在だ。
それをよく分かっていたから、今、往人は引いたのだ。
月見里輝夜がどんな人間か知らない自分より、彼女を実際に目にした上で反対する、椛の強い意志を尊重して。
「ほーほー、良い心がけだ。お前みたいなチンピラタイプはそういうこと言いそうなもんなのにな? 勇の教育の賜物か、それとも本人の素質か」
「半々じゃね」
行方勇が短く呟き、
「誰がチンピラだ誰が」
往人がたいそう不服そうに零していた。
「否定すんのはいいんだけどさぁ、椛ちゃん。それで実際にはどうしたいわけよ。他人のこと否定すんなら、自分が代案出さなきゃじゃね?」
その声の主に、俺は目を向ける。
いかにも遊んでいそうな金髪に、シルバーネックレスをした若い男だ。
行方傍流長月家の、長月傾。
言動通りの性格の男だが……腐っても中史だ。軽薄なだけではない、目ざといやつだ。
「《月鏡》にまつわる情報の少なさゆえ、確かなことは言えませぬが……その滅亡とやらの期限までに別の解決策を……例えばかの姫と《月鏡》を分離させる術などを探す……そのようなところが妥当な落としどころではないかえ」
問題はあくまで《月鏡》。それさえなくなれば、輝夜が異世界に帰る必要もなくなるのだ。椛の言う通り、妥当な案だろう。
「無論、わたくしとてこの世の終わりを願っているわけではありませぬよって……あらゆる手段を講じた後、それでもどうすることができぬと分かった、その時わたくしは口を噤みましょう」
「最後まで抗う……かぐや姫を帰すのは、万策尽きてからでも遅くないってわけね」
「ええ……分かっていただけたか」
「是非は置いとくとして、主張は理解した。そんなとこだね」
何もすぐに世界が滅ぶというわけではないのだから、慎重すぎるくらいでもいいだろうということだ。
「たださ、これって過去に例のないことなわけじゃん? 今こうしてる間にも、ひょっとすると《月鏡》がダブってる影響がどっかで出てるかもしんないんだけど……そこんとこは無視するってことでOK?」
是非は置いておくとか言っておいて、しっかりと問題点を指摘する傾を……
「ちょっと傾くん、そーゆー言い方はないでしょ! ただの意地悪だよ」
同じく行方家を本流とする戌徳院奈々花がたしなめる。
慣れたものなのか、傾はその言を涼しい顔で受け流し……
「実際どうなの、始祖様?」
神格《月鏡》の持ち主であるツクヨミに訊ねる。
『……分からぬ』
珍しく意気消沈した声色で……すまなそうに、幼女神は言う。
『そも同一の神格が二つ存在することを、此方たちは想定してないから。……でも。分からないけど、あやめも分かぬが、此は二度目なり。先度にては――ひと月と半カ月。その間、世界にしさいなかりしかば、おほよそ《月鏡》重なりてより二月の猶予ありと……思う』
この事には前例があって――その時は一カ月半なんともなかったから、だいたい二か月くらいはこのままでも平気だろう、ということだ。
「一か月半か……」
俺は呟く。
結局、未知であることには変わりなかった。
「じゃ、やっぱりオレは椛ちゃんの言い分には賛成できないかな」
「然様か」
「うん、だって……」
「しつけーぞ長月。月読が分かんねぇって言ったことをいつまでも憶測でウダウダ語ってんじゃねえ。年下の女虐めて遊ぶのは余所でやれよ」
反論できないことをどこまでも追及する傾の姿勢が気に食わなかったのか、往人が口を出す。
「ありゃりゃ。チンピラに目つけられちゃった」
「なんで二人とも仲良くできないかなー……」
まあ、見るからに馬が合わなそうだしな。少なくとも奈々花さんが気にすることではないだろう。
往人はああ言っていたが、傾の気持ちもよく分かる。日本の安全を考えれば、危険物は即座にどこか遠い場所に捨て去るべきだろう。それを多分大丈夫という曖昧な自信から爆発限界まで放置しておくというのは、あまりに肝が据わりすぎだ。
「――あの。そもそもこういった問題は、本人の意思が大事なのではないですか」
椛と傾の話が一段落したのを見て手を挙げたのは、桜狼まほろ。芦原高校生徒会の会長を務める、俺やヒカリの同級生で……なぜか俺のことを、異様に嫌っている女子だ。そんなに話したこともないはずなのにな。
義務感と責任感だけで生きているような生真面目なまほろは、こう言った。
「こちらでどれだけ議論を深めて、例えば彼女をこの世界に残す方針で決定したとして……当の月見里輝夜に元の世界へ帰る意思があるならば、それでまるっと解決する話です。何のための会議だったのかということにはならないですか」
まほろの意見は、普通に考えたら尤もなものだ。輝夜の問題を本人抜きに議論するのは不毛、そもそも無意味で滑稽なものだというのは、正しいように思える。
「芦原高校の生徒会・本部役員会会長として、そして何より『中史』として――直近一か月の彼女の様子を見ていましたが……月見里輝夜は《月鏡》の存在はおろか、自身が魔術師であるという自覚すらあるかどうか危うい、赤子のような生徒です。その部分も含め、まずは本人に自身の置かれている状況を話すべきではないですか」
きっぱりとした言葉。どこまでもまっすぐで、裏表のない言葉が『月の間』に行き渡り、
「ダメだ」
すぐさま俺が、口を開く。中史当主の息子で当事者の一人でもある俺が発言したということで、百人近い中史の視線が一斉に俺へと集まる。
自分の意見を雑に拒否されたまほろは、ムッとした表情で……さらにその相手が俺だと分かると、露骨に嫌そうに眉を顰めて、言う。……ああ、どうしても俺と彼女は喧嘩しなくちゃいけないようになってるみたいだな。残念なことに。
「なんですか、中史。なにが不満なのですか」
「《月鏡》とそれにまつわる事情を、輝夜に伝えることは許さない」
「なぜですか」
鋭い視線が俺を射抜く。
言うべきことはあった。しかし言えることは少なかった。俺はその少ない選択肢の中から言葉を選ぶ。
「理由はたった今自分で言ったようなものだ。輝夜は自分が魔術師である自覚がない、ほとんど一般人みたいなものだ、と。なら、そんな一般人に《月鏡》なんて重荷を背負わせることは、俺が中史として許可しない」
言葉は口を出た瞬間から上滑りして意味を為さない。これは当然本音ではない。
しかしまほろ相手にはこう言うしかないのだ。それはもしかしたら、彼女が公明正大であるためにも。
「それに、お前は輝夜をずっと見てきたと言ったが……それを根拠にするなら、俺に分があるぞ。あいつは自分で望んでこの世界に来た。元の世界に帰りたがるとは思えない」
それは一つ真実だった。トキの世界に連れて行けと、真剣に頼み込んできたあいつの想いは偽りではないだろう。世界が滅ぶから流離世界に帰れと言われたら、優しい輝夜は帰還を選択するかもしれない。しかしそれは決して本意ではないはずだし、そう確信できるだけの付き合いをしてきたつもりだった。
「……なるほど。彼女をいたずらに悩ませるわけにはいかないと、そう言いたいのですか」
「そう思ってくれて構わない」
まほろは目を閉じ逡巡する。しかしそれはやはり逡巡でしかなかった。自己の定位置を見つけている人間は迷わない。いかなる状況に陥ろうと悩まない。彼女は俺と同じ人種なのだ。
「それでもこちらは、本人に伝えるべきだと考えます」
「今の説明で、なにか納得できなかったか。それとも、お前だけが持つ情報でもあって、それを根拠にしているのか?」
「いえ、もっと簡単な理屈です。迷うまでもないです」
まほろは一息に言った。
「――あなたを信用できない」
それは決定的だった。どうしようもない深い溝だった。
「…………」
元より不利な議論だった。これ以上、言葉での説得は難しいだろう。言葉を重視する中史ならばこそ、話し合いでどうにかしたかったが……仕方ない。手段は選んでいられない。言葉で論破された人間がすることなんてそう多くない。
これより先は、闘争だ――……
「今の言葉を取り下げてください」
――すべてが手遅れになる前に、俺とまほろの間に割り込む声があった。
「……?」
まほろが、不思議そうな顔をする。突然のことに、怒ることも忘れているようだ。
かくいう俺も、予想外だった。こいつがこのタイミングで、議論に参加してくるなんて。
「中史時を信用できないと言った今の言葉を取り下げてください。桜狼まほろ」
「……驚きました。あなたは明確に誰かに与することはない人だと思っていたのです……深雪」
人形のような無表情で淡々と話すのは、瀧椿深雪。会議が始まる前、俺を『月の間』まで呼んできた女だ。
「いつから中史と仲良しこよしになっていたのですか」
「仲良しこよし? いいえ違います」
「いやそこは否定しなくてもいいだろ……」
たしかにヒカリなんかに比べたら距離はあるが、別にわざわざ否定しなくても……と、思っていたのだが。
「否定します。私はあなたの先刻の言葉に従い、この場で発言するべきだと判断しました。これは妥当性の話です。よって私はあなたと仲良しこよしではありません」
あくまでも、仲は良くないと言われちゃったよ。残念だ。
でも、それで分かった。たしかに言ったな、会議が始まる前に。
「ねーお姉ちゃん、仲良しこよしの『こよし』ってどーゆー意味?」「こよしは『小好し』、言葉の調子を整えるためのもので、意味は特にありませぬ」「えへー、物知りなお姉ちゃん好きー」「…………っ」
「なんですか、中史の言葉とは。――中史は照れてる椛ちゃんに見とれてないでこっち向いてくださいっ!」
「ごめんなさい」
めっちゃ怒鳴られた。
深雪は言う。
「月読会議が始まる前に私は中史時に月見里輝夜を信用できないと言いました。その時中史時は『絶対に』信用することができると言いました」
深雪の言葉に、『月の間』がざわつく。それも仕方がない。俺が、赤の他人である輝夜に対してその言葉を使ったんだからな。
――中史にとって、絶対は絶対だ。絶対の自信がないときに「絶対」は、絶対使ってはならない。
中史は言葉を重んじる。中史にとって世界とは言葉なのだ。だから、メフィとの別れの時にも言ったが……中史にとっての『絶対』は、絶対。なにがあろうと、血反吐を吐いてでも、世界すら敵に回しても、それを叶えてみせるという意思表明の言葉だ。
「それは……」
流石のまほろも狼狽えている。
中史において、俺のあの言葉は世界に存在するどんな理論より強制力を持つ。それを覆すのは容易ではないだろう。
「私は中史時の言葉を信じます。あなたはどうですか。桜狼まほろ」
「……っ」
ギリ、と歯ぎしりの音を聞いた気がした。
拳を握り締めたまほろはゆっくりと俺に視線を合わして、
「あなたは……」
その曇りない瞳で俺の射るのだ。
そこに映るのは、悔恨? 憤怒? 嫉妬? 憐憫? ――悲哀?
「……あなたは……どうして、そこまで……!」
――涙?
ここで俺は初めて困惑した。ある一つの異変。
どういうわけか、まほろの胸中に過る感情が上手く読み取れなかったのだ。こいつ、今いったい何を考えてる? それが全く分からない。それが俺を恐怖させる。なにを考えているか分からない人間というのは怖いものだ。さっきまではそうでもなかったんだが……変なこともあるものだ。やはり俺とこいつは馬が合わない。
「もう……まほろから言うことは、何もありません」
それきりまほろは口を噤んでしまった。
「難儀なもんだなぁ」
流さんは俯いたまま正座する娘と俺を交互に見比べてから、一言、そう零した。
その何とも言えぬ雰囲気を……
「んじゃ、話が一段落したところでもっかいこっち注もーく」
父さんのアホ丸出しの声がぶち壊した。
あちこちから溜息が聞こえてくるのは、長時間の会議による疲れのせいだと思いたい。
しかし父さんが注目と言ったらそれはまあまあ大事なことなので、みんな渋々父さんに視線をやっている。
「今こうしてちょろっと話してもらったことで分かったことがあるな? この場にいる全中史の中で、《月鏡》に対する姿勢は大きく二分されている」
衆目を集めながら、父さんはおもむろに人差し指を立てる。
「一つは、月見里輝夜ごと《月鏡》をこの世界から切り取ろうという、『剪定』派。まあ安全面を考えれば妥当な意見だな」
二本目の指を立てて、また言う。
「そしてもう一つが、あくまでも彼女をこの世界に残したまま、《月鏡》のみをどうにかしようという、『宿存』派。概ねこの二つの派閥に分けられる。というか、分かれろ。じゃないと俺が統率取りづらくて面倒だ」
本音は最後まで隠しておくもんだぞ。
「今から家ごとに、どちらの派閥に所属するか話合って決めてほしい。多数決をとり、中史としてはその結果で動くことにする。よぉく考えるんだぞ」
剪定派と宿存派、どちらか選べ。
父さんが憎たらしい笑顔で言い終わると、『月の間』は喧噪に包まれた。




