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二十八話 失敗ばかりの私は、今

 どうして私は、勇者様に杖を向けているんでしょう。


「《水球弾(フロー)》」


 どうして私は、大切な人を、裏切ってしまったんでしょう。


「《呪々反射鏡(まそみかがみ)》」


 人の道に悖る行為だと、分かっていながら。


「《風刃(レバ)》、《風刃(レバ)》……《竜昇巻(スラド)》」


 揺れる視界を介して、ただ機械的に魔法を放ちます。


「《爆熱噴炎星(ガデル・デズヘルム)》」


 ミッドナイト卿が籠手を掲げると、溶岩のように赤い魔法陣が8つ浮かび上がった。

 私の魔法と共に、火竜のごとき噴炎が周囲の水を蒸発させながら、勇者様に迫りますが……


「《呪々反射鏡(まそみかがみ)》」


 それらもすべて、勇者様の反射鏡によって防がれました。


「……っ」


 もう、決心はついたはずなのに。

 おばあちゃんを治すんだと、心に誓ったのに。

 そのためにミッドナイト卿に味方するのだと、自分に言い聞かせたというのに。


 ……どうして……


「《月降(つきおろし)》」


 どうして、こんなにも心が痛むのか。


「《竜昇巻(スラド)》」


 心臓を抉られたような苦痛が、絶え間なく襲うのか。


「《爆熱噴炎星(ガデル・デズヘルム)》」


 勇者様の《月降(つきおろし)》は、竜巻と噴炎を完全にかき消し――


 その余波が、私のところまで飛んできました。


「――っ!」


 光の刃を見据えながら、杖を構えて、思います。

 命の危機に瀕したことで、実感が沸きました。


 今、私は勇者様の『敵』なんだ、と。


 魔物や賊と同じ、勇者に倒されるべき悪なんだ、と。


 野を駆け、空を翔る魔物と私が、同じだなんて……


(…………そんなの……)


 ……いや、です……


 やですよ……勇者様……


 こんなことまでして、勇者様の命を狙った後で、遅すぎることだとは、分かっています。


 でも――


 それでも――


 やっぱり私は……あなたの隣に――


「――っ!」


 それすらもはや叶わぬ夢なのだと、知りながら。


「――《水渦極海砲(ノウル・ナヴェレスト)》ッ‼」


 混然一体の上級魔法を放った私は、地に膝をついてしまいました。



   ☾中史 時☽



「……今のは、上級魔法だよな」


 召喚士さんの《水渦極海砲(ノウル・ナヴェレスト)》を打ち消して、俺は彼女に歩み寄る。


 肩で息をする召喚士さんは本当に全力を出し切ったのか、杖を拾い直す余裕もないようだ。両手を地面についたまま、動かない。


「これはこれは……想像以上に出来損ないの召喚士でした」


 ことの顛末を見ていたクラインが、嘲るように言う。


 ――――完成だ。


「まあいいでしょう。使えない召喚士が一人減った程度で、私の完璧な作戦は破れな――――いあああああああああああぁぁぁぁっ!!!」


 弁舌を振るっていたクラインが、突如なにかの衝撃を受け、吹き飛ばされる。


「ぶっ、がはっ、ぼへえ、ぐえっ」


 湖中をゴロゴロと転がり、ボロ雑巾のように泥まみれになった。


「…………」


 俺がその様子を睥睨すると、ボロ雑巾はふらつきつつも何とか立ち上がる。

 そして余裕な表情を崩さぬまま、俺に言う。


「い……一体何をしたのかは知りませんが、言ったはずです!」


 水中に泡ができるほど勢いよく左手を掲げたクラインが、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。


「この籠手がある限り、私に魔法は効かない………………………………ない…………ない⁉」


 驚愕するクラインの左手には、籠手などついていなかった。

 先程の衝撃に耐えられず、壊れてしまったのだ。


「な…………なぜ……どうしてです、魔法を吸収し、無効化する私の籠手が壊れるなど…………!」


「お前は少し黙ってろ」


 言いながら、紺青の魔術式を構築し、魔力を流し込む。


「ふ――ふざけ――――ぎゃああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっっっ………………」


 《青海波(せいがいは)》が奴を襲う。

 紺青の激流がどっと押し寄せ、湖底の砂礫や泥共々クラインを押し流していった。


「セルキー」


「え……? は、はいっ」


「あいつに《人魚泳法(ローレライ)》を掛けといてくれ。メトロの魔力供給が絶たれた今、あのままだと溺死する」


 コクリと頷いたセルキーが、珊瑚の下敷きになったクラインに魔法陣を描いていく。


 その様子を呆然と見ていた召喚士さんが、口を開いた。


「ゆ……勇者様……」


 この世の絶望を一身に受けたような表情の彼女が、上目遣いで俺を見る。

 俺に向けられた深紅の瞳は、恐怖の色で染め上げられていた。


 ――次は私の番?


 とでも言いたげだ。

 

 ゆっくりと口を開き、俺は説明する。


「……《月降(つきおろし)》に、透明化の魔術《八重霞(やえがすみ)》を重ね掛けした不可視の刃、《無月降(つきおろし)》だ」


「………………へ……?」


 ひとりでに吹き飛んだかのように見えたクラインだが、実は俺の《無月降(つきおろし)》を食らっていたのだ。


「やっと()()()()、魔術に集中できるようになったからな。魔力吸収だっていうなら、一度に吸収できる限界以上の魔力を叩き込んでやれば問題ない」


 俺が籠手を破壊できていなかったのは、それがとある魔術式を御魂内で作る片手間に行使していたもの、つまり「ながら作業」だったからだ。


 普通に魔術を打てば、あの程度の籠手を壊すのはそう難しいことじゃない。


「あ…………あの……」


 心底困惑した様子の召喚士さん。

 何を言っているのか理解できない、という顔だ。


「なんだ? 目の前で何が起こってるか分からなかったから、俺に聞こうとしてたんじゃないのか?」


「い…………いえ……私は……」


「…………」


 今にも泣きそうな顔で言葉を発する彼女に、耐えられなくなった俺は……

 片膝を立て、召喚士さんと対面する。


「お前がさっき使った《水渦極海砲(ノウル・ナヴェレスト)》だけどな」


「……っ!」


 その魔法の名を聞いた瞬間、召喚士さんの表情が悲痛に歪む。

 裏切り行為を責められる、と。


 俺は言葉を続ける。


「……あれだけの魔力量があれば、メーテルリンクの病気を治すことができる」


「………………え……?」


 召喚士さんが、ゆっくりと頭を上げる。


 揺れる瞳で、俺を見据えている。


「出会ったばかりのお前じゃ、到底届かなかった領域だ。今のお前なら、祖母の病気を治せる」


「……………な、なんで………」


 状況が呑み込めていないのか、言葉の意味が分かっていないのか。

 眦に浮かんだ涙をきらめかせて、召喚士さんが問うてくる。


「受け取れ」


 俺は召喚士さんの額に人差し指を当て、魔力を流し込む。


「こ、れは…………」


 召喚士さんが目を見開いて、自らに流し込まれた魔術式を解析している。


「メーテルリンクの病を治す、治癒魔術だ。さっき完成したばかりのな」


 俺はメーテルリンクと出会ってからこっち、あの病を治すための治癒魔術の開発に明け暮れていた。昨日なんかは徹夜までして、三分前にやっと完成させたものだ。


「ど……どうして……」


 ぽろ、ぽろ。

 水中だというのに、召喚士さんの頬に涙が伝う。


「……だって……私は、勇者様を…………なのに、なんで……」


「よかったな。これでメーテルリンクを治せるぞ」


 今日までの努力と鍛錬によって、召喚士さんは当初とは比べ物にならないほどの魔力量を身に着けた。

 元々魔力の変換効率はよかった彼女のことだ。これだけの魔力量があれば、余裕を持って治癒魔術を使うことができるだろう。


「…………なんで……!」


 その事実を聞いた彼女は、しかし……


 ぽろ、ぽろ、と。

 流れる涙も気にせず、俺の行動を問い質す。


「なんで泣くんだよ。嬉し涙か?」


「だって……勇者様は、ずっと私のために……! なのに、私はそれを利用して……裏切って……っ!!」


 自分が許せない、と召喚士さんは哭く。


 確かに彼女の行ったことは、客観的に見れば恩を仇で売るようなことなのかもしれない。

 ……だが。


「お前はこういうところで頭が固いんだよな……。ほら、顔上げろよ」


 小さくため息をついてから、召喚士さんの頭をぽんぽんと優しく撫でる。


 俺を見上げる召喚士さんの目元は赤く、腫れぼったくなっていた。


「え……?」


「お前ひとりが裏切った程度で、なにか状況が悪変するような……その程度の存在だったのか? 勇者ってのは」


「なにを……」


「輝夜もセルキーも、お前も無傷。クラインは結局何もできずにボロ雑巾だ。……これがなにか取り返しのつかないピンチな状況にでも見えるのか?」


「……でもっ! ……たくさん、悩んだんですよ……。勇者様と、おばあちゃん、どちらかしか選べない板挟みの状態で……それで最後はミッドナイト卿に協力してっ、勇者様を、裏切ったんですよ‼」


「悪いのは、あそこで珊瑚の下敷きになってるクラインだろ」


「それでも結局、最後は私の意思で勇者様に杖を向けたんですっ! それは事実で……許されないことなんですよ! 未来永劫、恨まれて然るべき行為なんです、裏切りというのは!」


 状況ではない、と。

 その行為自体が許されざるものなのだと、彼女は言う。


「だからもういいんです! 私なんて許してしまったら、勇者様まで背負う必要のない罪を負うことになります! 私は、許されちゃいけなんですよ! 私を背信者だと、見捨ててくれなきゃ、勇者様は……!」


 己の背理を許せぬ、と。


「それだって両親を思ってのことなんだろ? 肉親と、最近知り合ったばかりの友人。この二者なら前者を選ぶのが、正常な人間じゃないのか」


「……勇者様は、優しいから‼ そう言うかもしれませんけど――」


「勘違いするな。何もこれは、お前を元気づけるための方便じゃない。悪いが同じ立場だったら、俺だってお前より家族を優先する。だから」


 聞き分けの悪い子供に、噛んで含むように説明する。


「ダメなんですよ、私は――」


「――よく一人で頑張ったな、メフィス・フェレスト」


「あ…………え」


 間の抜けた顔をする、召喚士さん――もとい、メフィ。


「私の、名前………………なんで……」


 メフィが、ぽかんとした顔で訊ねる。


 その涙を拭ってやりつつ、俺は二週間ほど前を回顧する。

 メーテルリンクとの別れ際。俺は一つの質問をした。


 ――『召喚士さんの名前って、なんていうんですか?』


 ――『ん、え、はぁ? とうとう耳までおかしくなったか、儂は?』


 ものすごく呆れられながらも、最終的には教えてくれた。


 ――『あの子の名前は、メフィ。メフィス・フェレストだよ。女の名前くらい覚えときなさい、英雄ならね』


 メフィ。それが、目の前で泣いている召喚士の名前だった。


 ずっと職業名で呼んでた俺だが……これからはちゃんと、メフィ、と。

 そう、名前で呼ぶようにしよう。


「だからもう泣くなよ、メフィ」


 聞き分けの悪い子供に、噛んで含むように説明する。


 メフィが召喚士として、俺を呼びだそうとしたのも。

 勇者の背信者として、議会に加担したのも。

 日夜魔術の研鑽を積んでいたのも……畢竟、メーテルリンクのためだ。


「……ゆ」


 だというのなら、そんな有仁の人間を、誰が責められよう?


「ゆうしゃ、さまは…………許して、くれるんですか……?」


「許すもなにもあるか。寧ろ、お前を見習いたいくらいだぞ。俺はお前ほど家族のためを思って行動したことはない。それは誇るべきことだ」


 そう……むしろ褒められるべきことだと、俺は思う。

 俺に許す許さないの裁量権など、そも与えられていないのだ。


「だから泣いてないで、喜べよ、メフィ」


「う……あ……」


 じゃり、とメフィの両手が砂利を握った。無意識に力が入ったのだろう。

 そして、


「うう……うあああああああ!」


 大号泣しながら……勢いよく、抱き着いてきた。


「お、おいメフィ……」


「あああああああああ!」


 俺が流離世界に召喚された時にも、同様のことをされたが……

 今回は、あの時よりもより密着した状態だ。首に回された腕の力は強く、遠慮もなくなって、全体重をかけているようにさえ感じる。押し倒されないように受け止めるので、精一杯だ。


「よかった、よかったですよゆうしゃさまあ……」


 冷たい水の中だというのに……いや、水中だからこそ、メフィのぬくもりが全身から感じられる。


「ごめんなさい勇者様……許さないでなんて言っておいて、ホントはやっぱり、許してほしかった……!」


 震える手で俺の肩を、ほとんど爪を立てるように抱きしめるメフィ。


「だから泣くなって……」


「だって、どうしても、勇者様に嫌われたくなくて……私は!」


 さらに強く、ぎゅっと俺を抱きしめる力を増すメフィ。


「ほんとうに、ほんとうに許してくれるんですねっ、今更取り消しだなんて、なしですよ!」


 必死な声色で、鬼気迫った声音で確認してくるので……


「何回も言ってるだろ。許す許さない以前に、お前は……」


「はい、はいっ!」


 返事をしたメフィは、飛び跳ねんばかりの勢いで俺に体重をかけてから、俺から手を放し。


「……ありがとうございます、勇者様!」


 これまで見せた中で一番の笑みを浮かべて、そう言った。



   ☾メフィス・フェレスト☽



 丁度、その時です。


「が……はあっ……」


 山積みになった珊瑚の下から、這いつくばるようにして、ある人物が出てきました。

 ミッドナイト卿です。


「や……やってくれましたね……ナカシ卿ォ……!」


 切れた唇から流れる血を袖で拭いながら、ミッドナイト卿は言います。


「私は……こんなところで足踏みしている暇などないのです……!」


 血走った目で私たちを睨むミッドナイト卿。


「まだやる気か」


 私を守るように、勇者様が一歩前へ出てくれます。

 

 でも……


「勇者様。あの……」


「……ん?」


 魔術式を構築しながら、勇者様が視線だけこちらに向けます。


 ……あんなことをした後で、差し出がましいことだとは分かっています。

 だけど、ここで言わなければ、私は一生変われない気がして……


「私に、やらせてください」


「クラインを、か?」


「はい。それを以て、私の決意表明……のようなものに、したいです。今後は何があっても、勇者様を裏切るようなことはしない、って」


 それは私なりの、けじめのようなものでした。

 勇者様は、しばらく私の目をじっと見た後……


「……分かった」


 了承してくれました。


「ありがとうございます」


「……でも、お前もう魔力切れした後だろ?」


 勇者様に言われ、ハッとしました。

 そういえば先程、《水渦極海砲(ノウル・ナヴェレスト)》を放って倒れたばかりでした。


「そうでし――ひゃあっ⁉」


 ぴと、と何か冷たい感触が、背中を伝いました。

 首を曲げると、勇者様が私の背中に手を当てていました。


「大げさだな。二回目だろ」


 何をしているのかと思えば、私の御魂に魔力を送ってくれているようです。


「するならするって先に言ってくださいよ!」


 言いながらも、魔力が御魂に注がれているのが分かります。

 今はこんな些細な行動の一つ一つに、本当に勇者様が隣にいてくれているのだと感じられて、安心できます。


 今、私はちゃんと、迷惑そうな顔ができているでしょうか?

 嬉しさから、顔、にやけてないでしょうか?


「お話は終わりましたか?」


 目を向ければ、ミッドナイト卿がこちらを刺すような目で見ています。


「私があの籠手一つでここに来たと思ったら大間違いというものです。もしもの時のために、二つ目の魔法具を――――」


「《月降(つきおろし)》」


 その二つ目の魔法具とやらは、勇者様の魔法によってあっけなく砕け散りました。

 

 ――御魂に、魔力が満ちるのを感じます。


「ぐうぅ……こうなったら、仕方がありません。世界水晶の供給によって膨れ上がった、限界以上の魔力を込めた一撃により、この部屋諸共葬り去って差し上げましょう……!」


 ミッドナイト卿の怒りは最高潮に達したようで、そんなとんでもないことを言い出しました。


「フェレスト女史。今ここで勇者に再び刃を向けるというのなら、見逃して差し上げますが」


 最後通牒だとばかりに、ミッドナイト卿が言います。

 ですが、私の答えなんて、決まっています。


「いえ、私にそんなことはできません。褒賞金を頂けたことは感謝していますが、それもこれから返していこうと思っています」


「愚かしいことですね……貴女がもう少し賢ければ、今頃は勇者を消せていたというのに。その誤りのせいで、貴女はここで死ぬのですよ」


 ――勇者様から、私へと。


「そう……ですね。私は賢くなんてありません。大した才能もなければ、昔から失敗ばかりで…………先程も、本来なら取り返しがつかない失敗を、してしまったばかりです」


 ――膨大な魔力が、流れていくのを感じます。


「それでも、私は覚えています。勇者様が、お前は天才なんだと、言ってくれたことを。今は、こんな私を信じてくれる人がいますから……そのためなら、私はいつでも天才でいられるんです!」


「ええ、ええそうですか――どうやら、説得は無駄なようですね」


 ミッドナイト卿が魔法陣を描きます。

 それは雷のような青白い魔力を放出しながら、魔術式を構築していきます。


「これが世界水晶の力を借りた、上級魔法の中でも最上級の威力を誇る、『空』属性魔法――」


 ――心臓がドクンと跳ね上がり、体の芯が熱く燃え上がる――


「――《雷霆青震動覇(レネ・レガリアル)》」


 刹那――ミッドナイト卿の周囲に浮かぶ多重魔法陣から現れたのは、暴力的な魔力の奔流。

 部屋中に雷霆が轟き、まばゆいばかりの閃光が走る。


「だからもう――私は間違えません! 勇者様がくれたこの機会、私は絶対に判断を誤らないっ!」


 ――私の感情に呼応するように、魔力がこれまでにないほどの輝きを見せ――


「私を助けてくれた恩人が勇者様! そして倒すべき敵があなたです、ミッドナイト卿――――!」


 ――最大まで膨れ上がった魔力が、気持ちが、放出される――


「《魔祥祝福(オリエレベラ)超波動(・プラハル)》っっっ‼」


 杖の先から、暖かで煌びやかな波が作り出された。

 荒れ狂う白き雷霆(らいてい)を、赤紫(アマランサス)の波動が迎え撃つ。


 鬩ぎ合う大魔法は、四方に無秩序な波を作り上げ、部屋のガラスをけたたましい音を立てて破っていく。

 ジジジ、と魔力がこすれ合う音がアクアラクナに響き渡り――


「メフィ……その魔術は……?」


 勇者様が、何かを呟いたときには――

 私の魔法が雷霆を呑み込み、強大な紫電の音波となってミッドナイト卿を襲っていました。


「く……来るな……があああああああああぁぁぁぁっっっ!!!」


 二つの大魔法を一身に受けたミッドナイト卿は、大声を上げて湖底に倒れていきました。

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