孵化、そして母の愛
ニワトリ主人公の英雄譚なんてほかにあるんですかね?先まで書けてるので、また投稿します。
設定
鳥のセリフ「」
人間のセリフ『』
鳥たちは基本的に人語はわかりません。
鳥同士はキジ科の鳥のみ会話できる設定です
これは世にも珍しい、
人間に逆らい野性を目指したニワトリ達の英雄譚である…
4月の初め
僕の記憶の始まりは、真っ暗な場所だった。狭くて、暖かくて、湿っていた。そして愛に溢れていた。壁の向こうから届く優しい呼び声。僕も必死にそれに答えていた。そんな優しいやりとりは2日近く続いた。
コンコンコンッ
僕は嘴で壁を必死につつく。頭の中でだれかがつつけと言っているんだ。
「頑張れ!もうすぐよ!!」
優しい声、隣や後ろからは、コツコツという音が聞こえる。きっと誰かが同じようにこの壁をつついているんだろう。
そんなことを思っていたらふいに嘴が軽くなった。うっすらと明るい光が見えたかと思うと、大きな何かが覆いかぶさり、また暗くなった。この状態で僕は半日を過ごしていた。
半日くらい経った時、ふと体を回すようにしてつつけと言われたような気がした。誰もそんなことは言っていないのに、僕はその声にただ従ってしまった。しかしこの硬い壁を一周突き破るのはかなり疲れる。
その時、壁の裂け目から大きな何かがしっかり見えたんだ。その茶色い大きな壁を見て僕は無意識に叫んでしまった。
「ママ!!手伝って!」
それはママだと無意識にわかった。見た瞬間そうだと思った。優しく力強い黄色い嘴が壁に差し込まれたかと思うと、いつのまにか僕は枯れ草の中にいた。周りには黄色やシマシマのフワフワした何かがいた。
「そうか!僕もあんな見た目なんだ!」
自分の小さな翼と足を見て僕はそう思った。
その時、優しく温かい声が頭上から降ってきた。
「はじめまして!私のヒヨコちゃんたち!!私がみんなのママよ!」
僕たちはその声を聞いて、安心して眠くなってきた。そしてそのまま寝てしまった。お母さんの温かいお腹の下で。
僕たちニワトリの成長は早い。次の日にはもうご飯の練習だ。
「朝だよ〜みんな起きる時間だ!!」
大きくて強そうな声が響いた。誰かはわからなかったけど、ママと一緒に僕たちも起きた。
「今日からはご飯の練習をしますからね。マ
マの言ったものだけを食べるのよ。絶対に他
のものを食べたらダメよ‼︎お腹が痛くなっち
ゃうわよ。」
その時、大きな扉が開いて、大きな何かが僕たちの方に近づいてきた。
『ちゃんと3つとも生まれてるなあ。跡継ぎ
も産んでくれたし、この雌鶏はこいつらが
育ったらそろそろだな。』
大きな何かが2匹で何か言葉を交わしている。何を言っているのか全くわからない。
「ママ〜こわいよう…」
僕と昨日ママに教えてもらった「兄妹」たちと身を寄せ合ってママの陰に隠れる。
「大丈夫よ。これは人間と言って、ご飯とお
水をくれるのよ。だから感謝しなきゃ。」
その後、僕たちはお母さんが教えてくれた黄色っぽい粉を食べて、お水を飲んだ。
あんまりおいしくなかったけど、ママがこれだけだって言ったから仕方なかった。
その後、ママと兄妹と一緒に人間が入ってきた扉の外に出た。外はびっくりするほど広くて明るかった。
「ママ〜あれなに〜?」
「これって食べてもいいの?」
「この落ちてるやつはなんなの?」
僕たちは思いっきり遊びまわった。そしてママはとっておきのものを教えてくれた。一生懸命木に向かってジャンプしながら、ママは
「ヨイショッ!やっととれたわ。
これはバッタ。とってもおいしいわよ。」
僕たちはママがくれたそれを仲良く食べた。
黄色い粉なんかよりずっと美味しかった。
「ママ〜僕あんな粉より毎日バッタがいい
な」
僕がそういうと、ママは
「バッタは捕まえるのが大変なのよ。なかな
か見つけられないごちそうなの。だからお
いしいの。でも他にもおいしいものはある
のよ。」
そういってママは必死で土を足と嘴で掘り始めた。
「よいしょっと…これがミミズよ。これもお
いしいのよ。」
赤くてぬるぬるしたそれは、バッタとは違うおいしさで、僕はミミズも大好きになった。
「ミミズが一番おいしいね!」
「バッタの方がおいしいわよ!」
「どっちも同じくらいおいしいじゃん。」
僕たちがちょっとケンカしていると、ママは
「将来は自分で食べるものを見つけなければいけないのよ。」
と言った。なんのことかよくわからない。でも僕たちにはママのいない生活なんて考えられなかった。そのまま、僕たちは寝てしまった。お母さんの温かい羽の下で。
興味を持っていただけたなら、続きもよろしくお願いします。