起床 side:綾瀬琴葉
教室に戻ると、けんちゃんはまだ壁に寄りかかりながら寝ていた。
自分でも割と大きな声を出してしまったと自覚していたが、どうやらかなり疲れていたらしい。けんちゃんはぐっすり寝ている。
(やっぱり毎日連絡取り合うのはお互い大変、かな)
私はもう少し連絡の頻度を自重することを、心の中で決めた。
けんちゃんの寝顔をずっと見ていたいがそういうわけにはいかない。
なにせ、今は体育祭の最中なのだ。
しかも時間的にそろそろお昼だから生徒たちはみんな学校に戻ってくる。サボっていることがバレたら色々と面倒だ。
「けんちゃん、起きて」
私はそう言いながらけんちゃんの体を軽く揺する。
しかしけんちゃんはなかなか起きない。
「おーきーてー!」
先程よりも少し大きな声で、さらに強くけんちゃんの体を揺する。
すると、
「ん、あぁ。ご、ごめん、寝てたみたいだな」
眠そうな目をこすりながらようやくけんちゃんが起きた。
「寝すぎだよ」
私は笑顔でそう言う。
ここまで爆睡していたのなら多分、私と花凜との会話は聞いていないだろう。
「もうこんな時間か、1回戻るか」
けんちゃんは携帯の画面を見ながら言う。
「そうだね、そうしようか」
今から戻っても約1時間後にはまた教室に行くことになる。
それでも先に教室にいるよりかは、グラウンドにいた方がいいだろう。
「よっこいしょっと」
けんちゃんは重たい腰を上げるような動作をしながら立ち上がった。
「もう、おじさんみたいなこと言わないの」
立ち上がろうとするけんちゃんに、私は笑いながら手を貸した。
けんちゃんに結構強く引っ張られて少し転びそうになったが、何とか耐えた。
「寝てた体勢が悪かったらしくて腰が痛いんだよ、許してくれ」
けんちゃんは腰を自分の手でさすりながらそう言う。
「まだ若いんだから、もう」
私はけんちゃんの腰を強く叩いた。
けんちゃんはイテッと、言っていたがそんなのお構いなしだ。
「早く行こっ」
そう言いながら私はけんちゃんの手を引く。
私の笑顔とは対照に、けんちゃんは気だるそうな顔をしている。
お昼時だ、気温は確実に上がっている。
生徒玄関を出るとさっきまで暗いところにいたからだろうか、外はすごく眩しい。
だんだんと眩しさに慣れてくると、上には朝と変わらない雲ひとつない青空が広がっていた。
先程までサボっていたから物凄く外に出たくない気持ちになったが、私よりもその気持ちが大きい人が後ろにいたから私が挫ける訳にはいかない。
重たい1歩を前に前に進めながら私はけんちゃんの手を引く。
後ろの方でめんどくせー、と言っている人がいるが放置だ。
そんなこんなで何事もなく私たちはグラウンドに帰ってきた。
グラウンドに向かう途中で軍の違うけんちゃんとは別れたが、けんちゃんはちゃんと帰れただろうか。
グラウンドで今何が行われているかは知らないが、知っている人がいないということは多分先輩たちの競技だろう。
適当に椅子に座って応援していると、午前の競技の終わりを知らせる放送が流れた。




