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建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
96/168

気持ち 後編 side:綾瀬琴葉


「ちょっと待って!」


 その声は私が思った以上に大きくて私自身も驚いたが、花凜は私の倍以上驚いていた。

 花凜の方がビクッってなって申し訳ない気持ちだったが、少し笑ってしまったのは内緒だ。


「……なに?」


 ゆっくりとこちらに顔を向かせながら花凜は言う。

 私は少しだけ笑っていたのをバレないようにすぐに真顔にした。


「……あ、えっと、花凜って何か用があって教室に来たんじゃないの?」


 真顔になることに集中していたせいでまた本題に入ることができず、私は咄嗟に思いついたことを言っていた。


「もう、大丈夫だから」


 薄い笑顔で花凜は言った。

 けれど私は気づいた。気づいてしまった。

 その顔だ。さっき見た悲しそうな顔と同じ顔。

 笑っているように見せているけど、内に秘めた悲しみはそう簡単に消えるものでは無いから。


「そっ……か」


 それでも多分、これ以上のことを追求したとしても花凜からは何も言ってくれないだろう。

 彼女は彼女なりに隠しているのだから。

 もう何も知ることが出来ないとわかり、私の返事はすっと空気に消えていくような、薄い声になってしまった。


「じゃあ、今度こそ……」


 そう言って花凜は再び生徒玄関の方を向こうとしている。

 これで終わりにしていいのか、私はずっと自問自答している。答えは出ているはずなのに気づいていないふりをしている。


 なぜ1歩が出ないのか。

 それは、けんちゃんを取られたくないからだ。

 現実を受け入れたくない。今の、この幸せな時間を続かせたい。このまま、ずっと……


 それでも!

 それでも花凜は友達だ。

 友達だからこそはっきりさせなければいけないことがある。

 友達だからこそ隠して欲しくないことがある。

 友達だからこそ、対等でいたいと思っているから。


「建真のこと!」


 私の大声が再び校舎内に響いた。


「……!!」


 突然の大声に花凜は再び肩がビクッとなっていた。


「建真のこと、どう思ってるの……?」


 私は恐る恐るそう言った。

 この会話の中で2人が避けていた話題であり、本当に聞きたかったこと。


「斉藤くんは……」


 花凜の口から発せられる1文字1文字が重たく私には聞こえる。

 聞きたくない気持ちが勝ってしまいそうになる。

 それでも、もう後戻りはできない。

 私は軽く自分の唇を噛み、覚悟を決めた。


「斉藤くんは、ただの友達だよ」


 花凜は言い切った。

 清々しいほどの、笑顔とともに。

 ただの友達だと、そう言い切った。


「……ご、ごめんね!? 変な事聞いちゃって」


 花凜の言葉を聞いて安心してしまった私を隠すために、私はすぐに返事をした。

 花凜には慌てているように見えたかもしれない。


「ううん、大丈夫だよ」


 花凜はそう言いながら、いまだに笑顔のままだった。

 嘘なんてないと、はっきり分かる顔だ。


「じゃ、じゃあまた後でね」


 もうこれ以上、花凜を引き止める理由はない。

 私は花凜に別れを伝えた。


「うん」


 花凜の返事を聞き、花凜が生徒玄関の方を向いたのを見てから私は教室へ歩いていく。

 教室までの道のりは、とても足取りが軽かった。


 全てはただの、私の思い違い。

 私は深く考えすぎていたのかもしれない。花凜には本当に悪いことをしたと私は少し反省した。

 でも正直、花凜の気持ちが聞けてよかったと思っていた。

 やっぱり2人だけで話す時間は必要だったということだ。

 これからも花凜とは仲良くやっていける気がする。


(早くけんちゃんを起こしに行こっ)


 けんちゃんに会いたいと思うだけでいてもたってもいられなくなってしまう。

 私は少し小走りで教室へ向かった。

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