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建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
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気になる


 結局その後、何も無く一日が終わった。

 ちなみに俺が教室に戻ってから10分後くらいに、本条は何食わぬ顔で帰ってきた。

 本当に何も気にしてないようで、俺は反応に困り変に意識をしてしまった。


「じゃあ私の何がわかるって言うの!」


 あの時の本条の声と泣き顔が頭から離れない。

 ぼーっとしてると思い出してしまうから授業に集中してみるが、それでもやっぱりふとした時に思い出してしまう。


(俺にはもう、何も関係ないだろ……)


 そう自分に言い聞かせて、無理矢理忘れるしかなかった。


 次の日、俺はいつもの時間に学校に来ると、また本条の姿はなかった。遅れているだけだろと思っていたが、そうではなかった。

 今日、本条は学校を休んだのだ。


 俺のせいかとも思った。

 こんなこと言うのは失礼だが、本条はメンタルが強い方だと勝手に思っていた。けれど、本当はメンタルが弱い方だったかもしれない。我ながら人を見た目で判断すべきじゃないなんて、もう二度と言えないなと思った。


 でも確証はできなかった。だって俺は本条のことを何も知らないから。

 そう思った瞬間、また昨日の光景を思い出してしまう。


(なんで俺はまた、本条を事を考えなければいけないんだ……)


 どうしても消えなかった。忘れようとするほど思い出してしまう。

 その光景が綺麗だったとか、美しかったとか、そういう類のものじゃない。いつも強い人間だなと思ってた人の弱みを見れて嬉しかったとかでもない。


 ただ、純粋に、後悔していた。謝るべきなのか、無視するべきなのか。

 建前の俺が謝れと言っている。めんどくさがり屋の俺が関わるなと言っている。

 思い出してしまう現状が、既に答えを指し示しているはずなのに。


(俺には、関係ない)


 Aグループの奴らと何も考えず談笑している時が1番、心が安らいだ。


 本条は、その次の日も学校を休んだ。

 ただの病欠を信じたい反面、やはり俺のせいではないかと思ってしまう。


 しかし、俺に出来ることは何もない。Aグループの奴らと騒いで、気にしないようにすることしかできない。

 それでも、やはりふとした瞬間に思い出す本条の泣き顔は、俺の心をゆっくりと締め付けていた。


 そしてまた次の日も本条は学校を休んだ。

 流石に何かすべきなのかと思った。結局、無視する気持ちよりも罪悪感が勝ったのだ。


 でも本条の家を俺は知らない。電話番号もメールアドレスも知らない。

 どうするべきかと考えていると、急に担任の先生に呼ばれた。


「斉藤、確か本条と仲良かったよな?」


「え? あー、まぁ、あんまりだと思いますけど」


 急に本条の名前が出てびっくりしてしまった。

 実際、仲が良いかと言われれば微妙なところだ。あんなことがあったわけだし。

 だから、取り留めもない返答をしてしまった。


「まぁ話したことがあるならいい、このプリントを本条の家まで届けてくれないか?」


「え? 俺がですか?」


 意味がわからなかった。俺よりも女子の方が絶対にいいだろと思ったからだ。


「ああ、そうだ。何か問題でもあるか?」


「え、だって俺男ですよ? 女の子の家に行くのはまずいんじゃないんですか? 本条、女友達とかいないんですか?」


 純粋な疑問だった。


「実は、俺も女子生徒に既に頼んではいるんだが誰も本条と話したことがないらしくてな。それで、斉藤が本条と話しているところを見たことがあると聞いて、こうして斉藤に頼んでいるわけだ」


「はぁ……」


 事実、俺は本条が誰かと一緒に喋っていたり、弁当を食べている姿を見たことがなかった。

 別に嫌われているとかではない、と思う。ただ、多分みんな話し掛け辛いのだろう。

 なぜなら、本条は基本的にずっと本を読んでいる。そして見た目は大人しめ。俺が本条の存在にはっきり気づいたのは、席替えで隣になったからだ。まぁ、実際に話してみれば印象は変わるが。


「他にあてがないんだ、頼むぞ斉藤」


 とんでもないことを頼まれてしまった。

 俺は、渡さなければいけないプリントを持って職員室を後にする。

 教室に帰るまでの足取りは重いものだと思っていたが、不思議とどこか、少し軽さを感じていた。

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