放課後 後編
「結構無茶あったと思うけどね……」
俺の隣にいる琴葉が呆れながらそう言う。
まぁ、確かに無茶がありすぎたと思う。
時刻は午後1時半。その時間から晩御飯の支度とはどれほど凝った料理を作るつもりなのだろうか。
俺が作れる料理なんて簡単なものばかりだ。
「あのまま続けてたら、何か競技をやらなきゃいけなくなりそうだったからな……」
あの時、この流れはまずいと思った俺はお金を置いて店を出た。本当に逃げたって感じで、ささっと。
ちなみになぜ隣に琴葉がいるのかは謎だ。
店から出て、イヤホンをしようとポケットに右手を入れようとしたら急にその手を掴まれた。
掴んだ人は琴葉だった。
そして先程の会話に戻る。
今も俺の右手は琴葉の左手と繋がっている。
「というかけんちゃん、ちゃんと晩御飯当番やってたんだね」
琴葉は携帯をいじりながらそう言う。
「まぁ、さすがにな」
晩御飯当番。俺が中学生になって少し経ってから始まった。
親が仕事で忙しい時に、妹と交代で晩御飯を作っている。
俺は野菜炒めやスープなど簡単なものしか作れないが、妹は凝ったものを作ってくれる。
「けんちゃん体育祭の競技なんもやらないんだー」
そう言う琴葉の左手の、俺の右手を握る力が心做しか強くなった気がする。
「いや、だってめんどくさいし」
何もやらない訳でもない。
応援合戦は強制だし、いくつか参加しなくては行けない競技がある。
それで十分、いや、何もやりたくない。
「私はけんちゃんが何かしてる姿、見たかったけどなー」
琴葉はぶーぶー言っている。
それでも俺は折れない。
それくらい、やりたくない。
「ねー、無視しないでよ」
痛いよ琴葉。右手痛い。
「文化祭だってあるだろ? 文化祭の方でなんかやるからさ」
体育祭の2週間後に文化祭が行われる。
初めて高校の年間予定表を見た時は驚いたものだ。
「言ったなー、私ちゃんと聞いたからね! 絶対メイドとかやらせよー」
琴葉はうきうきと文化祭のことを考えている。
握る力が弱くなったのはいいのだが、これはこれで何か間違えたかもしれない。
(文化祭が近くなったらしらばっくれよう……)
ひとまず目先の体育祭のことが解決してよかった、と俺はほっとした。
そう言えば、淳が応援練習は厳しいらしいと言っていた気がする。ほっとしたのもつかの間、明日からの応援練習を想像するだけでため息が出る。
結局、沈んだ気持ちのまま俺たちは帰宅した。
あ、ちなみに今日の晩御飯当番は妹だ。




