放課後 中編
「でも武史はリレーには出るんだろ?」
選抜リレー。
それは体育祭の最後に行われ、花形とも言える競技だ。
武史の選んだ希望制競技はその選抜リレーだった。
「まぁな、というか半ば強制だったがな……」
武史の話によると、知らない間に選抜リレーの欄に自分の名前が書かれていたらしい。
半ば強制、どころかどこからどう見てもただの強制だ。
俺はご愁傷さまと心の中で思った。
「でも武史が1番適任じゃん」
琴葉がそう言う。
確かに武史がこのクラスのトップ3に入るほどの足の速さだということは、4月に行われた体育測定の時に証明されている。
「確かに」
俺も琴葉に続けて言う。
武史が出なければ誰が出るのか。
そんなことを思っている俺も、武史の名前を勝手に書いたヤツらと同類だなと思った。
「そういえば建真もなんか出るって言ってたな。何に出るんだ?」
ぼーっとしていた俺に武史が話しかけてきた。
急に話を振られたので、
「え、俺?んー……」
と、答えるのに躊躇ってしまう。
「あ、というか何があるんだっけ?」
答えるも何も、そもそも何があるのか俺は知らなかった。
「けんちゃんちゃんと確認しなさいよね」
琴葉はそう言って、俺の方に琴葉の携帯を見せてきた。
携帯の画面に映されていたのは、各競技が書かれている紙だった。どうやら琴葉はその紙を写真で撮っていたらしい。
「んーと? 100m走、マラソン、綱引き、玉入れ、リレーはもう決まってるから……あとは障害物競走かな」
琴葉はひとつひとつ確認しながら教えてくれた。
琴葉と俺、2人でひとつの画面を見ているから2人の距離は近い。
しかし、俺は昔よりも緊張はしていない。最近一緒にいた時間が多くなったからだろうか。
(どれも出たくねえ……)
正直な俺の感想だった。
いやめんどくさい、本当に。暑いし疲れるしちょっと無理。いや、だいぶ無理。
なにか答えなければ。
俺は必死に答えを探していると、
「建真、一緒に100m走出ようぜ」
と、淳に誘われた。
うーん、と悩む時間なんていらないほど俺の答えはヤダの一点張りなのだが、
「あー……んー……」
俺は悩む素振りを見せる。
「別に足の速さ、そこまで遅くないだろ?」
淳の追い打ちがやってくる。
俺の足の速さは中の中くらいだ。遅くはないという言葉は合っているが、別に早くもない。
100m走は過去の経験則から言うと目立つ競技だ。よって、出たくない。
そこで思いついたのが、
「あ! やっべもうこんな時間じゃねえか! 今日の晩飯当番俺だったわ!」
そう、逃げである。




