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建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
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夏休みの宿題 後編


 本条の手作りクッキーを半分ほど食べた辺りで、俺たちは勉強を再開した。


 ……正直、今日の勉強会は少し不安だった。

 なぜなら、夏祭りの日の帰り道に本条と気まずいような雰囲気で別れてしまったからだ。

 何を話せばいいのか、本条はもうなんとも思っていないのか俺にはわからない。


 そう考えるとまぁ、今日の遅刻は正解だったのかもしれない。挨拶からの会話、世間話は得意じゃないし。……だからと言ってわざと遅刻したわけじゃないことだけは信じて欲しい。

 本条自身は、祭りの日のことを一切触れようとしなかった。だから俺も祭りの日の話はしなかった。まぁ、ずっと勉強してたってのもあるし。


 しかし、一体琴葉は何をしているのだろうか。もう16時なのに一向に連絡が来ない。さすがに昼寝にしては長すぎる。

 俺は本条に断りを入れてから琴葉に、


「いつまで昼寝してるんだ?」


 と、SNSのメッセージを送った。

 すると意外にも返事はすぐに返ってきた。


「今向かあてる!」


 いかにも走りながら打ってます感が出ている文だ。ながらスマホ、良くないぞ琴葉。

 俺は琴葉に詳しいことを聞かず、「待ってる」とだけメッセージを送り、本条に琴葉が来るらしいということを伝えてからスマホを机の上に置いた。


「琴葉さん、意外とお寝坊さんなんだね……」


 本条があはは……と失笑している。


「多分、携帯を無くしてたとかじゃないかな……」


 流石にあの琴葉でもここまで寝てるなんてことは無いだろう。携帯を無くしたか電池がなかったかだと思う。本当にこの時間まで昼寝をしていたのなら、さすがに目も当てられない。




 10分後、


「遅刻してごめんなさい!」


 と琴葉がそう言ってやってきた。


「なんで遅れたんだ?」


 俺がそう聞くと琴葉は、


「えーっと……携帯を充電してたんだけどどこで充電してたか忘れちゃって……というかそもそも今日勉強会だってこともド忘れしてて……ごめんなさい」


 と、頭を下げながら言った。

 ……案の定だった。


「はぁ……」


 ため息しか出ない。

 琴葉ってこんなにだめだめだったっけと疑ってしまう。


「斉藤くんの予想、当たってたね」


 本条がクスッと笑いながらそう言う。


「まぁ、幼馴染だしな……」


 こういうのは嫌でもわかってしまうものだ。……まぁ今では幼馴染兼彼女だから琴葉のこと、なんでも分かっちゃいそうだが。


「宿題、もしかして終わっちゃった?」


 琴葉が俺の隣に座り、俺のノートを見ながらそう言う。


「まぁ、ほとんど」


 本条のおかげで問題を理解しながらサクサク進んだ。

 残ってる宿題は家に帰ってからでもできるものしかない。


「マジかー……けんちゃんの頑張って写そ」


 琴葉はそう言いながらスマホで俺のノートの写真をカシャカシャ撮っている。


「そんなんだと夏休み明けテスト、大変なことになるぞ」


 夏休み明けテスト。学校開始初日にあるテストだ。

 成績に含まれるテストだから疎かにはできない。


「な、何とかするし!」


 ……なんとか出来ないんだろうなぁ、と思ってしまう返事だ。


「ありがとう本条。この恩はいつか必ず返すよ」


 本当に本条には頭が上がらない。来年こそは夏休み初日から宿題をやろうと思った。……多分やらないけど。


「全然大丈夫だよ、私も復習できたから。役に立てたなら良かったよ」


 本条は笑顔でそう言った。


「あ、琴葉さんクッキー食べる?まだ残ってるから」


 そう言って本条はクッキーの入ったパックを琴葉の方へ差し出す。


「クッキー? 花凜が焼いたの?」


 琴葉は首を傾げながらそう言った。


「まあね。お口に合うかわからないけれど……」


 本条は渋々そう言うが俺は、

 

「すごく美味しいんだよ、琴葉も食べてみてよ」


 と、本条の意見を否定する。

 琴葉はクッキーを1つ手に取って口に含み、さくさくと音を立てながら食べる。

 そして琴葉は、


「おいしい!」


 と、少し大きな声でそう言った。




 こうして俺たちの勉強会と夏休みは終わりを告げた。

 今年の夏は本当にたくさんのことがあった。特に夏休み後半は、本当に一日の密度が濃くて。

 自宅までの帰り道、夏休み中の出来事をぼんやりと思い出していた。

 確か学校が始まったら大きな行事ごとが二つほどあるらしい。そこでもまた、色んなことが起きるのだろうか。


 俺の心の中は、学校が始まる憂鬱感と少しだけ楽しみな気持ちが混ざっていた。

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