展望台 side:本条花凜
「あつっ」
私が家を出たのは午前10時過ぎだったが、十分に外は暑かった。
時間が経つにつれてさらに気温が上がるとなると、正直気が滅入る。
しかし特に意味は無いけれど、強いて言うなら昨日思い出したからという理由だけど、あの展望台に行ってみたいと思った。そしてその意思は今、私が歩を進めている原動力になっている。
「あの場所日陰あったっけ……本を読むどころかお弁当を食べるのもつらそう……」
弱音を吐きながらもゆっくりと私は足を動かす。
目指す場所は先日、お祭りのあった神社のさらに山の奥だ。
「ふぅ」
私はようやく、神社に辿り着くことが出来た。
草木が生い茂っているおかげか、日陰が多く少しだけ涼しさを感じる。
私はベンチに座り、水筒の中の麦茶を飲んだ。ひんやりとよく冷えた麦茶が体の中に染み渡るのがわかる。
「おいし~」
私は自然とその言葉を漏らしていた。
水筒の中で氷がぶつかるカランという音、風によって木々の葉っぱがぶつかるカサカサという音、遠くの方から聞こえる茶屋の風鈴の音が、私の心を癒している。
もうここで本を読んでお弁当を食べてしまおうか、という考えが浮かんだが私は必死に首を振った。
「展望台、行かなきゃ」
私は重たい腰を上げ、前へと進む。
神社の本殿の、さらに奥。一応舗装はされているが、ほとんど獣道のような道だった。
そもそも、展望台への道の入口が目立たなすぎてきっとあまり人が来ないのだろう。……せめて看板くらい置いたらいいのにと思う。案内板には展望台あるよって書いてあるんだけどな……。
しばらく歩いていると私は、最近展望台に来たような足跡を度々見かけた。
誰かいるのだろうか、と思ったがその足跡は登っているのだけでなく降りているのもあった。一昨日か昨日にでも来たのだろうか。
こんな穴場スポットを知っているなんて、その人とは仲良くできそうだと思った。
「着いた……」
階段を登り終わると、目の前の視界が一気に開けた。
大きな野原と、点々と置いてあるベンチ。そして奥に進むと眼下に広がる私が住んでいる町。
開けている場所で、太陽の光にひたすら照らされているのに風がとても心地がよく気分は悪くなかった。
私はしばらく、言葉を失った。
その景色の綺麗さのせいだろうか、それとも昔の記憶を思い出していたからだろうか。
ただ、この場所を忘れていなくてよかったと、また来たいなと思った。




