噂話
朝の8時ちょうど、俺はいつもの時間に学校に着いた。生徒玄関で内履きに履き替え教室に入ると、いつもは既に来ているはずの本条の姿はなかった。
俺は自分の席に向かい、リュックを置く。既に武史は来ていて、Aグループの皆は武史の席を取り囲むようにして談笑していた。
「おはよーっす」
「おーう、建真おはよう」
武史は今日も変わらず爽やかだ。
どうやら昨日のテレビの話をしていたらしく、お笑い番組の話題で盛り上がっていた。
俺もその番組を見ていたから一緒に話していたが、しばらくするとAグループの1人である、田中淳が急に別の話題を切り出した。
「そういえば、建真って最近本条さんと仲良いよな」
さすがに1週間、ずっと10分休み時間中話していたら仲がいいと思われるのも仕方のないことだ。まぁ、本条の方から一方的に話しかけられているだけだが。
それでも、急に聞かれたから俺は驚いてしまい、一瞬たじろいでしまったが俺は冷静に
「いや、別に仲がいいというわけではないけど……、席が隣だからよく話すってだけだぞ」
と返答した。
「それにしては、仲良さげに話してるじゃん」
色恋沙汰が好きな淳は、ぐいぐいと聞いてくる。
「あー……、そんなつもりはないというか。なんなら俺は本条さんのこと苦手、だったりするけどな」
「そうなん? じゃあ、逆に本条さんが建真に気があるのかもな」
「あっても困るけどな」
俺の返答の後、みんなで軽く笑ってから会話が終わり、また別の話題へと移っていく。しかし、俺は少し焦りを感じていた。
(めんどくさいことになったな……)
俺はそういう恋愛関連の噂話が好きじゃない。自分の、だったらなおさら嫌いだ。
(本条と話、しないとな……)
化けの皮剥がしも、色恋沙汰も、どちらも俺にとってはうざったいことだ。俺は事の重要性を再確認し、昼休みにガツンと言ってやると気合を入れた。
ちなみに本条はというと、朝のホームルームが始まる5分前に教室に入ってきた。どうやら、道がわからなくなったおばあさんを案内していたらしい。互いに軽く朝の挨拶を済ませ、授業に臨んだ。
昼休みまでの10分休み×2回は質問攻めにされなかった。意外だなと思ったが、俺にとっては好都合だ。
昼休み、俺は本条に3階の空き教室へ来るようにと伝え、俺は先に向かっていた。
この学校は教室棟と特別教室棟と部室棟分かれている。それぞれ3階建てだ。
そして昼休みの時、特別教室棟は基本的に人が少ない。なぜなら皆、教室や中庭で弁当を食べたり、グラウンドや体育館で遊んでいたりしているからだ。だから、内緒話をするには定番の体育館裏よりも、特別教室棟の方がよかったりする。
空き教室についてから3分くらい経っただろうか、教室の後ろ側でスマホをいじっていると、空き教室の前の扉ががらがらと音を立てて開いた。俺は咄嗟にスマホを隠そうとしたが、扉を開けた人の姿を見て少しほっとする。
「携帯、学校内はダメなはずよ」
「見なかったことにしてくれ」
軽い会話を混じえながら、本条は俺の方へ向かってくる。俺は軽く深呼吸して心を落ち着かせる。
「で? 用って何?」
今日も本条の視線は真っ直ぐ俺を見ていた。さすがに1週間もその視線で見られてたら慣れるものだと思っていたが、やはりまだ少し圧倒されてしまう。
1度視線を下に下げてしまったが、再度俺は本条を見返す。
(なんでこんなめんどくさいことを……)
そう思いながら俺は切り出した。
「もう、俺に関わらないでくれ」




