本当のデート 後編
「あ」
いざウィンドウショッピングへ、という所で俺は足を止めた。
「どうしたの?」
琴葉は心配そうに俺の方を向く。
「ウィンドウショッピングもいいんだが、先に昼飯食べないか?」
俺の提案に対して、琴葉は首を傾げる。
「お腹、すいてるの?」
「まぁ、そろそろ昼時だからすいてると言えばすいてるんだが……、琴葉の事だからあんまり朝ごはん食べてなくて俺よりお腹すいてるんじゃないかと思って」
琴葉は、起きてから大体1時間くらいで準備してきた。
琴葉の姿を見れば、その1時間のほとんどを身支度に費やしただろう。なら、あんまりご飯を食べてないのはすぐに分かる。
「ば、バレた?」
琴葉は、あはは……と言わんばかりの顔をしている。図星だったらしい。
「まぁ、幼馴染だからな」
正直、電車の中で琴葉のお腹が小さく鳴ったのに気づいただけなのだが。
「お昼ご飯、行こっか」
「了解」
俺たちは先にご飯を済ませることにした。
お昼の時間が近いと言ってもまだお昼前だったから、フードコートは比較的空いていた。
だから俺たちはすぐに座れる場所を見つけ、ご飯を食べることが出来た。
前回はうどんだったが、今回はガッツリいきたいということで俺は豚カツ定食、琴葉はエビフライ定食を頼んだ。
お互い、十分満足出来たお昼ご飯になった。
「さっ、今度こそ行こ!」
「そうだな。行くか」
そう言って俺たちは、フードコートを出た。
そして俺たちは雑貨屋から、服屋、家具屋まで、色々な所に行った。
俺自身、あまり買い物に時間をかけないタイプだったから新鮮な気持ちだった。
琴葉も終始笑顔で、楽しそうだった。
「ちょっと疲れたね」
「結構歩いたな……」
気づけば時刻は14時30分だ。
約2時間半、ウィンドウショッピングをしたことになる。
俺たちはベンチに座りながらポケーっとしていた。
「昨日のお祭りの疲れがまだ残ってるよ~」
琴葉がそう言って足をぶらぶらしている。
確かに、俺も昨日の疲れを感じていた。あまり睡眠時間も取れていないから当然だ。
「今日はもう帰るか」
俺はそう提案した。
無理しすぎて体調を崩しては、元も子もない。
「んー、そうだね。名残惜しいけど、またいつでも行けるもんね」
「そうだな」
行くか、と、俺がベンチから立とうとすると、
「あ、ちょっと待って」
と、琴葉に呼び止められた。
「どうした?」
「最後にあそこに寄りたい」
そう言って琴葉が指を指した場所は、アクセサリー店だった。
店内には、様々なアクセサリーが陳列されていた。どれも綺麗で、見ているだけでも十分楽しめる。
色々あるな……、とアクセサリーを眺めていると、琴葉が1つのアクセサリーを指さした。
「ねぇこれ」
小さい月を大きい月が包み込んでいる、2つに分けられるネックレスだ。
「ペアアクセサリー、か」
「うん。綺麗……」
琴葉はぼーっと、そのアクセサリーを見ている。
「それ、買うか」
「え?」
「ペアアクセサリー、いいんじゃないか」
付き合い始めてまだ2日だが、記念にはちょうどいいものだ。
琴葉も欲しそうだったし。ちょうどセールをしていて安いから買いやすいし。
「か、買う! 割り勘しよ!」
そう言った琴葉の目はとても輝いていた。
どうやら相当嬉しかったらしい。
「別に俺が全部払ってもいいんだけど」
少し高いけれど、全然買える金額だ。
ここは男として払いたいと思ったが、
「ううん、2人で一緒に買いたいの」
と、俺の目を見る琴葉の目は真っ直ぐで、その提案に断ることが出来ず、
「なら、まぁ……割り勘でいいか」
と、俺は折れてしまった。
「うんっ!」
無邪気な琴葉の返事は、新鮮で、可愛いと思ってしまった。
「えへへー、似合う?」
俺たちは早速、ネックレスを着けた。
琴葉が小さい月の方で、俺が大きい月の方だ。
琴葉はとても嬉しそうにアクセサリーを見ていて、買うことを提案してよかったと思った。
「服と合ってて似合うな」
「けんちゃんもよく似合ってるよ」
お互いに笑顔で、最高のデートになったと実感した。
帰り道の途中、ふと、琴葉が口を開いた。
「そういえば夏休みの宿題終わった?」
「あんまり触れないでくれ……」
もう来週には学校が始まってしまう、そんな現実から逃げたいと素直に思った。
「ならさ、一緒にやらない?」
どうやら琴葉も終わっていないらしい。
良い提案だと思い、俺は、
「おー、いい」
いいよ、と言いかけたところで俺は思い出した。
そういえば本条に宿題を教えてもらう予定だったんだ、と。
「あー、んー……」
他の女の子の話をするなと言われてなそういえば、と思い出し話が切り出しにくい。
「どうしたの?」
しょうがない、と割り切って俺は口を開いた。
「実は、祭りの時に本条に教えてもらう約束? みたいなのをしていて……」
申し訳ない、と琴葉が怒る前に謝ろうと思ったが、
「なら私もついていっていい?」
と、返された。
……少し怒っているような口調だったが。
「そうだな、一応本条に連絡しておくか」
本条の様子も気になるし。
もしかしたら図書館に来ないかもしれない。だから連絡しておいて損は無いだろう。
そんな話をしていると、あっという間に家に着いた。
「じゃあ、またな」
「うん、またね。あ、また電話していい?」
「いいけど今日は早めに終わるからな。また寝坊するだろ」
「わ、分かってるって!」
笑いながら、俺たちは家に帰った。
そうして、俺たちの初デートは幕を閉じた。




