本当のデート 中編
「いやー……、ほんとにごめんね」
駅に歩いて向かう最中、琴葉が少し申し訳なさそうな笑顔でそう言う。
「まぁ、予想通りだったから大丈夫」
俺はそう返すと、琴葉は頬を膨らませ、
「なんか癪に障るなぁ……」
と、むーっと言いたげな顔をしていた。
まぁまぁとなだめていると俺はふと、琴葉がいつもと違うことに気がついた。
……もっと早くに気づくべきだった気がするが、だからと言って触れないのも野暮なので怒られる覚悟で俺は口を開く。
「そういえば、触れるのが遅い気がするんだけど」
「ん?」
「今日は……、なんだか琴葉らしくない服だな」
そうなのだ。服装がいつもと違うのだ。
琴葉が着ている服は、白ワンピースだ。リゾートマキシワンピースというものらしく、ロングスカートの夏っぽいワンピースだ。
そして頭にはつばの広い麦わら帽。琴葉はその帽子を少し深く被っている。
全体的にいかにも夏らしい、いろいろと攻めてる服装だった。
琴葉はよくカジュアルな服を着ている。
だから、普段と違う琴葉で驚いてしまった。
「何よその言い方。似合ってないとでも言いたいの?」
帽子の奥から僅かに見える琴葉の目は、少し怒っているように見えた。
影で琴葉の顔色まではわからない。
「いやそういうわけでは……」
「じゃあ何よ」
下手な言葉を言ってしまったら怒られる。
俺は、慎重に言葉を選ぶ。
「むしろ、こういう服も似合うんだなって思って」
言葉を選ぶと言ったが、出てきたのは単純な俺の感想だった。
琴葉のその姿はとても新鮮だったが、カジュアルな服装よりもむしろこっちの方がいいのではと思うほど似合っていたのだ。
「良いと、あいや、可愛いと思う」
……ここは言葉を選んだ。
可愛い、の方がいいに決まっているから。
「あ、ありがと……」
琴葉は小さい声でそう言ってから、俯いてしまった。
どうやら怒ってはいないらしい。琴葉の顔色は見えないが、隣から伝わる僅かな熱気から大体の想像はできた。
8月の終わりは近いが、今日も今日とて暑かった。気温も、体温も。
結局、ウィンドウショッピングをする場所は前回琴葉と買い物に行ったデパートになった。
「ついたー」
琴葉は元気な声でそう言うが、デパートの最寄り駅につくまでずっと俯いていた。
だから、会話もなく、体調でも悪いのかと心配していたが元気そうで安心した。
「空いてるな」
デパートに入ると、前回来たよりも人があんまりいなかった。
「平日だからねー」
どうやら琴葉にとっては、見慣れた光景らしい。
「じゃあ、行こっか」
琴葉はそう言った後、俺の右手に琴葉の左手を絡ませてきた。
「そ、そうだな」
不意のことでびっくりして、返答に焦りが出てしまった。
1度は繋いだことがあるとはいえ、あの時は夜だったせいで暗くてよく見えなかった。でも今はお昼だ。バッチリ見えている。
今度は俺が、ずっと俯くことになりそうだ。




