本当のデート 前編
「ごめん今起きた!」
ゲームをしながらもチラチラと気にしていたスマートフォンが、ようやく来て欲しい通知を知らせた。
俺はすぐにスマートフォンを手に取り、
「わかった。準備できたらまた連絡してくれ」
と、メッセージを返す。
よし、と俺は小声で独り言を呟き、出かける準備を始めた。
俺は自室に行き、タンスを開けた。
普段なら適当に服を取って着るのだが、流石に今日はそういうわけにはいかない。なぜなら今日は、デートなのだ。
いや、実際にお互いがデートという言葉を口にした訳では無い。けれどこれは紛れもなく、デートだ。
俺は、はぁ、とひとつため息をつく。
「俺が、これから、琴葉と、デート……」
そう、小さな声で俺はつぶやく。
正直、実感が湧かない。なぜなら、俺にとってはただの、買い物だから。
俺は琴葉に恋をしている訳では無い。だから俺は受け身なのだ。
でも。
でも、付き合っているのだから。付き合うって決めたのだから。俺は精一杯、建前を演じるだけ。
俺はもう着ないと思っていた、タンスの奥にしまってある少しオシャレな服を手に取った。
「よし」
鏡の前に立って俺自身の姿を見る。
どこも変じゃない。デートに相応しい格好だ。大丈夫。
俺はリビングに戻り、琴葉の連絡を待った。
「遅い……」
既に琴葉の最後の連絡から1時間が経過していた。
まぁ、女の子には色々と準備があると言うし、正直しょうがないと思う。
けれど連絡くらいは欲しいものだ。あとどれくらいかかるのかとか。
こちらから聞くのも考えたが、どこか急かしている感じがして躊躇われる。
「まぁ、いいか……」
そう、俺は呟きスマートフォンをテーブルの上に置いた。
そしてゲーム機のコントローラーを手に取った。
また少し経った後。
ブー、ブー
「お」
俺のスマートフォンから通知を知らせるバイブレーションの音が聞こえた。
見てみると琴葉からのようだ。
「ごめん遅くなった! けんちゃんのお家行くね!」
というメッセージが来ていた。
「わかった」
と、俺は一言メッセージを送りゲーム機の電源を落とし、既に準備していたショルダーバックを手に玄 関へ向かった。
しばらくしてから、ピンポーンと、呼び鈴が鳴り、俺は鍵を開け扉を開けた。
「ほんとにごめんね!」
琴葉と会って最初の一言は、謝罪だった。
「大丈夫、そうなると思ってたから」
俺はそう答えながら、外に出た。
「私が言うのもちょっとって感じだけど、行こっか」
上目遣いで琴葉が言う。
「そうだな」
そうして俺たちの、初めてのデートが始まった。




