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建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
54/168

祭り 中編 ⑦ side:本条花凛&進藤武史


side:本条花凛




 私は走った。屋台がひしめく通りを走った。たくさんの人を押しのけて走った。

 もう、どうでもよかった。


 また嘘だ。また、嘘なのだ。

 それが、軽い冗談だったことは分かっている。でも、だとしても、だったらなんであんな真剣な表情をしたのか教えてほしい。

 自分の本音を、一瞬で無かったことにするなんて信じられない。


 私は、私なりに考えたつもりだ。恋というものを私は全然わからないけれど、それでも一生懸命に考えた。その上で、今の私にはまだ無理だと思って、私の本音で断ったのだ。

 私は悪くない。悪いのは、私の嫌いな、悪意のある嘘をついた進藤くんだ。


 進藤くんを、まだ出会って間もないけれど、猫の時だって今日のお祭りだって、信用できる人なんだとそう思って接してきた。

 信用している人からの、悪意ある嘘が一番私にとって……!

 

 無我夢中で走って、たどり着いた場所は神社だった。

 いや、神社だった場所、だろうか。本殿よりもさらに奥、森の中を少し歩いたところにある旧本殿。

 私は旧本殿の床に腰を下ろす。

 花火の音が聞こえる。しかし、花火自体は木が邪魔をして見ることができない。


「何してんだろ……」


 本当に。

 ふと昔の親友を思い出す。あの時も、こんな感じだった。嘘をつかれて、私は逃げて。私は乗り越えた気になっていた。

 でも、全然、そんなことはなかった。


 なんにも変わっていなかった。

 悪意ある嘘に立ち向かうことが出来ない。信じている人の嘘に触れたくない。


 ただ1つ、変わったことがあるのなら。

 それは斉藤くんとの出会いだ。


 私は変われるだろうか。

 過去を乗り越えて、自分の本音をしっかり持って、嘘に立ち向かえるだろうか。

 身近な人の、悪意ある噓に、それはダメだと、ちゃんと言えるだろうか。


 とりあえず今は、どうやって戻ろうか考えるべきだと思った。今戻っても気まずいだけだ。

 せっかくのお祭りなのに……。

 はぁ、と深くため息をつく。その時、近くからガサッと音がした。


「誰かいるの!?」


 私は音のする方へ叫ぶ。

 するとそこにはーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


side:進藤武史




 やってしまった。

 どうしても、あの空気に耐えられなくて。断られる可能性が100%だったと分かっていたのに告白して。

 そして俺は、冗談だったと嘘をついた。


 緊張には慣れている? 神様からの贈り物?

 今となっては全てが馬鹿らしく感じる。

 そしてこんな自分が憎たらしくて仕方がない。嘘をついた自分も、すぐに追いかけなかった自分も。


 何故、俺は今ここでぼーっとしているのだろうか。

 そんなの、1つしかない。怖かったからだ。嫌われるんじゃないかって。

 あんな嘘をついて既に嫌われているだろうに、どれだけ俺という人間は本条さんに嫌われたくないのだろうか。


 花火の音は聞こえない。

 ただ花火の光が煌々と周りを照らしていて、眩しい。

 そんな光とは正反対に、俺の気分も未来も真っ暗だった。

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