祭り 中編 ⑦ side:本条花凛&進藤武史
side:本条花凛
私は走った。屋台がひしめく通りを走った。たくさんの人を押しのけて走った。
もう、どうでもよかった。
また嘘だ。また、嘘なのだ。
それが、軽い冗談だったことは分かっている。でも、だとしても、だったらなんであんな真剣な表情をしたのか教えてほしい。
自分の本音を、一瞬で無かったことにするなんて信じられない。
私は、私なりに考えたつもりだ。恋というものを私は全然わからないけれど、それでも一生懸命に考えた。その上で、今の私にはまだ無理だと思って、私の本音で断ったのだ。
私は悪くない。悪いのは、私の嫌いな、悪意のある嘘をついた進藤くんだ。
進藤くんを、まだ出会って間もないけれど、猫の時だって今日のお祭りだって、信用できる人なんだとそう思って接してきた。
信用している人からの、悪意ある嘘が一番私にとって……!
無我夢中で走って、たどり着いた場所は神社だった。
いや、神社だった場所、だろうか。本殿よりもさらに奥、森の中を少し歩いたところにある旧本殿。
私は旧本殿の床に腰を下ろす。
花火の音が聞こえる。しかし、花火自体は木が邪魔をして見ることができない。
「何してんだろ……」
本当に。
ふと昔の親友を思い出す。あの時も、こんな感じだった。嘘をつかれて、私は逃げて。私は乗り越えた気になっていた。
でも、全然、そんなことはなかった。
なんにも変わっていなかった。
悪意ある嘘に立ち向かうことが出来ない。信じている人の嘘に触れたくない。
ただ1つ、変わったことがあるのなら。
それは斉藤くんとの出会いだ。
私は変われるだろうか。
過去を乗り越えて、自分の本音をしっかり持って、嘘に立ち向かえるだろうか。
身近な人の、悪意ある噓に、それはダメだと、ちゃんと言えるだろうか。
とりあえず今は、どうやって戻ろうか考えるべきだと思った。今戻っても気まずいだけだ。
せっかくのお祭りなのに……。
はぁ、と深くため息をつく。その時、近くからガサッと音がした。
「誰かいるの!?」
私は音のする方へ叫ぶ。
するとそこにはーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
side:進藤武史
やってしまった。
どうしても、あの空気に耐えられなくて。断られる可能性が100%だったと分かっていたのに告白して。
そして俺は、冗談だったと嘘をついた。
緊張には慣れている? 神様からの贈り物?
今となっては全てが馬鹿らしく感じる。
そしてこんな自分が憎たらしくて仕方がない。嘘をついた自分も、すぐに追いかけなかった自分も。
何故、俺は今ここでぼーっとしているのだろうか。
そんなの、1つしかない。怖かったからだ。嫌われるんじゃないかって。
あんな嘘をついて既に嫌われているだろうに、どれだけ俺という人間は本条さんに嫌われたくないのだろうか。
花火の音は聞こえない。
ただ花火の光が煌々と周りを照らしていて、眩しい。
そんな光とは正反対に、俺の気分も未来も真っ暗だった。




