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建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
53/168

祭り 中編 ⑥ side:本条花凛


「本条さん」


 進藤くんに名前を呼ばれ、私は進藤くんの方を向いてから返事をする。


「ん?」


「好きだ」


 それは突然の出来事で。ちょうど、花火が打ち上がった瞬間だった。

 進藤くんの目の中で、たくさんの花火が打ち上がっている。周りの景色が、花火の色によってカラフルに染め上がる。私の後ろから、無数の花火の音が聞こえてきた。


 周りの人たちの歓声も聞こえた気がする。

 ただ、進藤くんの一言がとても大きく聞こえて、それが耳に残っているせいで周りの音が全然入ってこない。


 本当に急すぎて、何を言っているのかわからなかった。けれど目の前の進藤くんの真剣な目が、真実だと告げている。これは本気の目だ。

 逃げてはいけない。目を逸らしてはいけない。


 だけど。だけど、私には分からない。逃げようとする自分を必死に抑える。

 初めてのことなのだ。どうするのが正解なのか、分からない。


 受けるべき? それとも断るべき?

 分からない。

 焦りを感じていた。早く答えなければ。既にどれくらい経っているのだろうか。酷く、時間が長く感じられる。


 私は。私の気持ちは。

 いつも私は、私の本音を相手にぶつけることしか出来ない。決して偽りがない、紛れもない私の本音をぶつけることしか出来ない。

 それがどんな答えだったとしても、はっきり伝える。


「ごめん」


 そう、答えた。

 他に好きな人がいるとかじゃない。進藤くんのことが嫌いだからではない。

 純粋に、進藤くんのことを知らなすぎている。同時に、私自身も恋というものを全く知らない。


 だから私は、真摯に向き合うことが出来ないと思った。

 多分、いや、絶対に後悔させてしまう。

 そんなお付き合いは、私にはできない。


「そっか」


 進藤くんは笑顔でそう言った。

 私はその顔を見て少し、安堵した。相手を傷つけていないなんてことは絶対にない。でも私には何も出来ない。


 だから、進藤くんの笑顔を見て緊張がほぐれた。

 言い方が悪いが、そこまで落ち込んでいないことがわかったからだ。

 私が断った理由を話そうと口を開いた瞬間、進藤くんの方が先に喋り始めた。


「ごめんごめん、冗談だからさ。気にしないでよ」


 そうやって、進藤くんは笑ってごまかした。


「え?」


 つい、その一言が出てしまった。

 冗談? 何が? さっきの告白が? 嘘?


「どんな反応するのか気になっ」


 進藤くんが急に口を閉じた。

 当たり前だ。

 私自身、私が今どんな顔をしているか想像は出来ないけれど、多分、怒った顔をしていただろう。


「うそつき!!」


 そう私は吐き捨て、屋台の方へ走り出した。

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