祭り 中編 ⑥ side:本条花凛
「本条さん」
進藤くんに名前を呼ばれ、私は進藤くんの方を向いてから返事をする。
「ん?」
「好きだ」
それは突然の出来事で。ちょうど、花火が打ち上がった瞬間だった。
進藤くんの目の中で、たくさんの花火が打ち上がっている。周りの景色が、花火の色によってカラフルに染め上がる。私の後ろから、無数の花火の音が聞こえてきた。
周りの人たちの歓声も聞こえた気がする。
ただ、進藤くんの一言がとても大きく聞こえて、それが耳に残っているせいで周りの音が全然入ってこない。
本当に急すぎて、何を言っているのかわからなかった。けれど目の前の進藤くんの真剣な目が、真実だと告げている。これは本気の目だ。
逃げてはいけない。目を逸らしてはいけない。
だけど。だけど、私には分からない。逃げようとする自分を必死に抑える。
初めてのことなのだ。どうするのが正解なのか、分からない。
受けるべき? それとも断るべき?
分からない。
焦りを感じていた。早く答えなければ。既にどれくらい経っているのだろうか。酷く、時間が長く感じられる。
私は。私の気持ちは。
いつも私は、私の本音を相手にぶつけることしか出来ない。決して偽りがない、紛れもない私の本音をぶつけることしか出来ない。
それがどんな答えだったとしても、はっきり伝える。
「ごめん」
そう、答えた。
他に好きな人がいるとかじゃない。進藤くんのことが嫌いだからではない。
純粋に、進藤くんのことを知らなすぎている。同時に、私自身も恋というものを全く知らない。
だから私は、真摯に向き合うことが出来ないと思った。
多分、いや、絶対に後悔させてしまう。
そんなお付き合いは、私にはできない。
「そっか」
進藤くんは笑顔でそう言った。
私はその顔を見て少し、安堵した。相手を傷つけていないなんてことは絶対にない。でも私には何も出来ない。
だから、進藤くんの笑顔を見て緊張がほぐれた。
言い方が悪いが、そこまで落ち込んでいないことがわかったからだ。
私が断った理由を話そうと口を開いた瞬間、進藤くんの方が先に喋り始めた。
「ごめんごめん、冗談だからさ。気にしないでよ」
そうやって、進藤くんは笑ってごまかした。
「え?」
つい、その一言が出てしまった。
冗談? 何が? さっきの告白が? 嘘?
「どんな反応するのか気になっ」
進藤くんが急に口を閉じた。
当たり前だ。
私自身、私が今どんな顔をしているか想像は出来ないけれど、多分、怒った顔をしていただろう。
「うそつき!!」
そう私は吐き捨て、屋台の方へ走り出した。




