祭り 中編 ⑤ side:進藤武史
「淳、こんな時間に申し訳ないんだがちょっとかき氷を買ってきてくれないか?」
わざとらしい頼み方になってしまった。
本条さんと2人で話すためにはどうしても、淳の存在が邪魔だった。友達に対してこんな言い方をしたくなかったが、それだけ本条さんと話したいと思っていた。
俺は心の中で淳に謝る。
「どうしたんだよ急に。花火が始まるまであと5分じゃん」
「頼むよ、どうしても食べたくてさ。本条さんもそう思うだろ?」
もぐもぐと焼きそばを食べている本条さんに、質問を振る。
本条さんは少し驚いた顔をした後、食べていた焼きそばと箸を置いた。
「え? うーん、まぁ、食べたいかも」
本条さんが賛成してくれてよかった。
反対していたなら、少し面倒なことになっていたから。
「本条さんも言ってるしさ。淳、頼むよ」
そう言うと、淳は折れたらしく、
「はぁ……しょうがないな、すぐ買ってくるよ。何味がいい?」
しぶしぶ、かき氷を買うことを了承してくれた。
「ありがとう淳。俺はブルーハワイで頼む」
「ありがとうね、田中くん。私はレモンがいいな」
「わかった。お金は後で貰うからな」
「分かってるって。助かるよ、淳」
本当に、ありがとうな。
俺は心の中でそう言う。
神様からの贈り物なんて、そんな考えを俺がするとは思わなかった。
これが俺の意思で、俺が求めていたものだと確信した。
「本条さん」
心臓の鼓動が早くなるのがわかる。
さっきまで自然に話せていたのに、今は本条さんの顔を見ることさえ難しい。
「どうしたの?」
俺の問いかけに対して、本条さんはこちらを向く。
ふぅ、と一息吐いた。緊張は慣れっこだ。サッカーの試合で何度も味わった。だからなんとでもない。そう、自分に言い聞かせる。
けれど。今までの緊張とはまた違った緊張だった。
俺はいつも以上に深く、深呼吸をする。なんてことない、大丈夫。
「本条さん」
俺はもう一度、彼女の名前を呼んだ。
「ん?」
本条さんは首を傾げている。
「好きだ」




