祭り 中編 ④ side:進藤武史
俺の目から見て、本条さんは他の女の子と違った。
容姿とか、性格とかじゃない。本条さんが纏っている空気から違っていた。だから俺は、興味を持った。知りたいと思った。
本条花凛という、一人の女の子のことを。
ただ、話しかけづらかった。
いつものテンションで話しかけることを考えたが、本条さんのようなタイプの女の子にはきっと逆効果だと思った。最悪な第一印象を与えかねない。
俺はしばらく考えていると、建真が本条さんと仲良さそうに話しているのを見つけたのだ。
正直、嫉妬した。単純に、いいなって。俺もそんな風に話したいなって。
何度か、二人の会話に無理やり入ろうか考えた。けれども、何だか2人だけの世界のように見えて。結局俺は、会話に入らなかった。いや、入れなかった。
だから、あの時は本当に偶然だった。その場にしゃがんでいる女の子。後ろ姿は何度も見たから間違えない。
チャンスだと思った。こんな機会、もうないだろう。
けれど、俺はまた話しかけるのを躊躇った。不審に思われないだろうか、言葉を間違えたら終わりだ。
頭の中で話しかけるべきかやめるべきか、ぐるぐるする。
その時、小さな鳴き声が聞こえた。にゃーん、と、微かな声だったが確かに聞こえた。
その場にしゃがんでいる女の子と猫……。
そして俺は確信した。猫のことを話題にすればいいんだ、と。
単純に本条さんが猫好きでただ触っているだけなら、俺も猫が好きなんだよね、と話しかける。迷い猫で飼い主を探しているとしたら、俺も手伝おうか? と話しかける。どちらでも自然な流れだろう。
なんにせよ、とにかく話しかける理由が欲しかった。
だから俺は、意を決して話しかけたのだ。
あの時は、変なことを言っていたかもしれない。いや、言っていたな……初対面でいきなり祭りに誘うなんて変すぎる。
雑談の内容は思い出せないけれど、本条さんを祭りに誘ったことははっきりと覚えている。
あの時はもう、勢いだった。話せたこと自体が嬉しかったから。
俺が今まで感じたことの無い感情だった。だから舞い上がっていたんだと思う。本当に、OKを貰えるとは思ってなかった。
今日祭りに一緒に行けたのは、きっと神様からの贈り物だ。




