祭り 中編 ② side:綾瀬琴葉
すき。
祭りに向かっているときはあんなに緊張していたのに、今は自然と緊張しなかった。
トイレに行くと見せかけて、展望台に行く計画は初めから決めていた。あの展望台で、天地展望台で告白したかったからだ。
どうしても、告白する場所だけは譲れなかった。
小学生の時に、偶然見つけた展望台。
真っ先にけんちゃんを連れてきたくて、けんちゃんにこの景色を見せたくて。けんちゃんが展望台からの景色を見て、綺麗、と言ってくれた時は嬉しかったのを覚えている。
私と同じことをけんちゃんも思ってくれた。その時どこか、けんちゃんと繋がった気がした。
私がどんな生き方をしていたとしても、けんちゃんだけはきっと味方でいてくれるだろうって思った。
どんなに嘘をついていても、この気持ちだけは本物だって、今の今までずっと大切に育ててきた。
今日、その実が実るか、実らないかがわかる。
実らなかったとしても、私は後悔しない。
きっと私は、自分の中で実らせて、自分で食べるだろう。
だからこそ。だからこそ、緊張しなかったんだと思う。
自分の中で踏ん切りがついた。ここまできたんだ、後はやりきるのみ。
その日の夜景も、いつもと変わらず綺麗だった。
ここは山の奥、だから虫の声しか聞こえない。きっと誰の邪魔も入らない。
けんちゃんが、綺麗だ、と言った。
あの時と同じ反応だ。何も変わっていない。
いや、昔よりけんちゃんがかっこよくなっているかな。昔はかっこいいというより可愛かったって感じだったし。
私はゆっくりとけんちゃんの隣に移動して、
「そうでしょ」
と、自慢げに言った。
私はこの場所に、けんちゃん以外の人を連れてきたことがない。
私とけんちゃん、2人だけが知っている場所だ。
「ねえ、覚えてる?」
私は昔のことを語り始める。
けんちゃんの反応から、この場所のことを覚えていないと思ったからだ。
まぁ、無理もないと思う。
小学生の時に来たのは数度だけ。中学生になってからは、色恋沙汰のせいで一緒にいることが極端に少なくなったから。
「小学生の頃、ここに来たこと」
けんちゃんからの反応はなかった。
しかし、私はそのまま続ける。
「私ね、この場所好きなんだ。たまに一人で来ちゃうくらい」
嘘をついた。
たまに、ではない。ほとんど毎日来ている。その理由の80%は、ここに来ると何も考えなくていいからだ。
ぼーっと、素でいられる。
「そう、なのか」
けんちゃんから返事が返ってくる。
「うん。でもね、けんちゃんと来たのは小学生のときだけだから。またけんちゃんと来たいなって思ってたの」
本当に。
本当にけんちゃんと、また来たかった。
ほとんど毎日この展望台に来ている理由の、残りの20%が、いつかけんちゃんがまた来てくれるのではと思っていたからだ。まぁ、それはないだろうって諦めていたから20%なのだが。
「なん」
「ねえけんちゃん」
私はけんちゃんの言葉を遮った。
今、私はどんな顔をしているだろうか。普通の顔だろうか。それとも変な顔だろうか。
私は小さく深呼吸してから、言う。
「話があるの」




