表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
48/168

祭り 中編 ②


 トイレは案の定、かなり並んでいた。

 このまま並んでいたら、花火が打ち上がる時間になるどころかいつ戻れるかわからない。


「琴葉、どうする?」


 俺は琴葉に質問する。

 トイレに行きたいと言ったのは琴葉だ。どうしても、というなら並ぶしかない。


「んー……ちょっとこっち来て」


 と、俺は琴葉に急に手を捕まれ、そのまま引っ張られた。


「お、おい」


 急な出来事にびっくりして変な声が出てしまった。

 俺の知らない場所に、トイレがあるのだろうか。とりあえず、琴葉に手を引かれたまま着いていくことにした。


 しばらく森の中を歩いた。

 もう、お祭りの賑やかな音が遠くに感じるくらいだ。


「おい琴葉、どこまで行く気だ」


「もうちょっとだからー」


 本当に森の中だ。真っ暗だし、いろんな虫の鳴き声が聞こえてくる。

 一応、俺たちが今歩いている道は舗装されていた。歩きにくくはないが、少しでこぼこしているから不安がある。

 けれどそんな不安の中で、今いる場所がどこか来たことがあるような既視感を感じていた。


「そろそろだよ」


 琴葉はそう言う。

 目的地に着くのだろうか。少しドキドキしながら俺はついて行く。


「着いたー」


 琴葉はようやく俺の手を離した。

 俺の目の前には、ちょっとした野原が広がっている。さほど大きくない、小さい公園程度の大きさだ。


 ゆっくり歩いてみると、ここが展望台だということがわかった。俺の住んでいる町が一望出来る。

 眼下は川だから真っ暗で、だんだん視線を上げていくて明かりが増えてくる。


 眩しいという訳では無い。

 田舎の住宅街の明かり、と言えばいいだろうか。人がいるとわかる、暖かい光だ。

 さらに、視線を上にあげると星空が広がっていた。


 この展望台は明かりが一つもなく、真っ暗だ。だから星が本当によく見える。

 学校で習った、夏の大三角形をすぐに見つけられた。


「綺麗だ」


 俺は自然と口にしていた。


「そうでしょ」


 気づかない間に、琴葉は俺の右隣に立っていた。

 琴葉は町の夜景を見ている。本当に綺麗なのだが、俺はどこか疑問に感じていた。


 俺はこの景色を見たことがある。そう、やっぱり既視感だ。

 何故? いつ? 考えていると、琴葉が口を開いた。


「ねえ、覚えてる?」


「……」


 何の事だか、俺には分からない。

 だから俺は何も言えない。


「小学生の頃、ここに来たこと」


「……」


 小学生の頃……

 曖昧な記憶がだんだんと鮮明になっていく。


「私ね、この場所好きなんだ。たまに一人で来ちゃうくらい」


「そう、なのか」


 そうだ。思い出した。確かに俺はここに来た。

 確か「天地(あめつち)展望台」だった気がする。昔は天地(てんち)展望台と、間違って読んでいた。

 琴葉が、秘密の場所を見つけたって言って探検した。綺麗だねって、2人で言った。また来ようねって言った。


「うん。でもね、けんちゃんと来たのは小学生のときだけだから。またけんちゃんと来たいなって思ってたの」


「なん」


 で、を俺は飲み込んだ。

 なんでと言おうとして俺は、琴葉の方を振り向いたのだ。それが間違いだった。


 琴葉の顔がすぐそこにあったのだ。そしてその顔は、俺が見た事のないものだった。

 上目遣いで、どこかとろんとしていて。あぁ可愛いなって自然と思っていた。

 俺がその顔に見惚れていると、琴葉がゆっくり口を開く。


「ねえけんちゃん」


 返事ができない。


「話があるの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ