祭り 中編 ①
俺たちは屋台で買ったものを食べながら、花火の打ち上げ開始時間までゆっくり雑談をすることにした。
「本条さん、さっき本をよく読むって言ってたけどどんな本を読むの?」
武史が本条に質問する。
「なんでも読むよ。最近はミステリーものが多いかな」
本条は、本に布製のブックカバーをつけているためいつも何を読んでいるか分からなかった。
だから俺も少し興味があった。読書は俺も好きだし。
「そうなんだ。なにか本条さんのオススメとかある?」
本条は、うーん、と少し悩んだ後、
「普段本読んだりする?」
と、武史に聞く。
「んー、あんまりかな」
武史が本を読む姿を、俺は想像出来なかった。
運動ばかりしているイメージが強いからだ。
「なら……」
と、本条は2つ、3つほど武史にオススメしていた。読書好きだが、普段はあまり読書をしない俺でもわかる有名作ばかりだ。
「なるほど。今度図書館で借りてみるよ」
「ぜひぜひ。みんなも読んでみてね」
本の話をする本条は、どこか楽しそうに見えた。
それほど本が好きなのだろう。
「本と言えばさぁ、みんな夏休みの宿題、やった?」
淳が急に話題を変えてくる。
「あの冊子、本みたいに分厚いじゃん」
淳はそう言っているが、夏休みの宿題である冊子の総ページ数は20だ。
本みたい、というのはかなり言い過ぎである。
「私は終わってるよ」
「私も」
本条と琴葉は終わってるらしい。
本条が終わっているのは当たり前だろうと思っていたが、琴葉が終わっているのはびっくりした。ダラダラしているイメージがあったからだ。……そういうことを言うと琴葉に失礼だが。
「俺はあと少しかな」
武史は部活もあるのに宿題もちゃんと進めているらしい。
流石だと思った。
「俺はあと半分くらい」
なんだかんだで、実は俺も少し進めていた。初めは最終日に全てやるーと思っていたが、やはり後々辛くなるのはは嫌だからだ。
「なんだよ! 俺だけ仲間外れかよ!」
みんなの答えを聞いてから淳はそう言う。
「お前、もしかして……」
俺は恐る恐る聞いてみると、
「もちろん、ゼロ!」
『はやくやれ!』
淳以外の、全員の声が揃った瞬間だった。
他愛もない、ただの雑談。
それでも俺は、楽しいと感じていた。いや、全員が思っていただろう。
だから俺は、ふとこいつらと本音で話してみたいと思った。
そんなことを思うのは初めてで、そう思った理由は本条と出会ったからだと思う。100%、完全に本音が知りたいと思ったわけではない。やはり建前で生きてきた以上抵抗はあるし、そもそも自分の本音自体、イマイチ分かっていないのだからどうしようもない。
それでも、ほんの少しだけでも自分の本音を知りたいと思えたのなら。それは俺にとっても、俺の嘘の化けの皮をはがしたいと言っている本条にとっても大きな一歩だろう。
まだ俺に本音はない、というか見つかっていないけど、きっとこいつらと一緒にいればなんとかなる気がした。出会ってまだ4ヶ月ほどだが、期間なんて多分、関係ない。
これからちょっとずつ積み上げていけばいいのだ。
このまま、ずっと。
ぼーっとしていると、琴葉がちょんちょんと、右腕をつついてきた。
「どうした?」
「トイレに行きたいんだけど、混んでて迷子になりそうだし着いてきてくれない?」
「おう、いいぞ」
そう言って俺と琴葉は立ち上がった。みんなに事情を伝え、トイレに向かう。
花火の打ち上げ開始時間までは、残り15分に迫っていた。




